数分前。 私立の名門校『天蘭学園』。生徒が登校してくるには、まだ少し早い時間。 学園の大きな門の前、一人の少女が立っていた。カバンの紐をぎゅっと握りしめている手は、ふるふると震えている。 「…はあぁ…」 少女は、深いため息をもらした。 「…お母さんに相談して、『転校』してきましたが…」 少女の顔が、うっすらと青白くなる。 その後、ぶんぶんと首を振る。 「い、いえ!今は余計なことを考えないでおきましょう…」 そう言うと、少女は、学園の中の職員室に向かって歩き出した。 だが、眼鏡の奥の瞳は、暗く重く沈んだ瞳をしていた。 ---------------------------- 「おはようございまーす!!」 私、伊藤ありさ。そろそろこの学園とクラスにも慣れてきた頃。 今では、クラスのみんなともお話できるようになって、毎日楽しい生活を送ってます! 「よおありさ、おはよ!」 彼の名は、城崎ユウくん。お付き合いしている彼氏のような存在。 「ねーユウくん。宿題できた?難しかったよねぇ…」 「あ゛ー…そうだなァ…俺3問しか解けなかった((」 「えっ!?((」 「ありさは?」 「2問間違い!」 「やめろ心折れる((」 そんな他愛もない会話をしている時、 「コラーーッ!!!!!!井上!!!!!」 「わ~~~~!!!!!すんませえぇぇん!!!!」 廊下から、大きな声が二つ聞こえてきた。 私とユウくん、それにクラスのみんなも、肩を跳ね上がらせて驚いた。 「お前、廊下は歩けっていつも言ってるだろ!!」 「すんません!!急いでるんです~!!…見逃してくれません…??」 「上目遣いで言うな!!!」 「いやホントに!!マジで急いでるんです!!!」 「何に急いでるんだよ!」 「購買の新作パン、朝のうちに買っておかないと売り切れちゃうのでダッシュで購買まで行こうと思ってるんです!!!」 「もうちょっとマシな理由はなかったのか!!!」 「アッハハ!!井上マジで最高!!」 「朝からコント始めんな!!w」 「ふふっ、相変わらずだね、アキトくん」 「ああ…今日も元気に騒いでるぜ」 さっきまで大声を出していた男の子__「井上アキト」くん。関西出身で、人を笑わせることが得意な男の子なんだ。でも、実は心優しい人なんだよ。 「全く、朝から元気だな」 「そうだねぇ~、でも、元気なのは良いことだよ」 「…でもちょっとうるさいから、注意しに行ってくるわ((」 「行ってらっしゃ~い」 ---------------------------- 「はいストップ!止まれ!!」 「ぐぇッッ!?おいユウ!!急に服掴むな!!!」 「お前の足が速すぎるんだよ!!俺じゃ追いつけねぇから、こうするしかないの!!!」 「なんやそれ!!!」 「…あと、この時間帯は購買開いてないぞ」 「マジ!?!?走って損した!!!!」 「ここの壁に分かりやすく書いてるだろ!!!」 ユウくんの指さした壁には、一枚のポスターが貼ってあった。 『天蘭学園購買 新商品入荷!! ※なお、朝の時間帯と放課後は開店していません』 「「……」」 沈黙。 「先に教えろやあぁぁ!!!!!!!」 「強気ィ!?」 「…あと、今思い出した。俺お金なかったんだわ。だから、新作パン買えないのよ」 「バカかお前はァ!!!!((」 どっ!!! 「やめろ腹よじれる!!!w」 「マジこの二人サイコー!!」 「これで台本ないってマジ???」 「…ぷっ…ふふっ…」 私も、みんなにつられて、小さく笑い声をもらしてしまった。 ユウくんとアキトくんは、保育園からの仲の大親友。毎日毎日こんなカンジ。だから、二人のおかげで笑顔をもらえちゃうんだ。 「…はぁ…。しょーがねぇな。購買開いたら、ワリカンで一緒に払おうぜ。それでいいだろ?」 「マジ!?!?ありがとうユウ!!!!サイコーやなお前ェ!!!!」 「ちょ、抱きつくな!!!そんな喜ぶモンでもねぇだろ!!!((」 「俺だけは喜べるの!!!」 「なんだよそれ!!!」 「ふふっ…(*^^*)」 「…あ、伊藤さんや~!!おはよお~!!」 