「なん……で…」 その力無い声と共に、ターゲットは膝から崩れ落ちた。 「…よし」 通信端末をオンにし、遠くのビルの屋上を見上げる。スコープの鋭い反射光が、俺を見つめていた。その光に向け、親指を立てる。 「Good job, Isaac. I made the right call leaving the sniping to you.〔よくやった、アイザック。狙撃をお前に任せて正解だったぜ〕」 『No, it's precisely because you caught his attention, Victor.〔いえ、貴方の揺動があってこそです。ヴィクター〕』 「Don't be so modest—it's all thanks to you. You're in for a nice bonus this year.〔そう遠慮するな、お前の手柄だ。今年のボーナスは弾むぞ〕」 通信を切って、隠れていた部下達を呼び出す。 「We did it! We gave this indestructible bastard a taste of his own medicine!〔やったぞ!この不死身のクソ野郎に一泡吹かせてやった!〕」 不死身と言われたSWMの1人、しかもリーダーをぶっ潰した。これ以上ないくらいの大成功だ。BREN 3のハンドルを引くと、チャンバーから水色に輝く弾丸が顔を覗かせた。 ついこの前、諜報班が興味深い情報を持って来た。数週間前に共闘した日本合衆国の極秘部隊S.O.E.T.は、不死の存在をも滅する弾薬を持っていると。ついこの前、SWMの殺害命令が下ったばかりだ。俺達はすぐさま再現に取り掛かった。 情報はあまり鮮明ではなかった。わかったのは、特殊加工が施されたエネルギー物質『EN粒子』が弾頭内に混ぜ込まれている、という事のみ。だが技術班はやってくれた。通常のライフル弾の弾頭の鉛芯をくり抜き、そこにEN粒子を極小のプラズマカプセルに封入して均一に分散配置する手法をわずか3日で確立してきた。完成した弾薬は、通常のものより僅かに反動が強い程度で、既存のライフルで問題なく使用できた。相変わらず彼らの技術は脱帽だ。 「There are only three left. Let's finish them off quickly and head back home.〔残りは3人だ、さっさと片付けて国に帰ろうぜ〕」 そういって、入り口の本棚に手をかけた、その時だった。 「…う、うぅ……」 どこからか、うめくような声が聞こえた。急いで声が聞こえた方向に銃口を向ける。そこにいたのは……倒れた廻嶺、ただ1人。 「What's wrong, Victor.〔どうかしたんです?〕」 「Didn't you just hear something?〔今、何か聞こえなかったか〕」 「I didn't hear a thing. It must have been my imagination. Let's hurry home and dig into a Bison steak.〔俺にはなにも…。きっと気のせいでしょう。さっさと終わらせて、コロラドでステーキでも食べましょうや〕」 デイヴはそう言うが……妙な胸騒ぎがする。廻嶺の身体を起こして、胸に耳を当ててみた。 一定のリズムで脈打つ、鼓動の音が聞こえる。 (…まさか) 撃ち抜かれたこめかみを見てみる。非常にゆっくりと、しかし確実に、傷口が再生しつつあった。 「Oh, shit.〔まずったな〕」 「?What’s wrong…〔?一体何を…〕」 「Listen up, everyone! These bullets won't be enough to kill them all. ...We missed up.〔全員よく聞け!この弾じゃコイツらは殺しきれない。...俺達は、しくじった〕」 畜生、なにがまずかったんだ。確かに諜報班が持って来た情報には、.454 URI-EN弾の効果が明確に記載されていた。5年前の戦いで、不死の存在であるSWMのクローンの殺害に成功したと。ただ粒子を混ぜ込んだだけじゃダメだったってのか? 「おーい廻嶺、まだ直らないのか?」 地下に続く通路の奥から、声が聞こえて来た。まずい、このままじゃバレて全滅だ。 「Guys! Continue the operation! If we keep this up, we're going to get wiped out!〔作戦続行だ!このままじゃ俺達がやられちまう!