私的にはこの話は11話12話には劣る( けどめちゃくちゃ気合い入れて書いたから楽しみにしといて() 本文↓ 「世界一位ってのは、こんなものか?クアッド」 正直なところ、どう来たとしても、確実に勝てる。そう思っていた。 まさか、ここまで追い詰められるとは思ってもいなかったんだ。 「この大会の出場メンバーに置いて、僕らに不利相性も、ましてや負け筋なんてのも、最初からないんだよ」 ーー 約五分前。 準決勝。ルールはガチヤグラ、ステージはクサヤ温泉だ。 相手はスイーパーとスパッタリーさんのペア。 アビリティの相性としては、スパッタリーさんがかなりきつい。 『反転』。事象以外の大抵の物のありとあらゆる性質、エネルギーなどを反転させることができる。 スパッタリーさんのアビリティに対する有効策は、師匠やジム、カーボンのような姿をくらますことのできるもの、わかばさんやもみじさんのような視界を塞げるもののいずれかだ。 発動条件が二秒間の目視とはいえ、通常なら避けることは難しい。 師匠を除くと、一対一をした場合俺が最も相手にしたくない相手だ。 「お兄ちゃん、スパッタリーさんの場所と見てる方向は私が把握できるから、逐一報告する」 「そうしてくれるとありがたいよ」 試合が始まった。 スイーパーのアビリティ、確率計測によってこちらの作戦、動きなどは完全に網羅されていると言っても過言ではない。 だがあくまで確率。予想外の動きを見せれば道筋はあるはずだ。 そう思った矢先、予想外の行動を見せたのは相手の方だった。 スパッタリーさんが単騎で俺たちの方へ向かってくる。 「スイーパーの位置は」 「スイーパーさんは自陣でスペシャルを貯めてる感じみたい!」 「……なら二人で確実に仕留めよう。ただ、何かあるだろうから気をつけろ」 「りょーかいー!」 俺は左、デュアルは右に展開し挟み込む。 スパッタリーさんに対し完全に左右からの攻撃。 同時には見れない。どちらかの攻撃は通る。 俺はそう思い、スライドで距離を詰めた。 ーーはずだった。 「残念、もうすでに全部、見てるよ」 スライドは予期せぬ方向へ暴発。俺は体制を崩した。 「デュアル、一旦引け!」 「させないよ?二人にはここでやられてもらわなくちゃ」 スライドで距離を詰められ、回避を図ろうとしてもスライドの方向がぐちゃぐちゃでまともに動けない。アビリティのオンオフを無造作に繰り返しているのだろう。 俺は負けじと射撃を試みるも、インクショットすらも反転されてしまった。 「今君のタンクに入ってるインクは全部、最初に見た物だよ」 「お兄ちゃん!!」 「来るなデュアル!」 加勢に入ろうとしたデュアルの攻撃も全て反転される。 俺はスパッタリーさんの攻撃を浴びやられてしまった。 デュアルは距離を取ろうとするもスライドなしでは機動力が下がってしまう。 その隙にスイーパーがヤグラに乗った。 ……万事休すか。 デュアルもやられたようで、リスポーンへ戻ってきた。 ただでさえ俺たちはスイーパーに対して射程不利。スペシャルも相性が悪い。 ヤグラは第一カンモンを突破し、ゴールへと向かってきている。 スイーパーたちは足元をインクで塗り固め盤面を強固にする。 「スイーパーはキューインキを持ってる。まずは俺が出るから援護する形で頼む。スパッタリーさんをどかそう」 「無理だったら引いてね!」 「許してもらえたらな」 俺は塗り返しつつスパッタリーさんとの距離を詰める。 スパッタリーさんは俺に気がつくとスライドで一気に距離を詰めてきた。 それに合わせて俺は“前”にスライドをする。 ブキから射出されたインクは反転し俺は後ろ向きへスライドした。 スパッタリーというブキは射程がかなり短い。 距離を取ることができれば一方的に攻撃ができる。 「まあ、そんなにうまくいくとは思ってないけどな」 「なら、無策じゃないって証明して見せてよ!」 スパッタリーさんは再び距離を詰めようとスライドで近づいてくる。 