「おはよう、アキトくん。朝から元気だねぇ」 「当たり前や!!俺はいつでも元気!!」 「は~…やっぱお前は止められないわ…((」 「そらそうや!!俺は誰にも止められへん!!」 「は~…ホント、小学校の頃から変わってねぇな、お前は」 「ふふっ…♪…あ、そういえばさ…」 「私、今日の朝、職員室に手紙を取りに行ったんだけどね、その時に職員室の中に、この学園で見たことがない子がいたんだ~」 「マジ!?!?」 「うん、眼鏡をかけてたような気がする…多分、どこかのクラスの転校生だと思うんだけど…」 「へ~…」 『~♪♫』 「あッ!?朝休み終わっちゃった!早く教室に戻らないと!」 「ほんまや!!!はよ戻らな!!!」 「二人共急ぐぞ!!」 --------------------------- 私が自分の席に着いた時と同時に、先生が教室に入ってきた。教卓の上に荷物を置く。 「はい静かに~!静かにするよ~!日直は前出て号令始め!」 「きりーつ、おはようございまーす!」 「「「おはようございます!」」」 「ちゃくせーき」 いつもの日直の号令。今日もいつものように授業が始まると思っていた。 「え~、今日の連絡事項を伝える前に、朗報だ」 「このクラスに、転校生が来るぞ!」 「「「……え?」」」 「は!?!?マジで!?」 「二人目じゃん!!」 「うちのクラス転校生が来る確率高くね!?」 「女子だったら何でもいい!!」 「どんな子なんだろ…?」 次々と声が飛び交う中、私もあっけらかんとしていた。 「(…まさか、今日の朝見た眼鏡の子じゃ…!?)」 「はいしーずーかーにー!!じゃ、入ってこーい」 __ガラッ 「__えぇっと…は、初めまして…!」 艶やかなショートヘアに、少しだけ赤らんだ頬。 そして、似合っているとも言える、眼鏡を着用していた。 「安藤優奈と言います。本が好きなので、ぜひ本が好きな人がいれば、教えてください…!」 __ザワッ 教室が、また騒がしくなる。やっぱり、朝見かけた子だ。 「はい、じゃあ安藤の席は__」 「伊藤の隣だな」 「えっ、私!?」 「伊藤、学園案内、よろしくな~」 「わ、分かりましたぁ…」 わぁ…席が隣なんて、緊張するなぁ… __ガラッ 「お隣、失礼しますね」 「は、はい、どうぞ!」 「これからよろしくお願いします。伊藤さん…ですね?」 「は、はい。そうです!」 「私、まだこの学園のことをよく知らないので、いろいろ教えてくださいね」 にこっ。 わっ…凄く大人っぽい…。さっきよりも、凄く輝いて見える… 「はい、じゃあ授業始めていくぞー」 そう言って、先生は国語の教科書を取り出した。 --------------------------- 「__で、あそこが部員指導室。あれはテラス。向こうにあるのは、カフェテリア。休み時間とか放課後とかに、ここで甘いものを食べる人もいるんだ」 「へ、へぇ~…カフェテリアというものもあるのですね…」 「ふふ、興味持ってもらえた?じゃあ、そろそろ次に行こっか!」 「まだあるんですか!?」 --------------------------- 「ねー見て見て!この本凄く面白いんだ!オススメだよ~!」 「わぁ…面白そうですね!お借りしてもよろしいですか?」 「うん、いいよ!読み終わったら、ぜひ感想聞かせてね!」 「は、はいっ!」 --------------------------- 「優奈ちゃ~ん!お昼一緒に食べよ~!」 「えっ!?い、いいですよ…!」 「ありがとう!じゃ、食堂に行こう!優奈ちゃんは何が好き?」 「う~ん…スパゲティなどが好きですね…」 「じゃあ、食堂特製カルボナーラとか、ミートソーススパゲティとか、いっぱいあるよ!」 「へぇ…そうなのですね」 「うん!優奈ちゃんの好きなのでいいからね!」 「…」 「…?どうしたの…?」 「…伊藤さんって、とても優しいですね」 「えっ!?そ、そんなことないよ!?」 「私、学校でこんなに優しくされたの、初めてなんです」 「え…?」 