1. 異変の幕開け プププランドに、見たこともないような不気味な七色のオーロラが広がった日のことです。事の始まりは、やはりあの「虚言の魔術師」マホロアでした。彼は異空間で見つけたと称する、古の魔力を秘めた「次元攪拌パルフェ」なるものを持ち込んだのです。「さあさあ、みんな集まって! 今日は僕から日頃の感謝を込めて、特製スイーツの試食会だよぉ! 食べれば新しい自分に出会える……かもしれないよぉ?」広場に集まったのは、いつものメンバー。お腹を空かせたカービィ、それを監視しに来たメタナイト、横取りを狙うデデデ大王と忠実なバンダナワドルディ。さらに、たまたま出張中だったスージーや、フロラルドから遊びに来ていたタランザとクィン・セクトニアまで。全員がスプーンを手に取り、その一口を口にした瞬間――。パシャリ、と世界が反転するような奇妙な音が響き、視界が強烈な光に包まれました。 2. 騎士の困惑、悪魔の無邪気 「……ううむ。頭が重いな……。いや、体が軽いのか?」最初に声を上げたのは、メタナイトでした。しかし、その声はあろうことか、あのピンクで丸くて愛らしい体から発せられていたのです。メタナイト(中身)は、自分の手(?)を見て愕然としました。指がない。それどころか、いつも自分を覆っているはずの重厚な鎧も、誇り高き仮面もありません。あるのは、ぽよぽよと弾むピンクの肌と、つぶらな瞳だけ。「これは……一体どういうことだ。私がカービィに、なったというのか?」その隣で、ガシャン! と重々しい金属音を立てて跳ね回る影がありました。メタナイトの体を完璧に着こなしたカービィ(中身)です。「わあぁ! メタナイトの体、すごいよ! 羽がついてる! 仮面の中がちょっと暗いけど、なんだか強そう!」カービィはメタナイトの翼をバサバサと全力で羽ばたかせ、制御不能なスピードで空を飛び回りました。あろうことか、騎士の象徴である宝剣ギャラクシアをバトンのようにくるくると回しています。「やめろ、カービィ! ギャラクシアはそんな風に扱うものではない! それに、私の体でそんなに騒がしく……ああっ、木に激突するな!」メタナイト(中身)は、カービィの短い足で必死に駆け出しましたが、あまりの体の弾力に、一歩踏み出すたびに「ポヨーン」と高く跳ねてしまい、まともに走ることすらままなりません。 3. 王と臣下、入れ替わった権威 一方、デデデ城の主従も大混乱でした。「おい、バンダナ! 何をボサッとしてるんだ、早くワシを……ん? なんだこの視界の低さは!」叫んだのは、バンダナワドルディの体に入ったデデデ大王でした。いつもの見上げるような巨体はどこへやら、自分よりも遥かに大きな玉座を見上げて呆然としています。「だ、大王様……。そ、それは僕の体です……。そして、僕が……大王様になっちゃいましたぁ!」デデデ大王の体に入ってしまったバンダナワドルディは、あまりの体の重さに耐えかねて、その場にへたり込んでいました。彼の象徴である青いバンダナは、デデデ大王の巨大な頭に無理やり巻かれ、今にもはち切れそうです。「バカモン! そんな情けない顔でワシの座に座るな! ほら、シャキッとしてハンマーを持て!」「無理ですよぉ、重たくて持ち上がりません……! それに、大王様……その体で威張っても、全然怖くないです……」確かに、小さなワドルディが短い腕を組んで、顔を真っ赤にして怒鳴っている姿は、威厳どころか、プププランドの住民たちが思わず抱きしめたくなるような可愛らしさでした。 4. 科学と魔術、ビジネスの衝突 広場の隅では、最も計算高い二人が睨み合っていました。「……信じられませんわ。この低俗なフードに、非論理的な魔力の残滓。私の美意識が許しません」そう言って、マホロアの体を器用に操りながらタブレットを操作しようとしているのは、スージー(中身)です。彼女はマホロアの浮遊する手を見て、「接合部の構造はどうなっているのか」と分析を始めていました。「ひどいなぁ、スージーちゃん! 僕の体は宇宙一の魔術師の体だよぉ! それより見てよ、このハルトマンワークスカンパニーの最新装備! これがあれば、銀河最強のビジネスマンになれちゃうねぇ!」