第一章 紅き月は光る コツン、コツン、と歩く音だけが聞こえる。 月の光が道を照らす夜の博物館はかなり暗い。 「この時が来たわね……。」 忍足で博物館を歩いていた二人組のうち1人がボソッと呟く。 マントをヒラヒラ揺らしているが、足音以外の物音は一切立っていない。 一流の怪盗だ。 「あぁ……そうだな。この博物館から……。」 「金の賽銭箱を盗む日が」 「銀の魔導書を盗む日が」 「……は?」 早速息があっていない。 「いやいやいや!賽銭箱でしょう?!売れるわよ?!アンタね、世の中は金なのよ?モテないよ?!」 「モテるわ!銀の魔導書は警備が厳重!スリルがあって楽しいでしょうが!」 言い争いをしているとまた新しい足音が近づいてきた。 「やばっ刑事きた!!!」 2人の怪盗はしゃがみ込んでショーケースの裏に隠れた。 「あれ……確かに話し声がしたと思ったんだけど。」 「お姉様、きっと気のせいだよ……全く、西行寺家のお嬢様は人使いが荒いんだから。怪盗団からの予告状が届いたら即一昨日から残業だよ?」 「フラン、それ以上愚痴は言わないの。これが終わったらいっぱいねれるんだから。」 「分かったよ….でも、怪盗なんているのかね?」 2人の刑事は階段を登り、その場所を後にした。 「聞いたか霊……怪盗R。警備は疲れてるそうだ。」 「えぇ魔理……怪盗M。その上で何を盗むか決めるわよ。」 怪盗2人は何処から手に入れたのか博物館の館内図を広げた。 一般のとは違い、地下の電力室なんかも書いてある特殊な館内図。 「警備は特に博物館の西側……特別展示室の方に固められている。だから賽銭箱は手薄だ。」 「盗みやすいじゃない。売れるし。」 「いんや。実はこの博物館にはもっと高いものがあるんだが……。」 怪盗Rが一瞬目を見開く。 そんなの聞いてない、みたいな顔で怪盗Mの方に近づく。 「4階特別展示室の北の端にある宝石、【月光の涙】。通称「願い石」。この博物館で最も盗むのが難しいと言っていいだろう。」 「へえ、なんか伝説がある系?」 「鋭いな。じゃあお決まりのストーリーだ。まぁ暇つぶしに聞いてくれよ。あー……昔々、ある楽園に吸血鬼の姉妹がいました。」 怪盗Mは重い口調で語り始め、その気迫に怪盗Rはゴクリ、と唾を飲む。 「吸血鬼達はメイドや仲間達に囲まれてとても幸せに暮らしていました。……ところがある日、吸血鬼の妹とメイド長がいきなり命を落としてしまいました。」 「何が起こったの?」 「さあな。とにかく「何か」が起きたんだよ。その後も残された吸血鬼の姉を襲ったのは悲劇だったのです。メイドは1人もいなくなり、6人もいた幹部メンバーは吸血鬼とあと1人になりました。その時に吸血鬼が流した熱い涙が琥珀に閉じ込められ……紅く光り、吸血鬼と残された従者が最期を迎えた……その時に吸血鬼の「願い」が一つ叶ったんだよ。その画像がこれだ。」 怪盗Mはある一枚の画像を突き出した。 「配色が変ね。肌が赤くなってたり…。」 「いいところに気づいたな。写真なのか絵なのか知らんが……この吸血鬼の真下にある赤いもの……これが月光の涙。普段は黄色だ。」 怪盗Rはにっこりと微笑んだ。 「へぇ……なんだか、妙に現実味があるわね。でも……ねぇ魔理……怪盗M、盗むのを明日の昼に回せる?」 怪盗Mは一度ビクッと体を震わせたが、怪盗Rの目を見て、不敵に笑った。 「了解」 名探偵 パチュリーside 事務所の窓の近くの花は満開に咲いていた。 ひらひらと何もなかったかのように散っていく花を見て、パチュリー・ノーレッジはため息をついた。 平和すぎる。 いや、平和なのはいいことなのだ。 でもつまらない。 事件を解決するのが探偵。 それなのに事件がない。 「パチュリー様、依頼がありました。」 この事務所のもう1人の探偵、小悪魔が事務所のドアを開けてそう告げるとパチュリーはばんっと強く机を叩いて立ち上がる。 「なんの事件?」 「最近話題の怪盗団です。