「転校したばかりなのに、積極的に学園案内もしてくれて、今こうして昼食にも誘ってくれて…私、その…凄く嬉しいんです」 「…」 「私、伊藤さんともっと仲良くなりたいんです!なので…と、友達になりたいなと思いまして…」 「…」 「…あっ、す、すみません!無理にお願いしすぎましたね…やっぱりこの話はなかったことに__」 「…クスッ」 「…伊藤さん?」 「あ~あ、言われちゃった。私が先に言いたかったのに!」 「…え?つ、つまり…」 「うん、いいよ!今日から私たち、お友達!」 「…!」 優奈ちゃんの顔が、ぱっと明るくなった。 「あ、ありがとうございます!あ、あと…「ありさちゃん」と呼んでもよろしいですか…?」 「いいよ!今から「さん」付けは卒業ね!」 「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」 「ふふ、どういたしまして。さ、お昼食べに行こ!」 「はいっ!」 --------------------------- 「は~、お昼美味しかったね!」 「ええ、ミートソーススパゲティ、美味しかったです!」 「そうでしょ~?食堂の料理人さんは世界一なんだから!」 「ふふ、そうですね!」 「お~ありさ!昼食べ終わったのか?」 「あ、ユウくん!うん。今食べ終わったところ~」 「そうか~……んで隣にいるのは…安藤優奈、だっけ?」 「は、はい!先程ありさちゃんと友達にならせて頂きました!」 「へ~……って、はあぁぁ!?!?」 突然、ユウくんが驚いた声をあげた。 「ど、どうしたの、ユウくん!?」 「ありさ……もう友達になったのか!?転校生と一日で!?」 「う、うん。そうだけど…」 「マジ…?早すぎね…?これがありさの力…??」 「…あのぉ…」 ユウくんがあっけらかんとしていると、優奈ちゃんが私に囁いてきた。 「城崎ユウさん…ですよね?この方とはどのようなご関係で…?」 「う~ん、彼氏彼女…言わば恋人同士みたいな!」 私がそう言った瞬間、優奈ちゃんの肩がびくりと跳ね上がった。 「そ、そうだったのですね!?すみません!お付き合いしている大切なお人に触れてしまって…!」 「いやいやいやいや別にいいんだぜ!?」 「そ、そうだよ!そんな頭を下げなくてもいいんだよ!?」 「それでもすみません!!私が持ち出した話のせいで!!」 「優奈ちゃん!!大丈夫!大丈夫だからぁ!!」 そんなこんなで、ユウくんとの絡みは、わちゃわちゃした感じだった。その後も優奈ちゃんは頭を下げ続け、ユウくんと私はそれを必死に止めた。 --------------------------- 「す、すみません。あんなに騒いでしまって…」 「いいよいいよ、大丈夫!」 「ありさちゃん、どうかユウくんとの時間も大切にしてくださいね!?」 「分かった分かった!!(( でも、優奈ちゃんとの時間も大切にするね!」 「えっ!?は、はい!ありがとうございます!」 「ふふ、あ、そうだ。私この後委員会の仕事があるんだった。ごめん優奈ちゃん、ちょっと言ってくるね!」 「はい、頑張ってください!」 そう言うと、ありさちゃんは走り去って行きました。 でも、一人になった瞬間、やっと分かりました。「友達」とはこんなに暖かいものなのだなって。ありさちゃんがいなかったら__私は前のようになっていたはずです。 本当に…感謝しかありません。 「…さて、私も学園内を探索してみましょうか…」 そう言って歩き出そうとした、その時でした。 「ねえ、ちょっといいかしら」 「…はい?」 振り返ると、そこには女子生徒さん3人が立っていて、目をつりあげて私を睨んできていました。 「…え?あ、あの…何でしょうか…?」 「アンタね。今日転校してきた子っていうのは」 「え、は、はい…」 「そう、それなら話は早いわ」 ※メモクレに続きます