そこへデュアルがホップソナーを置いた。 「どう?マニューバーの天敵だもんね!」 「デュアルちゃん、いつの間にそんな性格の悪い子になっちゃったの?」 スパッタリーさんは表情を変えず、楽しそうな声音を上げた。 「クアッドくん……もう少し前の君の方が楽しめたよ」 スパッタリーさんが横へスライドで移動すると、奥からポイズンミストが投げられた。 スイーパーだ。 援護を回避しながらスパッタリーさんに狙いを定めるも、全て反転される。 ヤグラは最後のカンモンのすぐ目の前まで来ている。 デュアルが横からスイーパーに攻撃をするもキューインキで防がれてしまった。 「だめだ、攻防どちらも固すぎる……!」 「お兄ちゃん!ショクワンダーでヤグラを奪って!!」 その手があった。 まだ諦めるには早い。早すぎる。 俺はショクワンダーを使いキューインキを使っているスイーパーに突っ込んだ。 スイーパーはヤグラから降り後退した。 すかさず俺は追撃を試みる。 キューインキの広範囲攻撃を躱し、スイーパーを追い詰める。 だがあと一歩のところでスイーパーはスーパージャンプで自陣へ戻ってしまった。 俺も発動地点に戻される。どうやらスパッタリーさんも自陣へ帰ったようだ。 「想像以上に厄介だね、スパッタリーさんを攻撃できるのはスペシャルかなにかで即時に回復したインクを二秒間見られるまで……」 「勝ち筋は相当狭いな」 「そもそもあんなでたらめなアビリティ師匠並みに強いよね!ずるい!」 確かに、何か他にも弱点があるかもしれない。 俺たちは中央へ走った。 理を大きく書き換える類のアビリティには、強大なデメリットがつきものだ。 デンタルの記憶操作は寿命を削り、おちばの可能性増大は一日一度のクールタイム、わかばさんたちの運命操作は使い切り。 代わりに、デュアルのような単純明快なものはデメリットがほぼない。 ただまあ、師匠やわかばさんたちのアビリティのようにデメリットがないのに強力なものもあるが、スパッタリーさんがそうでないことを祈るばかりだ。 「デュアル、スパッタリーさんのアビリティで何か気づいたことはないか」 「うーん、ちょっと勿体無い使い方してるってことくらいかな?」 「勿体無い……?」 「だってそうでしょ、もし私が反転を使えたら、自分が撃ってるインクとか、スイーパーさんが撃ってるインクとか、色んなものに……」 言いかけてデュアルは急いで振り返った。 「お兄ちゃん後ろ、スイーパーさんがビーコンに飛んだ!」 「前からはスパッタリーさんだ……完全に中央に誘い込まれたな」 「私はヤグラに乗りながら援護しつつ後ろの様子見をするから、お兄ちゃんはスパッタリーさんをお願い」 「わかった」 俺はスパッタリーさんに見られないようにイカ移動を挟みながら近づいた。 スパッタリーさんは動かずこちらをじっと見ている。 俺は射程圏内に入るとスライドをし攻撃をした。 だがスパッタリーさんは一歩後ろに下がり俺の背中のインクタンクを見ようと目を凝らす。 「攻撃はしないんですか」 「私はね、君をいじめたいの」 「……そうですよね」 俺は後ろにスライドをしたが、反転を解かれていたため距離が空いてしまった。 後ろからはスイーパーの攻撃が飛んでくる。判断ミスが命取りだ。 とはいえ発動しているかどうかなんて勘でしかない。こう言う時スクリューがいてくれると助かるんだが…… なんとか第一カンモンを突破し、ヤグラは進む。 だがスパッタリーさんが詰めてきた。 と同時に後ろでスイーパーがキューインキを使う。 「さーて……」 スパッタリーさんはヤグラに目をやった。 するとヤグラはデュアルが乗っているにもかかわらず、元来た道を戻り始めた。 「えっ、なんで!?」 俺はスパッタリーさんの攻撃を躱し、デュアルと合流した。 ヤグラは再び正しい方向へ進み始める。どうやらそれほど長くは持続しないらしい。 「もしかして、ヤグラに反転をかけたの!?」 