スージーの体に入ったマホロアは、彼女の専用メカに乗り込み、勝手にボタンを連打していました。「勝手に備品を触らないでいただけます? マホロアさん。その体の魔力、私がハルトマン社の技術で数値化して差し上げますから、じっとしていなさい!」「えぇー、やだよぉ! 僕は自由な旅人なんだからねぇ!」科学の粋を集めた秘書と、異次元のペテン師。中身が入れ替わった二人は、お互いの特殊能力(科学と魔法)を使いこなそうとして、周囲を火の海と電子ノイズの渦に巻き込んでいきました。 5. 蜘蛛と蜂、美しき反転 最も悲劇的、かつ喜劇的だったのは、フロラルドの主従でした。「セクトニア様……! ああ、なんという美しさ……。私が、私が憧れのセクトニア様になっている……!」自らの六本の腕(足)をうっとりと見つめ、セクトニアの巨躯を震わせているのは、タランザ(中身)でした。彼はあまりの感動に、女王の姿のままその場でくるくると舞い踊りました。「……タランザ。喜びすぎよ。私の、この、あまりにも地味な姿を見なさい」タランザの体に入ったクィン・セクトニアは、六本の細い腕を不器用に動かし、鏡を見てため息をつきました。かつてのハチの姿ではなく、クモの姿。支配者としての威光は消え、そこにはただの、忠実で臆病な臣下の姿しかありません。「良いではないですか、セクトニア様! そのお姿も大変可愛らしいですぞ!」「……今の私が言われても、ちっとも嬉しくないわ。それより、その大きな体で暴れるのをやめなさい。フロラルドが揺れているわ」 6. 決戦(?)のゆくえ 事態は悪化の一途を辿りました。カービィの体(中身:メタナイト)が、「吸い込み」の暴走を止められずに周囲の木々を飲み込み始め、メタナイトの体(中身:カービィ)が、戦艦ハルバードを発進させてお菓子を買いに行こうとしたからです。「全員、止まれ!」メタナイト(中身)が、ピンクの体を精一杯膨らませて叫びました。「この混乱を収めるには、マホロアを見つけ出し、元の状態に戻させるしかない! スージー、君の分析力なら可能だろう!?」「仰せの通りに、メタナイト様。……いえ、カービィさん。原因はあのパルフェの残留成分ですわ」スージー(中身)が冷徹に指摘します。彼女はマホロアの魔力回路を逆流させ、広場全体に「解毒の波動」を放つ装置を急造しました。「さあ、マホロアさん。……いいえ、今の私。そのスイッチを押しなさい!」スージーの体(中身:マホロア)は、しぶしぶと装置の起動ボタンを押しました。「ちぇっ、もう少しこの体でイタズラしたかったんだけどねぇ……。ま、トモダチの頼みなら仕方ないよぉ!」 7. 終幕、そして日常へ 再び強烈な光が走り、プププランドを包みました。……。…………。「ププッ? ……あ、元に戻った!」カービィが自分のお腹を触り、いつもの柔らかさに安心した声を上げました。その隣では、メタナイトが素早く仮面の位置を確認し、重厚なマントで身を包んでいました。「……二度と、あのパルフェを口にすることはないだろう」メタナイトの低く、威厳のある声が戻ってきました。デデデ大王も、いつもの巨体に戻ってガハハと笑い、バンダナワドルディは「あぁ、やっぱりこの小ささが落ち着きます」と胸をなでおろしています。マホロアとスージーは、お互いに服の汚れを払いながら、忌々しそうに視線を交わしました。タランザは、元の姿に戻って少し残念そうにしながらも、セクトニア女王の無事を喜んでいます。「ふぅ、一件落着だねぇ! さあ、みんなでお口直しに、僕が作った普通の(?)ショートケーキを食べないかい?」マホロアが提案しましたが、その瞬間に全員が武器を構え、あるいは全力でその場を逃げ出したのは言うまでもありません。プププランドの空は、いつもの澄み渡った青色に戻っていました。しかし、住民たちの心には、「もし明日、また違う誰かになったら……」という、少しの期待と、それ以上の恐怖が刻まれたのでした。
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