※メモクレの続きです。 「アンタ、ムカつくのよ」 「…え」 「転校生だからって、調子乗ってるよね?」 「いや…別にそんなことは__」 「ちょっと頭良いからってさ、ウザいんだよ」 「何?みんなの注目を集めようとしてるの?」 「うわ~何それマジムリなんですけど~」 「アンタがこの学園に相応しいと思う?そんなワケないでしょ。アンタなんて、いてもいなくてもどーでもいいのよ」 「うわ何それウケる~w」 「自分完璧ですよアピール?何それウザ。ただの目立ちたがりじゃん」 __頭の中が真っ白になる。確か… 前の学校でも、同じことがあった気がします。 『ちょっと勉強できるからって、調子乗んなよ!』 『みんな、お前が可哀想だからかまってあげてるだけだよ。勘違いすんなよ』 『お前の人生何の意味があるの?』 『お前なんていなくなればいいのにね』 『今すぐ消えろ』 背筋が凍る。昔の出来事が、今と結びつく。 「__おい、聞いてんのかよ!」 「うっ…!?」 ぼーっとしてたからか、3人の中の一人に襟元を掴まれてしまいました。 「…あ、あの…何故、私にそんな態度を…?」 「うるせぇよ。お前がウザいからだよ」 「__っ!?」 鳥肌が立つほどの、低い声。私は、何もできませんでした。 「何でお前なんかがこの学園に来たんだよ。目障りなんだよ」 「迷惑なんだよ。消えろ」 「っ……」 私の目に、涙が溜まる。 __だから、嫌だったんです。 学校なんて…__ 「何してんねん。お前ら」 「…え?」 「その子、嫌がっとるやろ。離してあげろや」 冷たい目つきの__男の子。 「はぁ?何よ、人の話に突っ込んでくんなよ!」 「それは申し訳ないわ。でもな、そうやって人に当たるの、いい加減やめた方がええで」 「うっせぇな!他人が口出ししてくんな!」 「…はァ…お前らさぁ、人に暴力暴言吐いたりして何が楽しいん?俺にはさっぱり分からないのですが」 「チッ…しつけーな…」 「入学した時からな、俺ずっと思っててんよ。人の体も心もズッタズタに傷つけて、何が面白可笑しいんだろうなって。異常者なのかなって」 「は?勝手に異常者扱いすんなよ!」 「いやいやいや、そう思われても仕方ないやん。やってることも言ってることも、全部正気とは思えないんやから」 「…お前…いい加減にしろよ!」 「うっさいなぁ、さっきも言ったけど、いい加減その子から離れろや」 「こっちの事情も知らずに好き勝手言ってんじゃねーよ!」 「え~、でもさっき会話聞いちゃったから、事情は知ってんねんけど。あ、これ一部始終録音してるけどだいじょぶそ?」 「…は?」 「あとで先生に提出しとくわ」 「チッ…何だよ!勝手に録音すんじゃねーよ!」 「いだっ…!?」 そう捨て台詞を吐くと、女子生徒さんは私の襟元を掴んでいた手を離し、一目散に逃げていきました。 「いたた…」 「ちょ、大丈夫か!?」 「は、はい。何とか…」 「あいつら、この学園で有名ないじめっ子集団やから。気を付けや!」 「は、はい。気を付けます!…その…た、助けてくださって、ありがとうございます」 そう言って、私はぺこりと頭を下げました。 「ええてええて。他人が傷ついてるのは、見たくないからな」 「…え」 __トクンッ …あ、あら…?今、微かに心臓が高鳴ったような… 「…あ、あの…お名前は…」 「俺?井上アキト。君は…あれか、安藤なんたらやったっけ?」 「ゆ、優奈です!なんたらとか言わないでくださいっ!」 「っはは、ごめんやで」 そう言って、屈託ない笑顔を見せた。 __ドクンッ …え? な、何ですか…?これは… 「そんじゃ、またな~」 「えっ…!?は、はい…」 何でしょう…不思議な気持ちになりますね… …きっと、ただの気のせいでしょう。 そう思っていました。 --------------------------- 「…どうしてですか」 アキトくんに出会ってから、私の生活は一変しました。 声を掛けられる度にドキッとしてしまう。 笑顔が素敵だと思ってしまう。 気になって仕方がなくなってしまう。 何故か目で追ってしまう。 そして__ 彼のことを想うと、鼓動が高鳴る。 胸が苦しくなる__。 「(一体何なのですか、これは…)」 今は授業中。でも、授業の内容は全く頭に入ってこなかった。 自分の席の斜め上の__アキトくんの席を眺めてしまう。 