その怪盗団のうちの2人……怪盗Rと怪盗Mが今日の昼、西行博物館の【月光の涙】を盗む、と予告状が届いたそうですよ。」 パチュリーは無言で探偵の帽子を被って小悪魔にコートを着せた。 「はあ……こうなると思ってましたよ……。」 パチュリーはニッコリ微笑むと西行寺博物館へ駆け出した。それを小悪魔は慌てて追っていくのだった。 「だから探偵なんて必要ないわ……そもそも【月光の涙】なんて作り話。あれはただの琥珀だもの……。」 西行寺博物館の館長であり、資産家の西行寺幽々子。幽々子は探偵2人が来ても嬉しそうな態度は見せなかった。 「随分と自信満々ねえ。」 「パチュリー。うちにはね、最高の警備体制があるの。特に特別展示室には!北側に窓があるけどこれは開かない二重窓だし、入り口のドアは手荷物検査機もかねている。……変なもの持ってたらすぐに反応するから。大体、誰よ。探偵なんか呼んだの?!」 幽々子は周囲にいた警備員たちを睨みつけ、警備員はたじろぐ。 「幽々子様。私です。」 すっ……と手を挙げたのは彼女の義理の娘である魂魄妖夢だった。 「妖夢ちゃんだったのね。でもここまでやらなくても……。」 「いいえ、怪盗はかなりのやり手です。ここは探偵さんに任せましょう。」 怒った幽々子はズカズカと歩いて出て行ってしまった。 「すみません……お義母……幽々子様が。あーゆう性格なんです。」 「別に構いませんよ!あ、特別展示室で写真を撮りたいんですけどスマホの持ち込みはOKですか?」 「うーん……入ってみるまでわかりませんね。引っかかる物は幽々子様しか知らないようなので。あ、でも展示室内の撮影はOKなので多分大丈夫……。」 小悪魔はホッとしたようにスマホをかばんにしまった。 特別展示室は非常に混んでいた。 どれくらいかというと通勤ラッシュの電車の人数を2で割ったくらい。 「これが【月光の涙】……。あ、パチュリー様。上にメンテナンス用の通路がありますね。あそこからなら防犯カメラに届きそうです。」 「あら本当だ。まあメンテナンス通路は妖夢が壊れてるって言ってたし、あそこ。でかい穴が空いてるでしょう。あれじゃあ細工はほぼ不可能ね……。」 【月光の涙】のガラスケースは幽々子の顔認証のみでしか開く方法がないらしい。 ほとんど安全だが、万が一のため見張っておくことにした。 それから30分後。事件は起きた。 ぱぁん、と音と同時に辺りが白い煙に覆われたのだ。 「こほっこほっ……パチュリー様、煙玉です!」 来場者がパニックになり、その場にいた妖夢が警備員に扉を開けて逃げ道を確保してと叫んでいる。 「早く扉を開けて!このままだと酸欠になってしまうかも……広い場所での煙玉ならともかく、密室だと空気の逃げ道が……。」 ようやくようやく煙が晴れて、小悪魔とパチュリーは慌てて【月光の涙】のケースを見た。 「……あ!」 『怪盗団参上!ケースの中にある琥珀は偽物』 そう書かれたカードが置いてあった。 「なんの騒ぎですの?!」 幽々子が走ってやってくると顔を真っ青にしてケースに近づいた。 「そんな!ほ、本当に偽物なの?!」 幽々子は顔認証で取り出そうとする。 「ダメです!」 「なんでよ!確かめないとでしょ?!」 「顔認証でケースから出した瞬間に……!」 小悪魔が叫ぶ、も遅かった。 「ゲット〜♡」 ある警備員が幽々子から【月光の涙】を奪い取り、もう1人がスタスタと近づいてきた。 「あ、あなた達は……。」 「ご名答!」 2人は警備員の服を脱ぎ捨てると……怪盗の服に変わった。 「怪盗団の怪盗Mと怪盗Rと言うぜ。以後お見知り置きを……。」 「名探偵さん、貴方かなり惜しいところまで来てたわよ?まあでも……私らの方が一枚上手だったわね。西行寺幽々子。これを返して欲しかったら貴方の隠し事を言いなさい。どうせ私らが狙っているのはこれじゃないもの。」 小悪魔が目を見開く。 「つまりこれは偽物ってことだよ。最初からな。