「そうみたいだな……本当に厄介極まりない」 スイーパーは自陣へ戻り、今度はスパッタリーさんに後ろにつけられてしまう形になった。 「まずいな……」 「どうだクアッド」 高台からスイーパーの声が響く。 ヤグラは動きを変えた。反転だろう。 「僕の考えた戦略、完璧だろう」 遠目なため表情はわからないが、スイーパーはそのままメガネを指で押し上げ続けた。 「延長戦だ。僕らはヤグラを奪えば勝ち。逆転には最終カンモン突破が必要だぞ」 「絶望的だな」 「僕が見た確率の中で最も勝率に貢献する択をスパッタリーさんに提供し、スパッタリーさんがその通りに反転を発動させる」 最終カンモンが目の前に迫った。 「チーム戦は、僕の十八番なんでね」 「そうかよ……!」
本文↓ 14話 https://scratch.mit.edu/projects/1317699889/ その直後、スイーパーは攻撃を開始した。 反撃をしようとするもスパッタリーさんに見られている。 デュアルがスパッタリーさんを止めに動くも苦戦している。 「終わりだよクアッド」 最終カンモンに到達したその時、デュアルが後ろでやられてしまった。 スパッタリーさんはインクを浴び瀕死。初めて攻撃が通ったらしい。 俺はスイーパーの攻撃を避け、スパッタリーさんにインクショットを放つも距離を取られてしまう。 スイーパーはキューインキを使う。 「世界一位ってのは、こんなものか?クアッド」 「まだ終わってないだろ」 「……この大会の出場メンバーに置いて、僕らに不利相性も、ましてや負け筋なんてのも、最初からないんだよ」 正直なところ、どう来たとしても、確実に勝てる。そう思っていた。 まさか、ここまで追い詰められるとは思ってもいなかったんだ。 ……だからこそ。 キューインキが吸い込んだものを吐き出す瞬間、俺はスライドをした。 ヤグラから降りたその直後―― 試合終了の合図が鳴り響いた。 スイーパーは俺の方へ歩み寄ってきた。 「……強くなったじゃないか、スイーパー」 「お前に勝てる日が来るなんてな」 「何言ってるんだ、そんな日来るわけがないだろう」 「何を言って……」 ハッとしてスイーパーは振り返る。 よく見るとヤグラはカンモンを突破していた。 「どうして……あの時クアッドはヤグラから降りたはず」 「反転を、逆手に取ったんだよ」 そう。反転、つまり、逆。 俺はヤグラから降りることで、本来ヤグラを戻す動きにし、反転によってカンモンを突破させたのだ。 「反転のタイミングは掴めなかったはず、勘、というやつか……」 「今回は違うよ。反転の、デメリットをついたんだ」 スパッタリーさんとデュアルも駆け寄ってきた。 「スパッタリーさん、同時に反転できるのって、二つまで、違いますか?」 「まさか……」 「ああ。ヤグラを反転させてくるかどうかわからなかったから、デュアルのブキ、俺のブキまでは確定。だから俺はヤグラから降りる方向へスライドをしたんだ。解除するなら、直前で戦っていたデュアルより俺の方が都合がいい」 「……その説明だと、クールタイムのことも、知られちゃってるのかな?」 スパッタリーさんは小さく笑って答えた。 「デュアルのブキの反転を行った直後。反転は解除できないと踏んで、俺のブキを解除すると思ったんですよ」 「あらら、バレバレか」 「え?でもお兄ちゃん、個数制限に気がつける場面なんてあった?」 「デュアルお前自分で言っといて気づかないのかよ……」 もし制限がないなら、それこそヤグラに乗る必要がない。反転で連れてくればいいのだから。 「今回はメガネくんの負けってことだね」 「遺憾すぎる呼び方と戦績ですが、今回だけは認めましょう」 「お兄ちゃん、決勝戦、わかばちゃんたちらしいよ」 わかばさんたちは、下手をすれば実力差を見せつけられるようなレベルにまで成長している。 次、必ず勝たなければ。 スパッタリーさんは笑みをこぼし、言った。 