「お前、明日誕生日だろ?これやるよ。」 「...なにこれ、向日葵の飾り?」 「そう。お前好きって言ってたろ?」 「...まさか君がプレゼント渡してくれるとは...w」 「...笑うなよ」 「アハハごめんごめん...ありがと。大事にするよ。」 「あぁ。」 「そうだ、言ってなかったことがあるんだけどさ」 「なんだ?」 「私、明日殺されるんだって。」 彼女の口からその言葉が出た時、俺は何も言えなかった。 元から彼女が”そうなる”ことは分かっていた。 彼女は『呪い』を持って生まれた、謂わば『呪いの子』だった。しかし本当に呪いを持っているのか疑ってしまうほど、彼女は普通の人間だった。 なのに村の人間は彼女を生かすことを許さなかった。 「放っておいたら村が崩壊する」だの「呪い殺されてしまう」だの「あいつは化物だ!今すぐ処刑するべきだ!」だの...本当にそうなる確証もないのに、大昔の文献を素直に信じて騒いでいた。心底不快だった。 しかしそれを聞いていた彼女は何故か、本当に何故かわからないが、静かに笑っていた。 「...そうか。もう成人するから...」 「大人になる前に殺すっていうしきたりがあるなら赤ちゃんの時に殺しときゃいいのにねー」 「...怖くないのか?殺されるの...」 「ん〜怖くないね。元々分かってたことだし。」 「...そうか。」 その覚悟ができていないのは俺だけだったのか。という言葉を口に出さず、呑み込んだ。 そして、今。 彼女は磔にされて、火あぶりにされる。相変わらずその顔は穏やかに笑っていた。向日葵の飾りが炎で光る。 「やるぞ...」 村長が火の付いた松明を、磔の下にある薪やらに放り投げた。瞬く間に炎が広がる。彼女を包み込む。 「...ろ...」 普通の少女だったじゃないか。 「...めろ...」 何故殺されなきゃいけない。 「...やめろ...」 どうしてそんな迷信に踊らされる? どうして呪いの子だと言う? どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして 「やめろぉぉぉぉぉっ!!!!」 気がついた頃には村は崩壊していた。あたり一面焼け野原。住人も一人残らず屍と化していた。 何が...あったんだ?あたりを見渡していたが、ただならぬ気配を感じて磔の方を見た。 そこに居たのは、彼女だった。いや、呪いに支配された...『呪いの子』だ。 「■■■――ッ!!!」 名前を呼んだ。 返事はなかった。 目に涙を浮かべながら俺に向かって攻撃を仕掛ける。 避けきれなかった。 右目に直撃した。 「ッグ...」 苦しい 辛い 目を強く、締め付けられるような感覚がする 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い 「...ハァッ...ハァッ...」 磔にされている人間は俺の目の前で息絶えていた。 右目が見えない。 何処だここは。 何をしていた。 この人間は...誰だ? 忘れてはいけない気がする。気がするのに... 「思い...出せない...」 ふと思う。 「俺は...誰だ...?」 頭の中に声が響く。 『呪いの商人』 そうだった。 俺はこんな血と煙の匂いが立ち込めている場所にいる場合じゃなかった。 呪いの...呪具の素晴らしさを世に広めるんだ。 「早く...次の街に行かなきゃ...」 パキッ 「向日葵の...飾り...?」 磔の人間の足元に落ちていたことに気づかず、踏んで割ってしまったらしい。 しかしどうにも大事なものな気がして。 呪いで...魔法で直した。 「見えないし...ちょうどいいか。」 右目にそれをつけて、歩みを進めた。