その日はいつもどうりの朝で、なにも変わらず退屈だった。ただ少し違うことと言えばいつも俺より早く起きているはずの幼馴染の彼が今日は珍しく寝坊をしたくらいだ。 「今日の用事もいつもどうりだろう?」 彼がそう聞く。 そう。いつも通りただ森にいって、薬草を採りながら見回りをするだけ。いつも通りの簡単で、退屈な仕事。 「取りすぎないようにしろよー」 彼がそう注意する。毎回のように言われる言葉だ。さすがにもう覚えている。 「ここら辺はそろそろ採り尽くしたな。どうする?」 「あー、じゃあ今日はちょっと奥に行くか。」 「……奥?」 「大丈夫だって。そんな危ない場所じゃないし。」 「まぁ、そういうなら。」 彼がいうなら多分そうだろう。彼の方が森には詳しい。俺が口を挟む理由もなかった。 彼はどんどん進んでいく。俺も何も言わず、その背中を追った。森の奥は昼間だというのに薄暗い。木々が空を覆い隠し、風が吹くたび枝葉が揺れる。 「……静かだな。」 思わず呟く。 「そうか?」 「いつもなら鳥がもっと鳴いてる。」 「気のせいだろ。」 そう言って彼は笑った。 「それじゃあ俺はあっちの方とってくるからそっちのとっといてくれ」 そう言われて別々に分かれる。 俺はしゃがみ込み、足元に生えた薬草を一つずつ摘み取っていく。 どれくらい経っただろうか。 「……おーい。」 籠が半分ほど埋まった頃、何となく声を掛けた。 返事はない。 「……?」 あいつなら、聞こえていれば何かしら返してくるはずだ。嫌な予感が胸をよぎる。 籠をその場へ置き、あいつが向かった方へ足を向けた。 「おーい。」 返事はない。草を踏み分けながら進む。地面には摘み取られたばかりの薬草が散らばっていた。 さらに進んでいくと倒れた籠。中身は地面に散乱していた。風ではこうはならない。倒れた籠の横には、踏み荒らされた草が広がっていた。その先へ視線を向ける。木の幹には深く抉れたような傷。 「なんだ…これ」 背筋を嫌な汗が伝う。こんな跡を残す魔物は、この辺りにはいない。 「……っ!」 気づけば、俺は駆け出していた。木々をかき分ける。呼吸が少しずつ荒くなる。 「おいっっ」 叫び声は木々に吸い込まれ、返事は返ってこない。 ただ、その代わりに ガァンッ!! 森の静寂を叩き割るような轟音が響いた。 「……!」 音のした方へ、反射的に足が向く。 枝が頬を掠めても構わず駆け抜ける。 木々の隙間から、何か巨大な影が動くのが見えた。 「なんだ……」 嫌な予感が、確信へと変わる。俺は魔力を流し込んだ。足元に一振りの剣が生まれる。 その剣を蹴り、さらに前へ。 次の剣。また次の剣。 空中を駆けるように距離を詰める。 頼む。 間に合ってくれ。 木々が途切れ視界が開く そこにいたのはあいつだった。 「っ……!」 見たことがない。 少なくとも、この森にいるような魔物じゃない。 黒い巨体。 一本一本の爪が、木の幹を容易く抉るほど長い。 その腕が振るわれるたび、周囲の木々が軋み、折れ、地面が抉れる。 あいつは紙一重でその攻撃を避け、距離を取る。 まだ、生きている助けられるそう思った。 だが、その瞬間。 魔物がゆっくりとこちらを向いた。赤く濁った瞳が、真っ直ぐ俺を捉える。背筋が凍った。一目で分かる。勝てない。理性が、そう告げていた。 今すぐ引き返せ。 そうすれば、生き残れる。 なのに 「レイン!」 聞き慣れた声が森に響く 俺は顔を上げた あいつがこちらを見ている。 魔物との距離は、ほんの数歩。 逃げろ。 そう叫びたいのに、声が出ない。 魔物が地面を蹴る。 あいつは剣を振るう。 金属がぶつかる音が響き、火花が散る。 受け止めきれない。 体勢が崩れる。 「っ……!」 今なら間に合う。 剣を足場に飛べば届く。 助けられるかもしれない。 でも届かなかったら。 俺も死ぬ。行け。 いや、無理だ。 まだ間に合う。 勝てない。 頭の中で答えが何度も入れ替わる。 足が、動かない。 魔物が腕を振り上げる。 あいつは何かを叫んだ。 風に掻き消されて、聞こえない。 ただ俺へ向かって、手を伸ばした。 その手だけが、やけにはっきり見えた。
ザンネン賞 文芸部なのに小説かけない… チャッピーにアドバイスもらったり変な言い回しとかないかを確認してもらいました、。数行はチャッピーなんなら半分以降は変わってもらいましたまじで感謝。記憶なくなること以外は。