2028年 7月3日- 06:08(大西洋時間) 世界滅亡まで、残り41時間52分 太平洋 A.T.T.I.S.の上陸用舟艇内 「各員、装備の確認をしろ!」 高速で移動する舟艇の中で、私は声を張り上げた。 「…どうした。もう済んだのか」 「ソベル大尉……俺、怖いんです」 部下の1人が呟く。 「今まであなたと何度も戦ってきた……でも、今回ばかりは…」 「私も怖いさ、アキバ」 震える部下の手を、強く握りしめる。 「私も、今すぐにでもここから逃げ出したい。幸い泳ぎは得意だしな。…だが、代わりはいない。私達の世界を守れるのは、私達自身だけだ」 「大尉…」 「…お前ら!決して怖気付くな!世界を救う英雄は私達だ!!」 部下達が雄叫びを上げる。 「アキバ、連れの席は取っておいてるんだ。腰抜けを座らせる気はないぞ?」 「…はい!」 直後、上空から轟音が聞こえた。見上げてみると、複数の輸送ヘリが飛んでいる。国連軍のものか、はたまたTHERDのものか…。 「……どっちにしたって、どうせお前らはいるんだろ?」 太平洋上空 THERDの輸送ヘリ内 ヘリの窓を大粒の雨が叩いてる。 「……パパ……」 ちょうど、5年前の今日だった。あの日サイモンさんに銃を向けたパパを、反射的に撃ってしまった。 「…大丈夫?キャシー」 隣に座るシェリーが言った。 「兄貴から話は聞いてた。その……お父さんの事は……」 「ありがとう、シェリーちゃん。でも大丈夫」 「…そう」 ずっと大丈夫って言い続けて来た。あの時の判断は正しかったって、自分に言い聞かせ続けて来た。……あの時のパパの目が忘れられない。 私が殺した。 あの時私が撃たなきゃ、サイモンさんが撃たれてた。でも…他の方法があったんじゃないか、と今でも考えてしまう。助ける方法があったはずだって。そもそも、私があんなワガママを言ったから、パパはデイライトなんかに手を貸したんだ。私がパパをおかしくしたんだ。全部、全部、私のせいなんだ。 つらい。くるしい。さみしい。 5年間ずっと我慢して来たけど、本当はずっとずっと、誰かに甘えたかった。 こんな時、清仁なら慰めてくれるかな。あの時みたいに、優しく頭を撫でてくれるかな。 ねぇ清仁 私は本当に正しいことをしたのかな また、会いたいなぁ 「2 minutes!(着陸2分前!)」 その声で、我に返った。いつのまにか流れていた涙を拭って、ヘルメットを被る。気づけば、空は晴れていた。眩い光が、窓から差し込んでくる。 「…綺麗……」 私達の未来も、これくらい明るかったらいいのに。 数刻前 太平洋上空33,000フィート THERDの輸送機 『Confirms transmission is received. Operation begins.〔命令開始通信を受信。作戦開始です〕』 『10 minutes to dropoff. Depressurization complete.〔降下10分前。機内減圧完了〕』 「Self check height sensor. Set it up for 600 m.〔高度センサーを確認。高度600mでパラシュート展開に設定〕」 『3 minutes to dropoff. Check your equipment. Activate your oxygen mask.〔降下3分前。各員、装備チェック。酸素マスクも起動せよ〕』 無線越しに、パイロットの声が機内に響き渡る。直後、ヴィクターが俺の装備を確認しにきた。 「主傘……よし。予傘……よし。俺の分も頼む」 ヴィクターが背負っているパラシュートを確認する。どちらも問題なさそうだ。 「主傘、予傘、共に問題ない」 「ありがとよ。1-3、お前の分もだ」 そう言うと、ヴィクターは向かいに座っている廻嶺の方へ向かった。 「……よし、問題なしだ。いいか。俺達の任務は先んじて島に降下し、設置されている対空砲等を破壊、数時間後に来るTHERD本隊や国連軍がより円滑に上陸できるようにする事だ。既に島にはデルタフォースとスペツナズが降下している。俺達が担当するのは島の南側だ。素早く、かつ徹底的にやるぞ」 「…わかった」 「了解」 『1 minutes to dropoff. Opening rear hatch.〔降下1分前。後部ハッチ解放〕』 重苦しい金属音と共に、油圧アームが唸りを上げる。ハッチが開き始めた瞬間、機内に眩い光が差し込んできた。 ハッチの向こうに見える、視界を覆い尽くすほどの大空。そこから顔を出すように、一つのオレンジ色の光が広がっていた。 「…日の出だ」 廻嶺が呟いた。 俺は、かつてこれを目指した。世界を照らす陽の光となり、有るべき姿へ導こうとした。それが、俺に与えられた使命だと思っていた。 全て、俺の傲慢だった なぜもっと早く気づけなかったんだろうか。