ほんへ(2000字以上あります。) ↓ 人類はかつて繁栄を極めていた。しかし資源の乱用と環境破壊を繰り返した結果、世界規模の水不足が発生する。海は石油流出事故や産業廃棄物によって深刻に汚染され、浄化しても飲料水として利用できない状態となった。河川や地下水も次々と失われ、人類の居住範囲は急激に縮小していく。 そんな崩壊した世界で最大の居住可能区域が、最果ての島「蝦の楽園」である。 蝦の楽園は石油や鉱物資源に恵まれた豊かな土地だった。しかし安全な水だけは決定的に不足していた。水は石油や金貨よりも価値を持ち、人々は国家水管理省による厳しい配給制度の下で暮らしている。 島の海は黒く汚れ、住民は水の代わりに「生活用洗浄油(LSO)」と呼ばれる特殊な洗浄石油で身体を洗う。国家水管理省は人体への影響を抑えた安全な製品と宣伝しているが、実際には神経障害や臓器障害などを引き起こす危険な物質だった。その事実は徹底的に隠蔽されている。 人口の七十五パーセントは労働不能状態にある。しかしそれは病気ではない。幼い頃からの過酷な肉体労働によって腰や関節を壊された結果だった。若者でも杖をつき、働けなくなった人々は街のあちこちに存在する。国家水管理省は彼らを「労働栄誉者」と呼ぶが、人々は「使い潰された人」と呼んでいた。 食事事情も劣悪だった。石油に汚染された土壌で育った野菜は苦く油臭い。また、国家配給の完全栄養食「灰食」は栄養こそあるものの味がなく、住民からは「段ボールの方が味がする」と皮肉られていた。 政治も腐敗している。出版物や集会、結社は全て独立機関を名乗る審査局の検閲を受ける。その実態は国家水管理省直属の情報統制組織だった。政府批判や人体実験、洗浄油の危険性に関する情報は全て消される。 そんな蝦の楽園で暮らしているのが、海野ユラ、海野櫂、海野海散の三兄弟である。 ユラは行動力があり面倒見の良い長女。櫂は冷静で現実主義な長男。そして末っ子の海散は優しく自己犠牲的な少年だった。 三人が幼い頃、世界はまだ完全には壊れていなかった。八歳までは学校も機能し、未来への希望もあった。しかし九歳頃から社会の歪みが目立ち始める。配給量は減り、貧困は拡大し、働けなくなる人々が増えていった。そして十五歳の時、蝦の楽園は決定的な崩壊を迎える。人口の大半が労働不能となり、三兄弟も生きるために働き続けなければならなくなった。 そんな中でも三人には宝物があった。十五歳の頃、仕事帰りの深夜に路地裏で見つけた四つ葉のクローバーの押し花栞である。未来への希望を失いかけた三人にとって、それは小さな幸運の象徴だった。 また、海散が助けた三つ足のカラスもいた。雑な治療の末に命だけは助かったそのカラスは、水を大量に持つ富裕層を警戒しながらも三兄弟だけには懐いていた。 十八歳の誕生日、海散が突然姿を消す。 ユラは必死に島中を探し回り、やがて地下研究施設で海散を発見する。しかしその時には既に人体実験の被験者にされていた。研究施設では、水不足に適応した新人類を作る実験が行われていた。海散の前には双子の少年少女が被験者として利用されていたが、二人とも死亡している。海散はその後継実験体だった。 実験の影響で海散は重症となり、長く生きられない身体になる。しかし同時に特殊な能力を得る。それは夢を通して過去の記憶や失われた歴史、死者の想いを見る力だった。海散は夢の中で世界崩壊前の海や空、そして国家水管理省が隠してきた真実を目撃していく。 海散を延命させるため、ユラと櫂も人体実験に参加する。そして発症率〇・〇〇〇〇〇三四パーセントの奇病「白黒反転症候群」に罹患する。通常なら死亡する病だったが、二人は生き残った。 ユラは自分の痛みや苦しみを他者へ伝える「痛覚転写」。 櫂は自分の記憶や経験を共有する「記憶転写」。 という能力に覚醒する。 海散は真実を見る者。 櫂は記憶を伝える者。 ユラは痛みを伝える者。 三人はやがて国家水管理省が隠し続けてきた歴史と人体実験の真相へ辿り着く。 しかし三人の身体は既に限界だった。 最後に真実を公表しようとした時、三兄弟は政府を糾弾する直前、あるいはその最中に倒れてしまう。 幸いにも、3人とも命に別状はなかった。 しかし、ユラは歩行は可能だが、長時間の労働ができない上に能力を使うと、他人の痛みと自分の痛みの区別が曖昧になる。 櫂は記憶転写の負荷で神経系が損傷して集中力が長く続かない。複雑な計算や長時間労働は困難になった。 海散は最も重症だった。夢を見るたびに体力を失う。 それでも時々、失われた世界の夢を見る。 以前のように働けない。 採掘もできない。運搬もできない。 長時間の立ち仕事も難しい。 つまり、 この島ではでは「労働不能者」の側へ回る。 かつて三兄弟が支えていた人々と同じ立場になる。 15歳の時、世界が壊れて 三兄弟はこう思っていた 「働けなくなったら終わりだ。」 しかし実際に働けなくなった後、 初めて気付く。 働けなくても、 人は生きていていい。 ということに。 3人は幸運のお守りではないあの日摘んだクローバーの栞を見ながら思った。
気まぐれ小説化します。(また。) きちるのキャラに感情移入。 蝦の楽園ってなっているやつ仮案コピペしたから名前変えるの忘れた。