仮面Sの正体 第5話 兄の言葉が、頭の中で何度も反響していた。 ――仮面Sは……“俺と関係がある”。 公園の空気は重く、冷たかった。 目の前には黒い仮面の人物。 胸には“S”の痣。 私は震える手で兄の袖を掴んだ。 「き、煌斗……どういうことなの……?」 兄はゆっくりと息を吸い、私を見た。 「真琴。落ち着いて聞け。 仮面Sは――」 その瞬間。 黒仮面が、ゆっくりと手を伸ばした。 兄が私をかばうように前に出る。 「来るな!!」 兄の叫びに、黒仮面は一瞬だけ動きを止めた。 そして―― ゆっくりと仮面に手をかけた。 「……え?」 私は息を呑んだ。 黒い仮面が外され、地面に落ちる。 現れた顔は―― 「…………由利……?」 そこにいたのは、 いつも笑っていた、 私の親友――由利だった。 「……やっと気づいた?」 由利は、いつもの優しい声で言った。 だけど、その目は笑っていなかった。 「なんで……なんで由利が……?」 私は声を震わせた。 由利は静かに歩み寄る。 「真琴。あなたはずっと“事件の中心”にいたの。 気づいてなかっただけ」 「中心……?」 「クレーン事故も、倉庫火災も、行方不明者も。 全部、“あなたを動かすため”だった」 私は後ずさった。 「どうして……どうしてそんなこと……」 由利は微笑んだ。 「真琴。あなたは“選ばれた”の。 仮面Sの後継者として」 「は……?」 頭が真っ白になった。 兄が前に出る。 「ふざけるな、由利。真琴を巻き込むな」 由利は兄を見て、ため息をついた。 「煌斗。あなたは邪魔だった。 だから“警告”したのに、まだ守るつもり?」 兄は拳を握りしめた。 「真琴。聞け。 由利は……“仮面Sの組織の一員”だ」 「組織……?」 由利は肩をすくめた。 「そう。S、N、X……全部“役割”。 私はその中の“S”。 でもね――」 由利は私をまっすぐ見た。 「本当のSは、あなたなのよ。真琴」 「……っ!」 心臓が止まりそうだった。 「あなたの家系は代々“仮面S”を継ぐ血筋。 煌斗はそれを知っていた。 だからずっと隠してたの」 私は兄を見た。 兄は苦しそうに目を伏せた。 「……真琴を巻き込みたくなかった。 俺が全部止めるつもりだった」 由利は首を振った。 「無理よ。 真琴はもう“印”をつけられた。 あの窓の痕……覚えてるでしょ?」 私は震えた。 「……あれは……」 「“継承の印”。 あなたはもう逃げられない」 由利が手を伸ばす。 「真琴。来て。 あなたが“次の仮面S”になるの」 「……いや……いやだ……!」 私は後ずさった。 兄が私の前に立つ。 「真琴は絶対に渡さない!!」 由利の目が細くなった。 「なら――力づくで連れていくしかないね」 由利がポケットから黒い仮面を取り出した。 その瞬間。 ――パァン!! 乾いた音が響いた。 由利の手から仮面が落ちる。 「……っ!」 由利の肩に、黒い“X”の痣が浮かび上がった。 茂みから現れたのは―― 白いXの仮面。 「……X……!」 由利が叫ぶ。 「裏切ったの!?あなたも組織の一員でしょ!」 仮面Xは静かに首を振った。 「……真琴は……守る……」 その声は震えていた。 まるで泣いているようだった。 由利は後退りし、睨みつける。 「……いいわ。 今日は退く。でも――」 由利は私を指差した。 「真琴。あなたは必ず“仮面S”になる。 それが運命だから」 そう言い残し、由利は闇に消えた。 公園には、風の音だけが残った。 私は崩れ落ちた。 「……由利が……仮面S……?」 兄がそっと肩に手を置いた。 「真琴。 これからは俺が絶対に守る。 どんな運命でも、お前はお前だ」 私は涙を流しながら、兄の胸に顔を埋めた。 仮面Xは静かに私たちを見ていた。 そして―― 小さくつぶやいた。 「……ごめん……真琴……」 その声は、どこか聞き覚えがあった。 私は顔を上げた。 「……あなた……まさか……」 しかし、仮面Xは何も言わず、闇に消えた。 風が吹き抜ける。 私は空を見上げた。 由利の言葉が、胸に刺さったままだ。 ――あなたは“次の仮面S”になる。 私はその言葉を、強く否定した。 「……私は……絶対にならない」 そう呟いた声は、震えていたけれど―― 確かに、前を向いていた。 もう襲われる心配はない。前向きに生きていこう。それが最後の決心だった。 制作著作 / hhty229
クレジット サムネ:Copilot