〕」 大急ぎで部下達を配置につかせる。気絶までは持って行けたんだ、今はできる事をやるしかない。 「Listen up—make sure you shoot them in the head! Anything else might not work!〔いいか、確実に頭を撃ち抜け!それ以外は効く保証がない!〕」 階段を下った先に、一つのドアが見えた。この先に、あの狂犬共がいる。恐怖で手が震えた。 落ち着け、ヴィクター。この部隊を率いているのは俺だ。 「Here we go… 3, 2, 1. Go!!〔やるぞ… 3、2、1、突入‼︎〕」 僅かに開けたドアの隙間からフラッシュバンを投げ込む。起爆と同時に蹴破り、中に突入する。 「Tango down!(ターゲットダウン!)」 入ってすぐの部屋にいた2人は、エドナが片付けた。青い髪の女と、紫の髪の男だ。 「…We did it?〔…やったか?〕」 「Not yet! There's still one more...〔まだだ!まだ1人…〕」 イザベラが叫んだ直後、後ろから言い表せない殺意を感じた。振り返った先にいたのは、巨大な剣を構えた、黒髪の男。 「F××k…!〔くそッ…!〕」 反射的にナイフを引き抜き、振り下ろされた剣を受け止める。 一瞬、ほんの一瞬だが隙ができた。 そのまま剣を受け流し、奴の腹を蹴り飛ばす。吹っ飛んだ奴の眉間目掛け、銃弾を叩き込んだ。 「Ugh… You bastards.〔はぁ、はぁ……クソどもめ〕」 「So... what are we going to do about these f××kers?〔それで……コイツらどうするんです〕」 部屋の真ん中に集めた4人の狼どもを見て、イザベラが言った。 「We can't do any more than this, so we have no choice but to retreat...〔これ以上は俺達にはできねぇし、撤退するしか…〕」 『…This is Isaac. There's someone standing in front of the entrance.〔…こちらアイザック。入り口の前に誰かいます〕』 くそっ、この面倒な時に…。 「Everyone, be on high alert. Isaac, what are their distinguishing features?〔全員即応態勢を取れ。アイザック、そいつらの特徴は?〕」 『There is one man and one woman. The woman looks quite young. As for their weapons... the man is carrying what appears to be a large revolver.〔男と女が1人づつ。女の方はまだ幼く見えます。武装は…大型のリボルバーらしきものを一丁〕』 「Got it. Thanks.〔了解、感謝する〕」 数秒後、1人の男が扉を開け、入って来た。 「廻嶺!大丈夫k ぐっ⁉︎」 その背中を、デイヴが思いっきり殴りつけた。倒れた男を、ハワードが押さえ込む。 「離せっ、クソ野郎!」 「Don’t panic!(暴れるな!)」 「離してよ!」 後から入って来た女が、ハワードの腕に飛びついた。 待てよ。この声、どこかで聴いた事がある。2人の顔をよく見てみる。……コイツら、S.O.E.T.のマイクとキャサリンか? 「You bastard…!(っ、このクソガキ…!)」 「Hey. That’s enough, let him go.(おい。もういい、離してやれ)」 「But…(しかし…)」 「This is an order! Let him go! Now!(これは命令だ!さっさと離せ!)」 「……Yes, sir.(……了解)」 「マイク、部下がすまなかった」 「…ヴィクター⁉︎ なんでお前が⁉︎」 マイク達は大いに驚いている。俺達がいるとは思ってもいなかったんだろう。マイクが構えているリボルバーを注視してみる。…シリンダーの隙間から、水色に輝く大口径の弾薬が見えた。なるほど、これがホンモノの.454 URI-EN弾か。 ありがとよ、マイク。おかげで手ぶらで帰らずにすみそうだ。 「アメリカ政府からの命令だ。SWMを殺せ、ってな」 「なんだって…」 「コイツらはドバイで米兵を殺した。そのツケを払ってもらう」 To Be Continued…
すげぇ今更ですが第八章と第九章の間の外伝です。