吸血鬼の姉と従者の最期の画像、それは恐らくサーモグラフィーカメラで撮った物だ。」 「でも、どうやって偽物だなんてわかったんですか?」 小悪魔が怪盗Mに聞くと怪盗Mはニヤッと笑って答えた。 パチュリーはもう知っていたと言うふうにジッと怪盗を見つめる。 怪盗Rは、それを見て再び話し始める。 「紅く光る……まあ吸血鬼の涙は高温っていうこと。そこの小悪魔ちゃんはスマホを持ったままゲートを通過してもブザーはなりませんでした。つまりスマホは持ち込み可能。あまり正確ではないけど、スマホでもサーモグラフィーカメラのアプリがある。それを使って私たちは調べたんだけどね、この琥珀は緑だった。そもそも私らが手袋なしで掴めてる時点で偽物ね。」 怪盗Rは持っていた偽物の【月光の涙】を幽々子に投げた。 「父から貰った大切な物……だっけ。目当てじゃないのものを盗むほど私らは悪くないわ。その代わり、次は本物を盗みにくるからね……」 そう言って、怪盗は姿を消した。 しばらくして、幽々子は静かに語り始めた。 「騙して、ごめんなさい。怪盗団の言うとおり、これは偽物ですわ。父上から貰った、琥珀ですの。」 「なるほど……だから咄嗟に偽物か確かめようとしたのですか。」 小悪魔は納得するも、周りをキョロキョロ見渡した。 「あれ、妖夢さんは?」 「本当だ。いつの間に?」 幽々子が本物の【月光の涙】を持ってきてショーケースに入れる頃には、魂魄妖夢の姿は博物館から消え失せていた……。 第一章 完 第二章 五つ子と妖しき桜 名探偵小悪魔の元にある電話が鳴り響いた。 小悪魔はその電話を取ると、肩と耳で受話器を挟み、メモをとり始めた。 「はい、紅魔探偵事務所です。はい、はいはい。【切断された妖しき桜】?あー「滅亡した楽園」ですか。なるほど……あちゃー。それは大変ですね。すぐ現場に向かいます。」 小悪魔が電話を切ると、同じく名探偵のパチュリー・ノーレッジが話しかけてきた。 「なんの依頼?」 「7丁目の上白沢慧音さんから。親友で冒険家の藤原妹紅さんから長期間預かってた【切断された妖しき桜】」を狙うという予告状が怪盗Yと怪盗Sから届いたそうです。でも、それは五つ子がイタズラで何処かにやってしまったようで……。」 「持ち主すら場所がわからないものを盗む?正気?」 パチュリーは呆れた顔をして紅茶を置いた。 それでも……やっぱり瞳は輝いている。 2人はいつもの服を着て7丁目に向かった。 「探偵さん、きてくれてありがとうございます!」 上白沢慧音の第一印象は「優しい人」だった。 彼女の娘である五つ子も愛嬌があって可愛らしい。 理想的な家族….そう言えるだろう。 「私の高校時代からの付き合いである妹紅は冒険家です。今は南の砂漠の方に旅していて、乾燥に弱いからと言って【切断された妖しき桜】を預けてくれました。まーでも私の管理体制が悪くてですね、可愛い可愛い子供達が庭にある五つの紫陽花のうちどれかの下に植えてしまったみたいなんです。」 「妹紅さんには言ってあるんですか?」 「いいえ……妹紅は圏外の地域にいるのであと2年ほど連絡ができない、との事です。」 慧音はそんな妹紅のことを心配するのと同時に、期待もしているのだと言う。 だから何としてでも桜を見つけて欲しいらしい。 「ということで、小悪魔、五つ子ちゃんに集まってもらったけど……すごーく可愛いわね!」 「えぇパチュリー様。とても可愛い。」 「そーなのかー。」 長女のチルノちゃん。次女の大妖精ちゃん。三女のルーミアちゃん。四女のリグルちゃん。末っ子のミスティアちゃん。 どの子もそれぞれの個性が尖っていて、可愛さ抜群だ。 とはいえ、五つ子に聞かないとどの紫陽花の下に植えたのかわからない。 先ほど、庭を見せてもらったところ、紫陽花は五つ。真ん中に植えてあるもの以外は青色で真ん中だけピンクだ。
