短編集「骨を切らせて肉を断つ」 第一話「びょういんごっこ」 4児の母、佐恵子は今日も仕事が終わり帰宅した。 玄関で出迎えてくれたのは長男(9歳)の隼人と次男(7歳)の優希。 「ただいま。今からご飯するからね〜。」 そういいながら早足でキッチンに向かった。 きっと私の可愛い子供達はお腹を空かせていることだろう。 私がキッチンで料理をしている時、話し声が聞こえてきた。 またお医者さんごっこをしているようだ。 子供達はお医者さんごっこにハマっている。 いつも隼人が医師、長女(6歳)の里香は看護師、優希と末っ子(3歳)の奏太は患者さんをやっている。 いつも楽しそうで私はすこし羨ましい。 次の日も無事に一日を終え、家に帰る。でもなぜか優希がいない。 「優希はどこ?」 そう聞くと、 「しらない。」 と言った。かくれんぼでもしているのだろうか。 ふと、視界の隅にダンボール箱が置いてあった。 私は開けようとした。 「このはこはあけちゃだめ!」 なぜか隼人と里香に止められた。 理由を聞くとどうやら秘密らしい。 正直すごく気になったが、私の可愛い子供達を押しのけて開けるのは気が引けるので開けるのはやめておくことにした。 その次の日。今度は末っ子も居ない。 優希と奏太はどこなのか聞くけど 相変わらず知らないらしい。 ふと、目についた箱の中から腐乱臭がしたので思い切ってあのダンボールを開ける。 「!?」 そこには腹が裂かれ、臓器が抜かれた状態の優希と奏太が入っていた。 「なにこれ…何をしたの!?」 声を震わせ聞く私に隼人と里香は声を揃え、こう答えた。 「しゅじゅつ」
短編集「骨を切らせて肉を断つ」 第二話「スリル狂」 高校生の瑠衣は、極度のスリル好きだった。わざと車の前に飛び出して轢かれそうになったり、ギリギリバレそうなイタズラをしたりするのが好きだった。それは彼の友人2人も同じだった。今日は腕を刃物で削って何回目で出血するかを賭けて遊んでいた。今日は友人の瑠衣の友人のうちの一人、汐音が腕を削る番だ。汐音は女子だけど、男子でも敵わないほど度胸が人並み外れている。 「俺は4回目で出血するに1200円!」と瑠衣が言った。 勇太は「僕は3回目に980円!」と言った。 「じゃあ削るよ!いーち!にー!」 躊躇なく腕を削っていく汐音は痛覚が無いのかと疑うほど笑顔だった。結果は5回目で出血だった。 「二人とも惜しかったね!じゃあこの賭け金は私の物です!明日は瑠衣の番だからね!」 微笑みながらそう言って去っていく汐音は瑠衣たちにとってアイドルのようなものだった。実際、汐音は高校一のアイドルだけど。 そして、瑠衣の隣で悶える人物がいた。 「また悶えてる…。」 「だって、好きな相手に微笑まれたら誰だって悶えるでしょ!」 勇太は大声でそう答えた。 「確かにそうだな。」 適当に流すことにした。 そんな日常が続いていたある日、俺と勇太は汐音に呼ばれた。 「今日、廃墟に行かない?」 「行きたい!」 ほぼ同時に俺ら二人はそう答えた。」 なぜなら、廃墟のいかにも何かでそうな雰囲気がとてつもなく好きだったからだ。 「じゃあ今から行こう!」 俺らは汐音について行った。 廃墟は意外とすぐ近くにあった。 中に入ると地面にはゴミが散乱していた。おそらくゴミ屋敷だったのだろう。しばらく進むと、見慣れた鞄が落ちていた。 「このバッグ、どこかで見たような…」 「気のせいじゃ無い?」 俺と勇太はそんな会話をしていた。 「着いた。」 ふと、汐音がそう呟いた。 いまから見せたいものがある。 そう言うなり扉の鍵を開けた。 そこにはたくさんの写真があった。 そこに写っていたのは…汐音だ。 「私…すでに死んでいるの。学校のみんなには生きてるふりをしてたけど。」 「え?嘘だろ?」 「何かの冗談?」 俺らは戸惑った。心臓が速く脈打つ。 「嘘でも冗談でも無い。スリルを求め続けて崖から落ちた。あなたたちに一つだけ伝えたいことがあって成仏ができない。」 「伝えたいこと?」 「スリルを追求するのをやめて平凡に暮らして!じゃないと私みたいになるから!私みたいにスリルを追求し続けて死んでしまう!」 「急にそんなこと言ったって」 「分かった。もうスリルを追求するのをやめる。」 言葉を遮って勇太がそう言う。 「汐音がそう言うなら僕はやめる。だって汐音のことが…」 そう言いかけて勇太は言葉が出なくなった。 「わかってるよ、勇太の気持ちは。でもごめんね。死んじゃったから付き合うことはできない。今は二人がスリルを追求することをやめてくれたら私はそれだけで幸せだよ。」 「ごめん、俺もやめる。」 俺もそう言った。 「わかってくれたらいいんだよ。」 そう言って汐音は消えたいった。 一週間たったある日、ホームで帰りの電車を待っていた。その時、なぜか急にとてもソワソワした。勝手に足が前へと進む。 「そこの学生さん!線路の方に行くと危ないよ!」 そんな声が聞こえた。でも進む足を止められない。 そのまま俺は線路に降りた。降りてしまった。 どうしてもスリルに抗えなかった。 後ろから電車の音が聞こえ 「次のニュースです。〇〇駅で高校生が線路に降り、電車に轢かれる事故が発生しました。防犯カメラの映像では、高校生は自分から線路に降りていることが確認されましたが、動機は不明です。」