その家にはカラタチの垣根がありました。 都心から少し離れた田舎の街並み、 その中でも大きな木の生茂る森に隠れた暗がりを そこ一部だけやさしく照らす怪しげな陽の下に その家は建っていました。 無機質なコンクリートの家でした。 春には白い花がたくさん咲き、 その様は大層可憐なものでしたが、 そんな家を気にする人の姿はなく このことを知っていたのは その家に住む夫婦だけだったでしょう。 カラタチの実がなる頃、 ある男は町を歩いている時 見慣れない少女を見つけました。 年に見合わない分厚い本を立ち読んでいました。 小さな町なもので、 知らない子供などいないはずでしたから 珍しがるのも無理はありません。 少女がさっきの本を買ったのだと思われた後 少し手遊びをする仕草を見せた瞬間、 町に豪風が吹き荒れました。 建物こそ倒れなかったものの 立て看板や銅像は引きずられ倒れ、 道が削れました。 男は、少女を心配し、みると そこには、 魔と会話をしている異端の姿がありました。