第一回 博麗例大祭 in scrach応募作品です! まあこれは最近書いた小説の隠し玉なんですけど…。 ※この作品は東方プロジェクト二次創作です。 ※「幻想郷は存在しない世界線」「東方キャラが全員人間」ということを前提でお読みください。そうしないと頭がパンクします。(イラストに生成AIを使ったものがあります) 「使い方」の続き 慧音のセンスが光って凄く綺麗な庭だった。 最初に答えたのはチルノちゃん。 「チルノちゃんが「この中で1番綺麗な青だからこの下に埋めない?」って言ってました!ルーミアちゃんは?」 「私何も覚えてないのだー……パス!」 「リグルはねー……大ちゃんの言うとおり青に植えたよ!白いやつは家になかったから小学校からちょっと盗んできたの!みすちーは覚えてることある?」 「うーん…。少なくとも青に植えたのは事実だよ。後は鳥がいたぐらいしか覚えてない……。」 みんな記憶が曖昧だ。そりゃあこんだけ小さいなら当然だが。 でも、ピンクではないと思うとあとは1番右か、右から2番目が、1番左か、左から2番目だけどそこから絞り込めない。 「パチュリー様。場所の見当はついていますか?」 「いや、全く。真ん中のピンクではない事しか。」小悪魔はそれを聞くと、目を細めてこう言った。 「それ、大妖精ちゃんの証言だけで見てませんか?この事件の真相は、チルノちゃんと大妖精ちゃんの証言を擦り合わせる必要がありますよ。」 小悪魔は慧音にスコップを持ってきてもらって、ある紫陽花の下を掘り出した。 「小悪魔。なんでここにあるとわかったの?」 「チルノちゃんが言っていた……うんどーかいとかで使うあの白いやつでばってんの印を付けたと言うのは……恐らく石灰のことです。石灰なんて家にないかも知れませんが、リグルちゃんが、白いやつは家になかったから小学校からちょっと盗んできたと言っているのでやはり石灰です。石灰はアルカリ性……雨で印は消えてしまいましたが、土壌はアルカリ性になったんです!紫陽花はアルカリ性の土壌だとピンク色になります。つまり……。」 「ピンクって訳ね!」 小悪魔は小さく頷き、掘り進めると……。 「あった!」 両方の手のひらに乗るくらい、小さな桜の模型。花びら部分はピンクの真珠で出来ており、とても輝いている。そこに小さな銀の刀が刺さっている。何処か妖しく、美しく、切ない。 「あ、探偵さーん!ありましたかー?」 慧音が向こうから走ってくる。 「ありましたよ!」 「わーありがとうございます。妹紅ちゃんもきっと喜びますよ!あ……でもうちの家だとまたイタズラされるかも……。」 「あ、じゃあ私が預かりましょうか?」 「いいんですか?!なら是非お願いします!」 そんなある夜、紅魔探偵事務所に一件の電話がかかってきた。 「はい、紅魔探偵事務所です!あー慧音さん、どうしました?え、妹紅さんから?手紙?なるほど……喫茶店で。OKです。」パチュリーはそんな意味深な会話に興味を持ったのか、近づいてきた。 「何?」 「慧音さんのところに妹紅さんから手紙が届いたそうです。どうやら仲間が怪我をしたらしく、早めに帰るとの事で……で、桜を返して欲しいそうです。」 「預かってから一週間も経ってないわね。」 「まあそんなもんでしょう。」 悪魔とパチュリーは【切断された妖しき桜】を大事にバッグに入れて喫茶店に向かった。 「初めまして。藤原妹紅だ。」 初めて会った妹紅はとてもパワフル……と、言えば良いのだろうか。妹紅に桜を渡すとにっこりと笑って受け取った。慧音はお詫び、と言って3万円を差し出してきたが、流石にこれは受け取れない。 「とりあえず、慧音が迷惑かけたな。ありがとよ。」 そう言って妹紅と慧音はコーヒー代を支払って喫茶店の外に出た。 「ちょっと待ちなさい……。」 パチュリーは静かにそう言って慧音の腕を掴んだ。 「どうしました?」 「まだ、事件は終わってないわ。」あたりの空気が凍りつく。 「パチュリー様、何か私は見落としてるんですか?」 「いや……そもそも怪盗からの予告状があったから私たちは桜を探したのよね?