待ちに待った(誰か待ってた???)#2でっす 毎回曲がないのは申し訳ない _____________ ラットポーの後ろ姿を追いかけながら、僕は自分の足元を見つめた。 育児部屋の柔らかい苔の上とは違い、キャンプの地面は土が固く締まり、時折小さな石が肉球を刺激する。一歩進むごとに、自分が「戦士への道」を歩み始めたのだという実感が、少しずつ、確かな重みとなって胸の奥に灯っていく。 しかし、その高揚感を切り裂くように、冷ややかな声が頭上から降ってきた。 「おい、見ろよフォースアウル。朝っぱらから、キャンプの中に『虹』が歩いてるぜ」 声のした方、大きな岩の影を仰ぎ見ると、二匹の若い戦士がこちらを見下ろしていた。 一匹は、その名の通り赤錆色の荒い毛並みが特徴的なレッドクロウ。 もう一匹は、鋭い爪を地面に立てて退屈そうに欠伸をしている、焦茶色の虎柄猫フォースアウルだ。 二匹とも戦士になってまだ二月(ふたつき)ほどで、自分たちの力を誇示したくて仕方がない時期なのだろう。 「全くだな、レッドクロウ。そんなにキラキラした毛皮じゃ、森の中で獲物を捕る前に、鳥どころかネズミにまで笑われちまうぞ。アズール族の戦士は、影に溶け込んで獲物を仕留めるもんだ。そんなに光り輝いてどうするんだ?」 フォースアウルが鼻で笑い、僕の毛皮を馬鹿にするように眺める。 レッドクロウはさらに追い打ちをかけるように、岩から音もなく飛び降りて僕の目の前に立ち塞がった。 「それとも何かい? 敵の目を眩ませて、その隙に逃げ出す訓練でもするのか? ははは! せいぜい頑張れよ、『虹色の子猫ちゃん』!」 「見習いになったからって、自分を特別な存在だと思って調子に乗るんじゃねえぞ。戦士の掟は、目立つ奴には厳しいからな」 鋭い言葉の棘が、僕の胸にチクリと刺さる。 言い返したくなる衝動を抑えるように、僕はギュッと爪を地面の土に食い込ませた。 横でラットポーが「無視しなよ、ああいうのは」と言うように、僕の肩を自分の体で軽く押した。 僕は何も答えず、ただ真っ直ぐ前を見据えて、彼らの脇を通り抜けた。 背後で続く下卑た笑い声を、冷たい朝の風がどこかへ押し流してくれるのを祈りながら、僕は歩みを早めた。 しばらく歩くと、シダの生い茂るカーテンに隠された、静かな空間へと辿り着いた。 そこは、他の場所よりもさらに空気が澄んでいて、独特の薬草の匂いが鼻をくすぐる。アズール族の看護部屋だ。 「クリアスカイ、入ってもいい?」 ラットポーが声をかけると、シダの奥から柔らかい返事が聞こえた。 中に入ると、そこには美しい薄青色の毛皮を持つ看護猫、クリアスカイが座っていた。そして、彼女のすぐ隣には、見慣れない毛色の猫がいた。 その猫こそ、ロック族から追放され、今は捕虜となっているクローバーハートだろう。 追放された身でありながら、彼女の表情に悲壮感はなかった。むしろ、クリアスカイと楽しげに、まるで古い友人であるかのように薬草を仕分けている姿は、とても「捕虜」には見えない。 「あら、イリデセントポーにラットポー。ちょうどいいところに来てくれたわ」 クリアスカイが僕たちに向けて、優しく目を細めた。彼女の隣で、クローバーハートも動きを止め、その琥珀色の瞳を僕に向けた。 「あなたが、噂の虹色の戦士見習いね。本当に……星が降りてきたみたいに綺麗だわ」 クローバーハートの声は、どこか遠くを見つめるような不思議な響きを持っていた。 彼女の視線が僕の毛皮の表面だけでなく、もっと深い場所……肉体の奥底まで見透かしているようで、僕は言葉にできない奇妙な悪寒を覚えた。彼女の瞳には、慈しみとは別の、もっと鋭く、正体の知れない「何か」が宿っている気がした。 「……こんにちは。お手伝いに来ました」 僕がぎこちなく挨拶すると、ラットポーが隣で「シャドウルックが寝ちゃったからさ。ホークアイにここを手伝えって言われたんだ」と付け加えた。 「そう、シャドウルックは昨晩から頑張ってくれていたものね。じゃあ、あなたたち二人には、さっそく大事な仕事を任せるわ。見習いとしての最初の修行ね」 クリアスカイは、壁際にまとめられた「ネズミの胆汁」が染み込んだ苔の塊を指差した。鼻をつくような、強烈で嫌な匂いが漂ってくる。 「長老たちのところへ行って、マダニ取りをしてきてちょうだい。特にエルダーベリーの背中はひどいことになっているはずよ。終わったら報告に来てね」 「えー、マダニ取りかぁ……。初日からこれ?」 「また?昨日もやったし…」 ラットポーが露骨に肩を落とし、ため息をつく。僕も少しだけ顔を顰めてしまったが、クローバーハートが「頑張ってね、若き戦士たち。長老を大切にするのは、部族の誇り。誰にでもできることじゃないわ」と微笑むのを見て、不思議と背筋が伸びた。 僕たちはその苔の塊を口にくわえ、独特の苦い匂いに顔をしかめながら、再び明るいキャンプの広場へと歩き出した。 太陽の光を浴びた僕の毛皮は、また虹色に輝き始める。 レッドクロウが言ったように、それはただの「獲物を逃がす邪魔な光」に過ぎないのだろうか。 そんな不安を振り払うように、僕は一歩一歩、しっかりと地面を蹴った。
前回 https://scratch.mit.edu/projects/1258181310/ 次回 https://scratch.mit.edu/projects/1311097109 登場猫 ・イリデセントポー(輝く足) ・レッドクロウ(赤い鴉) ・フォースアウル(秋の梟) ・クリアスカイ(晴空(原作と名前被ってるのに気づかなかった申し訳ない))(看護猫) ・クローバーハート(元・ロック族看護猫) ・ラットポー(@ayane2012様より) ミニ話↓ もう少し書こうと思ってたけど長くなりそうだったのでここまでにしました 次回は3以上見てくれる人がいたら投稿しますね 達成、21時に投稿します