「まあ、さ、決勝戦、家で見てるからね」 「はい、必ず勝ちます」 「期待してるよ、クアッドくん」 スパッタリーさんはウインクをし、スイーパーを連れて去っていった。 そうしてなんとか、俺たちは決勝戦へ進むことになった。 ーー 決勝戦は明日行われる。俺とデュアル、そしてわかばさんたち双子は、久しぶりに俺の家へ集合していた。 「クアッドさん、おかえりなさい!」 「ただいまわかばさん、もみじさんも、お疲れ様」 「ここまで決勝のために、一心同体は使ってないんですからね!もみじを楽しませてください!」 二人ともやる気も実力も十分らしい。 「今回はどちらが表に出るんだ?」 「あっ、それは……」 「わかばだめだよ!作戦立てられちゃうかもでしょ!」 「そんな小さなこと影響しないよ〜!」 二人の仲も一層深まったようで安心だ。 俺は夕食を作りに行ったデュアルの後を追った。 「手伝うよ」 俺は包丁とまな板を準備した。 「いいよ、明日お兄ちゃんにはしっかり働いてもらうんだから」 「チーム戦、だろ?」 俺がそういうとデュアルは嬉しそうに笑みを浮かべ、野菜を手に取って言った。 「じ、じゃあ、今日はもう料理で手の込んだことはしないから、お皿出したり机拭いたりしてきて!」 「はいよ」 俺が準備を始めると、わかばさんたちも一緒に手伝ってくれた。 お惣菜にお湯で作る味噌汁、簡単に切って盛り付けた野菜。 デュアルも疲れているんだろう。明日は俺たちが勝っても、わかばさんたちが勝っても、美味しいものを作らなくては。 「ごちそうさまでした!」 「よし、お風呂じゃんけんタイムだね!」 「どちらが先にお風呂に入って休憩できるか、ということですね……」 デュアルともみじは真剣に向き合い始めた。 あほだ。 そして結果はデュアルの負け。 いや勝てよ。 「じゃあ、もみじとわかばはゆっくりお風呂入ってきますね!」 「悔しいー!」 「あの双子、前にも増して仲良くなったよな」 地団駄を踏んでいたデュアルは小さく息をつき、言った。 「一緒にいる時間が増えたんだし、そりゃあ仲は深まるものでしょ」 「まあそうだけど……」 「それより、どうする?あの二人は一緒に入るみたいだけど……私たちは……」 「やめろ、気持ち悪い」 「はあ!?気持ち悪いってなに!お兄ちゃんのバカ!」 俺は頭を抱えため息をついた。 ーー 「じゃ、行こうか」 翌日俺たちは、四人で決勝ステージへ向かうことになった。 ステージはどうやら特設された場所のようで、大会が始まった三十年ほど前から毎年そのステージを使っているらしい。 普段は一般開放もしていて、試合も行われる。 地下にあるステージで、遮蔽物が多く、地形としては中央、リスポーン地点が高く、その間が少し低くなっているようだ。 ルールはガチエリア。塗り力としては相手の方が高く、不利。 だがキル力はこちらが上回っている。 お互いどう立ち回るかが一番重要だ。 決勝に出る四人が揃っているということで、街ゆくすれ違う人々に写真を撮られることは多々あった。 そしてついに、ステージへ辿り着いた。 「決勝、ここで勝ったチームが最強だ」 「最強、ですか」 「最強ってのは生半可な努力や、才能、運のみの実力では辿り着けない領域」 世界一位という肩書き。ある意味重荷ではあった。 けど、手放したくないと思った。 俺が俺である所以であり、簡単に得たものじゃないから。 わかばさんが勝ったら、その重圧をどう扱うようになるのだろう。 お互い、リスポーン地点についた。 俺はデュアルを見る。 「準備は万端か?」 「当たり前でしょ、お兄ちゃん」 デュアルは自信に溢れた表情をしていた。 この試合には勝つ。 個人ランキング世界一位として。 負けるわけにはいかない。 今まで、バトルには無頓着でいたわかばさん。 それが、とんでもなく強くなったのだ。 本気で相手をしよう。 そう心に決めた時、開始の合図が鳴り響いた。