なのに……怪盗は現れてない。……変装してるわね。」 パチュリーは握る手の力をさらに強めた。小悪魔はハッとしたかのように言った。 「そういえば、最初に会った慧音さん、妹紅さんのことを妹紅って言っていたのに、さっきは妹紅ちゃんって……。」 「正体を現しなさい!怪盗!」 パチュリーがそういうと、慧音と妹紅は肩を震わせて、ニヤリ、と笑った。 「噂には聞いていたけれど……やっぱり名探偵ね。」 慧音と妹紅がぱあんと手を叩くと、桜の花びらが舞った。 「見えな……!」 ひらひらと舞い降りる桜に隠れて、慧音が見えない。 「私達は貴方達が以前お会いした怪盗Rと怪盗Mと同じ……。」 全ての桜が舞い落ちて、2人の怪盗がすがたを姿を見せる。少し悲しそうな目をした彼女らはこう言った。 「怪盗Yと怪盗Sです。以後お見知り置きを。」 銀髪の怪盗Y。緑髪の怪盗S。 2人の容姿は何処か怪盗R達を連想させる格好だった。 「まぁ桜は手に入れたんです。Yさん〜桜餅でも買って帰りましょう?」 「早……怪盗S、別にいいけど割り勘ね。」 「えー…そこは奢ってよ。」 「待ちなさい!」 パチュリーが追いかけるが、怪盗2人は顔を見合わせて、いたずらっ子のようにこう言うのだった。 「返さないっ!」 第二章 完 第三章 やさぐれ巫女と金の賽銭箱 名探偵 パチュリーside 東京都宇宙町にある幻想神社は今日も賑わっていた。 丁度クラヤミ祭りが行われている時期なので屋台などがいっぱい出ている。 名探偵、パチュリー・ノーレッジと小悪魔は珍しく浴衣で夏祭りを楽しんでいた。 「パチュリー様、ブドウ味のわたあめ食べます?」 「いや、いらない…。」 くだらない会話をしながら花火を見ていると、隣に浴衣姿の2人……パチュリーと小悪魔の高校の同級生であり、刑事のレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットがやってきた。 「パチェ!久しぶりね。【月光の涙】の件で活躍は見たけど話せなかったわね。」 「えぇ。レミィ、フラン、残業お疲れ様。」 ベンチに4人で座ってどんどん打ち上がっていく花火をぼんやりと眺めていた。 そんな中、フランが口を開く。 「パチュリーと小悪魔は何でここに?」 「プライベートです。まあでも【金の賽銭箱】の件もかねての下見。」 西行寺博物館の展示物は【月光の涙】だけではなく、他の物も偽物であったことが新聞記者の射命丸文によって明らかになった。 展示物のいくつかは本物を幽々子が持っていたが、中には別の誰かが持っていた物もあるらしい。 例えば……【金の賽銭箱】。 それはまさに、この宇宙町の幻想神社の賽銭箱だ。 【月光の涙】は本当に大騒ぎになったから、【月光の涙】と同じ作品群の【金の賽銭箱】は注目されていた。 怪盗が狙うとしたら間違いなく【金の賽銭箱】だろう。 クラヤミ祭りは県外からも人が来るので、逆に死角が多い。 つまり今が絶好のチャンスだ。 「なるほどね……パチェやこあは勘が良いし。やっぱり何かは起こるわよね。」 「お姉様ー!これ見て!」 フランが会話を無理やり中断させて、 金色に染められたブドウ味のわたあめを出してきた。 「私のわたあめが……。」 半分涙目になっている小悪魔を横目に、レミリアは静かに答えた。 「フラン。食べ物で遊ばないの。」 「えーでも綺麗じゃん。」 レミリアはフランからわたあめをとあげて、ため息をついた。 「あーあ、これじゃあもう食べれないじゃない。」 「私の300円返してくださいいいいい!」 レミリアがゴミ箱に食べかけのわたあめを捨てて、小悪魔が悲鳴を上げる。 その悲鳴はお祭りの賑わいにかき消されたのだった. 〜怪盗R side〜 「霊……怪盗R。大丈夫ですか?」 「……えぇ。ちょっと吐き気がするだけ。」 「やっぱり帰ります?無理して盗む必要ないですし。」 「いいえ。