歪んだパズルを正すのは、俺の役目ではなかった。廻嶺達に尋問されていた時、俺は遊夢が謳う大義はただの利己的な欲望だと言った。 俺も同じじゃないか 一度世界を滅ぼしてまで貫いた大義は、俺のただのエゴだった。 あまりにも愚かで、浅はかだった 『Red is on! Red is on!〔レッドオン、レッドオン!〕』 機内を照らす赤のランプで、我に帰った。過去を振り返っても仕方がない。今は、俺がやれる最善を尽くさなければ。 それが俺にできる、唯一の償いだ。 『Grenn is on! Green is on!〔グリーンオン、グリーンオン!〕』 機内を照らすランプが緑色に変わる。降下開始の合図だ。 『いくぞ、Go Go Go‼︎』 もう引き返せない。賽は投げられた。 強烈なGが、爆発のような風圧が、全身を叩く。高度センサーの数値が、とてつもない速度で減っていく。まもなく、雲海の中に突っ込んだ。視界が霧で染まり、上下の感覚すら危うくなる。落ち着け、高度センサーを信じろ。体を大の字に広げ、姿勢を安定させる。 『そろそろパラシュート展開だ!』 ヴィクターの無線と同時に、雲海を突き抜けた。その先に見えたのは、大海の中に佇む、一つの島。ついにここに帰ってきた。全ての、始まりの地に。 高度センサーが警告音を鳴らす。胸元のリップコードを、力の限り引っ張った。 「…ぐぅっ!」 思い切り上に引き上げられるような感覚が襲う。思わず息が詰まった。周りを見渡すと、二つのパラシュートが見える。二人も無事に展開できたようだ。 『よし、このまま着陸地点に…』 ヴィクターから無線が入ったその瞬間、近くで風を切るような鋭い音が聞こえた。 「…まさか!」 下を見下ろすと、いくつかのマズルフラッシュが見えた。直後、身体の横を何かが掠める。クソッ、もうバレてやがったのか! 「気をつけろ!対空砲火だ!」 『畜生、出遅れたのがまずかったか!』 パラシュートを操作して、対空砲から離れる。地上までもう直ぐなんだ、ここでやられるわけにはいかない。 『着陸地点が見えた!全員備えろ!』 開けたスペースが見えた。あそこが着陸地点か。地面が急速に迫る。 「っ…!」 身体を丸め、接地に備える。接地と同時に身体を捻り、衝撃を全身に分散する。 「…Delete 1-2、着陸完了した!」 全身の痛みを抑えながら立ち上がり、背負っていたBREN 3を構える。直後、もう一人が降下して来た。ヴィクターだ。 「1-1も降下完了だ。……1-3、応答しろ。おい、1-3!……まずいな、廻嶺からの応答がない」 見上げても、廻嶺の姿は見えない。パラシュート操作を誤ったか、もしくは……。 「仕方がない、俺達だけでやるぞ。あいつはこれくらいのことでくたばるタマじゃない、きっと無事だ」 「…了解」
使い方の欄を読み終えてからお読みください。 「……う、うぅ……」 全身が、痛い。自分の周りに血溜まりが広がってるのが見える。地面に思いっきり激突したみたいだ。 アレンから通信が来てから記憶がない。多分だけど、対空砲の弾に当たったんだ。ヘルメットが粉々に砕けてる。 「…これも、もう使えないか…」 持って来たライフルも、着地に失敗した衝撃で故障してる。ホルスターに入ってるピストルは大丈夫そうだけど、これだけじゃ心許ない。 「とりあえず、二人と合流しなきゃ…」 「見つけたぞ!」 まずい、もう敵の部隊が来た。急いで物陰に隠れて応戦する。……やっぱりピストル一丁じゃマトモに戦えない。弾がほとんど弾かれてる。 「あぁもう…!」 一瞬で弾がなくなった。再装填しようと思った矢先に、敵の弾が手のひらを貫いた。ピストルが遠くに飛んでいく。 「……クソッ!」 ヴィクターから『正体がバレるから能力は使うな』って言われてたけど、今周りには俺と敵しかいない。わざわざ隠す必要なんてない。一瞬で、全ての敵兵の頭を捻り潰した。 「やっぱりこれに限るね」 死体からライフルを剥ぎ取る。これ……昔あった依頼の資料で見たことがある。確か、アメリカの試作品だ。 「やっぱりデイライトに横流しされてたのか…」 マガジンをできるだけポーチに突っ込む。これで能力を使わなくても戦える。 「とにかく、南側に行かなきゃ……多分こっちだよね」 なんというか、体がムズムズする。きっと合ってるって事だよね。 だ れか き た このか んじ こ のこ え まち が いな い いかなきゃ 「…?おい嘘だr」 あのこ にあ わなき ゃ 『緊急事態発生。緊急事態発生。被験体の脱走を検知。担当職員は、速やかに対応に当たってください』 う るさい じゃ ましな い で わた しのともだ ち わ たしの あ いぼう わたしの こいびと こん ど こ そ ど こにい る の みぞれ __________________ 第十四章 第十六章 現在執筆中...