「(最近アキトくんばかり意識してしまいますね…本当にこれは…どのような感情なのでしょうか…)」 すると__ 「…?」 「あっ…」 ふと後ろを向いたアキトくんと、目が合ってしまった。 「(どっ、どうしましょう…!?変に思われたでしょうか…!?)」 そう思いましたが__ にこっ。 アキトくんは、目を細めて笑ってくれた。何の偽りもない、優しい目… 「っ!?」 __ドキッ また、心臓が高鳴った。 「(お、おかしいです…どうして…どうして…?)」 「__おーい、安藤?32ページ、読んでくれないか…?」 「えっ!?は、はい!!」 まだ頭がモヤモヤした状態のまま、私は教科書を急いで開きました。 --------------------------- 「…はぁ~~…もう、私どこかおかしいのでしょうか…?」 結局、教科書を読んでいる途中で読み間違えてしまいますし、どこを読んでいるのか分からなくなったり… 「仕方ありません、気分転換に図書室に行きましょうか…」 __ガラッ 「えーと…今日はどれを読み__」 私は、今月のオススメ本がある本棚を見ました。 「…え?」 本棚は、ほぼ恋愛小説で埋まっていました。 「…え…??れ、恋愛小説…?今まで読んだこと無かったのですが…」 私は一瞬、読むか迷ってしまいましたが… 気づいたら、本を手に取っていました。 「…一回だけ…読んでみますか…」 --------------------------- 『僕は、君が傷ついたりするのは嫌なんだ』 『っ……』 『(おかしい…心臓が…ずっと高鳴ってる…)』 『僕は君の笑顔が、一番好きだからね』 『えっ!?』 『後日、友達に相談した。先輩といると、変な感じになってしまうと。そしたら__私は先輩に… 恋をしているって』 「っ!?」 パタンッ! 「(無理無理無理です!やっぱり恥ずかしいです!)」 そして、私は恋愛小説を本棚に戻し、走り去ってしまいました。 「はぁ…はぁ…」 私は、肩で息をしました。本を閉じてしまったその前のページに書かれていた__『恋』をしている。 「…何なのでしょうか…『恋』とは…」 私は、気になって仕方がありませんでした。 「誰か、教えてくれる方はいませんでしょうか…?」 そう考えながら周りを見渡していると__ 「あっ、優奈ちゃーん!」 __いた。恋に詳しそうな人。 それはまさしく、私の友人でした。 「どうしたの?そんなところで。顔赤いよ?」 「い、いえ…何も…そ、その…ありさちゃん」 「…恋とは…一体どのようなものなのですか…?」 「…え?…えっ!?え!?何その質問!?ま、まさか優奈ちゃん__」 「ちっ、違います!!先程恋愛小説を読んだんですよ。そこに『恋』という言葉が出てきて…ほら、ありさちゃんには恋人がいらっしゃるでしょう?だから、ありさちゃんなら詳しいかなと思いまして…」 「あ、そういうこと?」 「は、はい!」 一応、言い訳成功。 「ふふん、任せて!恋愛マスターの私が説明してあげる!」 「恋愛…マスター…??」 「まずは~、その人といると、胸がキュンキュンしちゃうとか~」 「…」 「その人のことを想うと、脈拍が上がっちゃうとか~」 「…」 「その人と会うと、明るい気持ちになるとか~」 「…」 「妙に「嫌われたらどうしよう!」って不安になっちゃうとか~」 「…」 「あとは~、もう胸がキュンキュンしちゃって、すっごく苦しい感じ~!」 「…」 キュンキュン… 苦しい… 脈拍が上がる…? 私は、もう一度、自分の胸に手を当ててみる。 トクン、トクンと、脈拍が伝わってくる。 __あのアキトくんの屈託のない笑顔。 友達と笑い合っている時。 少しおっちょこちょいなところ。 そして、ピンチの時は、必死で守ってくれる__ 「…」 胸がドキドキする。苦しいほどに。 __先程、ありさちゃんが言った通り、苦しいほどに胸がドキドキしてしまう。 「…?どうしたの?優奈ちゃん?」 __もしかして、私… アキトくんのことが、好きなのでしょうか__……? -end-