命に嫌われている。#4-安心平等な抜け道に- ※グロテスクな表現、人によっては不快な表現がある可能性がございます。ご注意ください。 -トルード・ルカ 視点- 「抜け道...?」 「そんなものがあるのですか?」 ...このゲームには、抜け道がある。 そう言った途端に、八神凛さんと月見空線さんが私に詰め寄ってきた。 凛さんと線さんは、ぐいっと身を乗り出して私を見つめてくる。 ...近い。 「ちょっと離れてもらえますか...?」 そう言って一歩後ずさると、凛さんと線さんも一歩後ずさった。 「だが...このルールで抜け道なんてあるのか?」 凛さんは、さっき配られていた紙を眺めている。 「参加者31人より少ない20の酸素マスク...酸素マスクを奪い合う...参加者の判断...脱落...」 顔を顰めて、ぶつぶつ言っている凛さんに、私は指示した。 「凛さん、その紙の一番下の文章を...読んでください」 「一番...下?」 凛さんは首を傾げてから、文章を読み上げた。 「『このゲームの生還人数は20人とは限らない。』...あ。」 「20人以上が生還できる...ってことでしょうか?」 九条憐さんが、目を細めて言った。 「そういうこと...です。」 私は酸素マスクを掴んだ。 「酸素マスクさえ取れたら...その人は、生き残ることができます。...でも、酸素マスクは増やせないです。」 「『20個の酸素マスクを、31人...いや、29人が一斉に使う方法』。...ここまで言ったら、分かりますか?」 一部の人が、はっとしたように顔を上げた。 「複数人で、同じ酸素マスクを使えばいい...ですよね?」 そう言って振り返った憐さんの瞳は、ほぼ目を瞑っているにも関わらず、輝いているように見えた。 私は頷いた。 「桃神さん。...酸素マスクは、複数人で使っても...いいですか?」 マイクが揺れる音がする。 「はい。酸素マスクは、2人までなら共同で使っても大丈夫です。...ですが、3人以上で使うと酸素が足りなくなりますので、ご注意ください」 感情の籠もっていない声が聞こえた。 「...これで、全員が...生き残れる、かもしれません」 私は息を吸い込んだ。 「生き残ってください。...全員、で」 それを合図に、みんながばらけた。 ‐鳩羽偽廉 視点‐ (みんなどんどん酸素マスク取ってくなあ...) 2人で仲良く酸素マスクを取っていく人たちを、僕はただ羨ましそうに眺めていた。 椅子取りゲームが、安心椅子取りゲームに変わってしまったみたいだ。 安心椅子取りゲームというものは、椅子に座れなかった人が、既に椅子に座っている人の膝に座ってみんな生き残る、というルールだ。 徐々に椅子を減らしていって、最終的にはみんなが椅子に重なり合うことになる。 勝ちも負けもない、笑いに包まれる平和な遊び。 ...でも。 (人の膝に座る勇気がない人は、どうしようもないんだよなあ...) 安心椅子取りゲームは、昔によく学校でやっていた。 ...でも、僕は1回しか参加したことがない。 人の膝に座る勇気も、自分の膝に座られることを許す心の広さも持ち合わせていなかったからだ。 膝に座ろうとしたら、嫌な顔をされる。自分の膝には、誰も座らない。 安心なんて、平等なんて、叶うわけがない。 それが、人間だから。 どうせ僕は、ここで死ぬ。 みんなを眺めながら、そう思い込むしか、僕にはできることがなかった。 『酸素濃度 15% 14%まで 0:19』 ‐ルメラ 視点‐ (...どうしよう) 白い床をコンコンと打ち鳴らしながら、僕は部屋をうろうろしていた。 (多分、僕が一番子供だよね...?) 参加者のみんなは、僕よりも背が高い。 多分みんな高校生?くらいの年齢だけど、僕はまだ小学生だ。 なんとなく。 なんとなくだけど、舐められている気がする。 いつもだったら、明るいおねえちゃんの隣にいるから、舐められることなんてないのに。 明るいおねえちゃんの笑顔を思い出す。 と、特に意味もなく、身震いがした。 「...?」 なんでだろう。 おねえちゃんは笑顔なのに。 なんで、ちょっとだけ、怖いんだろう。 「...あなた、大丈夫?」 不意に後ろから、声をかけられた。 びっくりして振り返ると、そこには彼野綺樹香さんが立っていた。 ひの、きずかさん、と読むらしい。 綺樹香さんは、おねえちゃんそっくりの笑顔を浮かべている。 「...だいじょうぶ、です」 僕がそう答えると、綺樹香さんは安心したように笑った。 「良かったです。下を向いていたから、気分が悪いのかと思いましたわ」 ...結構、お節介な人らしい。 僕がおどおどしていると、 「...酸素マスク。一緒に、使いませんか?」 そう、提案された。 ...断る理由はない。 「いい、ですよ」 僕は頷いた。 綺樹香さんは、笑った。 ...少し、怖いような気がした。 綺樹香さんと一緒に使った酸素マスクは、生暖かいような、甘いような、苦しいような感じがした。 命に嫌われている。#4-安心平等な抜け道に- Fin.
-クレジット- 三団子桃神 @31_sansyokudango1_氏 トルード・ルカ @Himananndayo様 八神凛 @snowdrop4771様 月見空線 @Makaron_23様 九条憐 @-mitarasidanngo-様 鳩羽偽廉 @MSNY25様 ルメラ @cloud1897様 彼野綺樹香 @Kasiwa_Rimou様 ♪命に嫌われている/カンザキイオリ様、まふまふ様 @hamatojunpyhappy様 -前回- https://scratch.mit.edu/projects/1251135373 -次回- そろそろ第一ゲーム終わり、そして#5 -初回- https://scratch.mit.edu/projects/1251395393 -公式スタジオ- https://scratch.mit.edu/studios/51373145/ -キャラ専用スタジオ- https://scratch.mit.edu/studios/51383841/ ‐一言‐ ...タメ語キャラどこですかー?! いやすみません失礼しましたさんいちです。 タメ語キャラ少なくてネタ枠2人しかいなくて困ってます。 今回タメ語が凛さんくらいしかいらっしゃいません。 まあ良いや。今回作るの楽しかったし。 安心椅子取りゲームってなんだよ作者もわかんねえよ。 シリアス楽しかったよ鳩羽さん視点なんかテンション上がったよ。 あとおねショタは良いですね。 ありがとうございました。 それでは毎回恒例のセリフ、行きましょう。 コメント。ください。 -ファンアートタグ- #命に嫌われた芸術作品 -考察タグ- #命に嫌われた解析表