どうせ今後盗む物だし……こんなチャンス滅多にない。」 怪盗Rは白っぽくなっている手をギュッと握って震えた。 怪盗Sはそれを見て悲しそうな顔をする。 「一体どんな伝説なんですか?【金の賽銭箱】って。霊……怪盗Rが関係していることは明らかですけど。」 怪盗Rは怯えるような顔をしてしゃがんだ。 「そ、そうよね。早……怪盗Sは知らないものね。昔あった楽園では……人間の【祓い屋】が急増していたのは、知ってるわよね?」 「……もちろんです。」 「そいつらが、妖怪をどんどん倒していって妖怪と人間のパワーバランスは崩れ出して……。」 怪盗Rの顔色はますます悪くなる。 「……それで、魔法使いと博麗の巫女は、警告しにいったんだけど逆にやられて……。」 そこまでいった時、怪盗Rがふらついた。 慌てて怪盗Sはそれを支える。 「もう良いです。思い出させてすみません。後は自分で調べます。」 怪盗Sはそのまま近くの図書館に向かった。 〜名探偵 パチュリーside〜 「紅魔探偵事務所の探偵さん?」 ベンチを座っていた探偵と刑事の元に、ある1人の巫女がやってきた。 「初めまして。十六夜咲夜よ。幻想神社の巫女。」 ぶっきらぼうに咲夜はそう言ってパチュリーを見つめる。 「何?」 「あなたがパチュリー・ノーレッジね。私が言いたいことはただ一つ。【金の賽銭箱】に触れるな。穢れがつく。」 パチュリーは絶句した。 そんなこと一回も言われたことない。 「どういうことですか?!」 小悪魔が問い詰めるも、咲夜はふいっと顔を背けてしまう。 「あなたには言ってない。【金の賽銭箱】自体に価値はない。その歴史、伝説に価値があるの。穢れてはいけないものよ。」 【金の賽銭箱】の伝説は「滅亡した楽園」の中でも特に切ない話だ。 博麗神社という神社の巫女と親友の魔法使いが妖怪と人間のパワーバランスを保つために人里へ警告しにいったら返り討ちにあい、「反逆者」として磔刑にされてしまう話。 言葉と文章だけで語られてきた話だから絵はないが、あったら恐らくR -18だろう。 「……。」 「プライベートでくる分には良いけど貴方みたいな犯罪者にたくさん会った心……穢れに賽銭箱は耐えられない。想像しただけでも……恐ろしい。」 咲夜はそれだけ言って去っていった。 せっかくだしお賽銭しようということで並び始めて30分。まだ列は進まない。 半分の目的は金の賽銭箱を見ることだが、関係ない。 触れるのがダメだけど見るくらいなら良いだろう。 と、思っていた矢先。 遠くの方に見える賽銭箱をじぃと見つめていると、側面の辺りが色の発色が悪いことに気づいた。 まるで、そこだけ濁ってしまったかのように。 他のところは金で美しいのに。 「パチュリー様……なんだか、頭痛が痛いです……。」 「頭痛が痛いじゃなくて頭痛がするか頭が痛いね。大丈夫?」 「えぇ、はい。なにか、忘れてるような……。」 小悪魔は賽銭箱を見て何かを感じ取っていた。 パチュリーからしてみれば、ただの賽銭箱なのだが。 「ねぇ、パチェ。折角時間が余ったのだから【金の賽銭箱】の話をしたいのだけどいいかしら?」 レミリアの提案にパチュリーはこくんと頷く。 「じゃあ話すわよ……あー…ある場所に楽園、と呼ばれるものがありました。そこでは妖怪や妖精、魔法使いなど現実から否定されたものが集まる場所でした。文明は進んでいませんでしたが、平和な暮らし。 楽園は「幻想郷」と呼ばれ、人々に愛されて来たのです。 でも……楽園は長く続きませんでした。」 「お姉様……どういうこと?」 レミリアはにっこり、でも悲しそうに笑って続けた。 「人里で【祓い屋】と言われる妖怪退治の専門家が爆発的に増えてしまいました。 結果、妖怪と人間のパワーバランスは崩れたのです。 それに……黙っていられなかった博麗の巫女と親友の魔法使いが人里に警告しに行きます。」 「レミィ……まさかだけど。」 収まりきらないので同時公開の別プロジェクトに続く!