暗い部屋。 四人の少女がそれぞれ、椅子に座っていた。 彼女らは、お互いに何かを話すわけでもなく、ただ、じっと座って待っていた。 ――何かを待つように。 そして、ふとどこからか声が落ちる。 『あなたが一番怖いと思うものは?』 その問いに少女たちは順に答えていく。 最初の少女はためらいなく口を開いた。 「おばけ」 幼稚園の服を着たその少女は自身の服の裾を握る。 「こないだ、映画でみたの。 暗いところにいてね、とってもこわいの」 そう言うと少女は視線を彷徨わせた。 そして、涙をその目に浮かべて呟く。 「ほんとうにいたら、どうしよう……」 次の少女は少しためらってから答えた。 「その……怒られること、かな」 ランドセルを抱えて座る彼女は少し唇を尖らせて言った。 「小学校に入って、怒られることがふえたの。 ……前は怒られることなかったのに」 ランドセルに向けていた視線を上げて、少女は言う。 「おとうさんも、おかあさんも、先生も普段は優しいのに」 そこで、声が小さくなった。 「怒ると、こわいの」 三人目の少女は、視線を彷徨わせて言葉を選んでから口を開いた。 「死ぬこと、ですかね」 彼女は足元に置いたランドセルに視線を向ける。 「最近、おばあちゃんが死んじゃって。 棺の中で眠る姿を見たんです」 そこまで言って一息つく。 「それで、思ったんです。 ――死んだら、どうなるんだろうって」 一瞬視線を上げて、彼女はすぐに視線を落とす。 「考えたら、止まらなくなって。 ――わからなくって怖くなりました」 最後の少女は制服のスカートの裾を握っていた。 そして、視線を上げて口を開く。 「――人間」 鋭いその一言に、空気が僅かに変わる。 「中学に上がってから、いじめとか増えて」 淡々とした声で、事実として言葉を続ける。 「人を貶したり 貶めたり ――それを、見て見ぬふりしたり」 ふっと軽く笑った少女は、言う。 「人間って、醜いなって。 まあ、私もそのうちの一人なんだけどさ。 でもやっぱり―― ――怖いな、って」 沈黙が落ちる。 「――ねえ」 一番最初の少女が口を開いた。 いつの間にか、彼女はランドセルを抱えていた。 「あなたは、どうなの?」 そう問う声が、少し低くなっていた。 少女が、ランドセルを足元に置いた。 「あなた――私は、どうなの?」 少女の背が、伸びていた。 椅子から彼女は立ち上がり、こちらへ踏み出す。 「『今』の私は、答えてくれないの?」 いつの間にか、彼女は制服を纏っていた。 そして、気付く。少女たちが、皆同じ姿になっている。 彼女たちがこちらへ近づくたびに、どんどん、『今』の『私』に近づく。 彼女たちが、どこからか取り出したマイクを私に向けた。 その姿は、先程までの私と同じだった。 『あなたが一番怖いと思うものは?』