※クロノヴァ二次創作です。 第一話 https://scratch.mit.edu/projects/1229220253/
【灰心喪気な訪問者】 吹き飛ばされそうな強い風に、思わず身構える。 春が終わり、夏を迎える頃。 春の嵐、といったところだろうか。 ますます強く吹く風に少しだけ不安を覚えた。 当然この風の中じゃ鳥居の上に座れるはずもなく、石段に腰掛けて荒れ狂う落ち葉を眺めた。 近頃の人間は弱く、五月病という俺達には理解し難いような病も流行り始めているらしい。 夏になったらきっとこの嵐も過ぎるのだろうか。 そんな考えも程々に、目の前にいる【神】に 俺は酷く動揺した。 『【ARKHE】!!』 フラフラと出現したかと思えば、そのまま体勢を崩して身体が傾いた。 咄嗟に身体を預けられるようにして支えたが、彼の瞼は閉じたまま動かない。 やむを得ん。 俺は神社の奥まった林へと進んだ。 ガサゴソとツタを払い、石の上に落ち葉をふかふかに乗せる。 その上に【ARKHE】を寝かせた。 目覚める様子もない。疲労だろうか、それとも… いや、ろくでもないことを考えるな。 彼奴は季節の変わり目になると忙しい。 祭典の準備を監督することが多いから、きっとその疲れだろう。 甘夢れむ「かなさん!アルちゃんが倒れたってどういう事!?」 現れたのは噂を聞きつけた桃色の【神】。 今日も仕事で忙しかったはずなのに、一番早くこの場所に辿り着いている。 その事実を聞いたらきっと、アイツは泣いて喜ぶんじゃないか。 『…分からない。彼奴がここに来た時にはもう具合が悪かった。』 甘夢れむ「はぁ…本当になんで…!」 深くため息をついたが、落ち着いた様子はない。いつにも増して真っ青な顔を顰めていた。 甘夢れむ「ちょっと見して。」 れむが俺を退かしてアルケーの様態を見る。 甘夢れむ「…消えてはいないね。」 甘夢れむ「アイツらを呼んでくる。」 『俺も行こう。』 甘夢れむ「バカ。【ARKHE】のこと誰がみんのさ。」 それもそうか。 れむは適当な別れを告げ、この村を飛び出した。 深緑に包まれた神社の境内は神秘的で、昼寝するには丁度いい程に綺麗だった。 『ゆっくり寝てくれよ【ARKHE】。』 そんな独り言は届くはずもなく。 少しだけ顔を顰めて眠るARKHEは、さっきのアイツに似ていた。 頃合い、なのかもしれない。 『なぁ、アルケー。』 白い頬を撫でる。 『俺達は6人でこの辺りの地域を治めてきた。』 『静かな夜に神妙な顔で俺に話しに来たお前は、本当に面白かった。』 『騒ぎながら越した年は今までで一番楽しい年越しだった。』 『お前と喧嘩したこともあったし、なんならずっと対立していたのかもしれない。』 目尻が熱い。 『嘘ばかりついてきた俺を、どうか赦してくれ。』 偽りのない涙が零れ落ちた。 コイツの前では泣かないと決めたはずなのに。 『起きろよ、【ARKHE】。』 消え入りそうなほど小さな声。 でも確かにその声は彼の耳に届いたはずだった。 涙も拭かず、ただ啜り泣く声だけが境内に響いた。 ARKHE「おはよ。」 声も出なかった。 ARKHE「どうした、そんなに泣いて。」 ARKHE「俺が起きなくて、寂しかったか?」 眩しそうに片目を開けて、強かに笑う。 嘘をつきたかった。心配させないように。 でも、その顔を見て、安心してしまった。 『泣いてねぇよ。バカ。』 ARKHE「お前、下手な嘘つくんじゃねぇよ。」 頬を伝う涙を止められるわけもなく、簡単に見破られてしまった。 白く細い彼の腕を握る。 『お前こそ心配させんな。』 こんなにもなるまで放っておいたなんて。 ARKHE「悪ぃ。この通り起きることができたが、どうも身体が弱って動けねぇんだ。」 ARKHE「暫く、休養を取らせてくれ。」 『ちゃんと休め!頼むから…』 もう、心配させないでくれ。 しの「ぅう…!」 うるみや「ちょ【しの】!もうちょっと静かに泣けや!」 しゃるろ「かなちゃんめっちゃこっち見てるよ?」 『来たのかお前ら。』 カサカサと林を掻き分けて俺の周りを囲む。 甘夢れむ「アルちゃんが倒れたって言ったらすぐ行く!!って全員。」 しゃるろ「俺うるちゃんのとこまで頑張って走ったんだからね?」 困ったような笑顔で話した。 うるみや「ホンマ遠いとこからありがとうな。」 しの「だってアルケーが死んじゃったらって考えたら、俺もう…」 甘夢れむ「しのまた泣いて…!アルちゃんは居るから!」 集まった途端に騒がしくなった此奴等。 少しだけいつもの調子が戻ってきた気がする。 ARKHE「お前ら、迷惑かけてすまない。」 しゃるろ「何言ってんのアルちゃん。ゆっくり休んでよ。」 しの「こっちは俺達に任せといて!」 甘夢れむ「またしゃるの時みたいにする?まぁ、いいけど。」 うるみや「こいつらもこんな調子やけ、安心して休憩してや!」 ARKHE「本当にありがとう。感謝する。」 『んで、お前のことは俺が面倒見るから。』 治める地域も近いし、丁度いいだろう。 こんな調子じゃ俺も心配になる。 不服だが見守ってやる。 ARKHE「そんな事しなくとも俺は大丈夫だ。」 『いや、お前自分の状況わかってる?』 一度倒れておいてすぐに復帰するなんて冗談じゃない。 ARKHE「お前に世話をされる筋合いはない。」 『ここまで運んできたの誰か知ってる?』 ARKHE「それとは話が別だ。一人でも」 うるみや「おふたりさん!ストップ!」 【うるみや】の大きな手が俺等を阻んだ。 しゃるろ「アルちゃん甘えなよ〜」 しの「俺たちも見に来るからさ!」 ARKHE「はぁ…分かった。」 諦めたのか視線を落とした。 ARKHE「【かなめ】。」 『何?』 声を掛けてきたはずの彼奴は、少しだけ躊躇って口を開いた。 ARKHE「俺がいない間も、」 ARKHE「【クロノヴァ】をよろしく頼む。」 俺に向ける灰色の瞳は、まだ燃えるような光が宿っていた。 俺は、昔からこの瞳には嘘をつけない。 『…わーってるよ。』 甘夢れむ「くろのば?って何いってんの。」 しゃるろ「まぁいいじゃん!俺お腹空いた!」 強かった風が止み、昼時の暖かな木漏れ日が彼の額を照らした。