──これは、地上を失った人類の物語。 かつて、人類は地上で暮らしていた。 街があり、学校があり、仕事があり、家があった。 当たり前のように朝を迎え、当たり前のように夜を迎える。 そんな日常を、ある日突然現れた謎の生物──アビサルが奪った。 人類が持つ兵器では、ほとんど歯が立たなかった。 戦いが始まってから、数ヶ月も経たないうちに、人類は敗北した。 生き残った人々は地上を捨て、地下へ逃げた。 巨大な地下施設──Under-Home。 人々はそれを、ただ「ホーム」と呼んだ。 そして、人類が地下へ避難したその時から、新しい暦が始まった。 潜界暦。 ──それから、十五年。 ───────────────────────────────────── 潜界十五年 4月8日(月) A.M.6:03 「……ん……」 ピピピピピピピピ――。 耳元でけたたましい電子音が鳴り響く。 布団の中で少女が身じろぎした。 「…………」 少女は腕を伸ばし、音源を叩いて止めた。 「…………」 再び鳴る。 「──うるさい...」 少女──終宮 息吹(ついみや いぶき)は、目を閉じたまま手を伸ばした。 もう一度、目覚ましを止める。 今度こそ静かになった。 「...あと五分……」 布団を頭まで被る。 しかし、 「────」 数秒後、 「ぱちっ」 白い瞳が開いた。 「駄目だ」 息吹は勢いよく起き上がった。 今日は、寝坊するわけにはいかない。 鏡の前に立ち、肩ほどまで伸びた白い髪を軽く整える。 まだ少し眠そうな顔。 けれど、その目にはいつもとは違うものがあった。 緊張。 期待。 そして──決意。 「……今日から討伐部なんだ...!」 終宮息吹、十八歳。 今日から、地上奪還機関《Under Taker》──通称UT、その討伐部に所属する。 「──よし!」 制服を整え、部屋を出た。 ───────────────────────────────────── ホーム第一層。 朝の時間帯ということもあり、通路にはこれから仕事へ向かう人々の姿がちらほら見える。 天井に設置された照明が、人工的な朝を作っている。 地上とは違う。 空も太陽もない。 それでも、人々は十五年かけてこの場所を「暮らせる場所」に変えてきた。 息吹は少しだけ周囲を見回しながら歩く。 今日から自分も、その一員になる。 討伐部。 アビサルと戦う人たち。 その言葉を考えるだけで、胸の奥が少しだけ熱くなった。 「───こんにちは」 突然、後ろから声がした。 「え?」 振り返るとそこには、一人の人物が立っていた。 黒い服。 色白の肌。 少し女性っぽいけど中性的で整った顔立ち。 年齢も性別も、一見しただけでは分からない。 「あなた、討伐部へ?」 「そうですけど...」 「やっぱり」 その人物は小さく頷いた。 「自分は囁香 学(ささか まなぶ) ホーム全体の寮を管理する仕事をしているの」 「今日は討伐部の入部式に?」 「はい! 終宮 息吹です 今日から討伐部に入ります」 「そう よろしくね」 「よろしくお願いします」 初対面なのに、妙に自然な話し方だった。 息吹は少しだけ首を傾げる。 「学さんも、入部式に?」 「いや。少し用事があって、その途中」 「そうなんですね」 「...時間に余裕ある?」 「……たぶん」 「なら、少し話さない?」 息吹は一瞬だけ考えてから、 「いいですよ!」 と答えた。 ───────────────────────────────────── UT。 それは、かなり大きい組織である。 もちろん、討伐部だけでない。 地上の調査や探索が主な仕事の探索部。 アビサル出現後の影響等の研究を行う研究部。 ホームの設備や管理を担当する運営部等がある。 「探索部って、やっぱりアビサルと遭遇することもあるんでしょうか?」 「もちろんあるよ」 「なるほど……!」 息吹は少しだけ目を輝かせた。 学はそれを見て、ほんの少しだけ目を細める。 しばらく二人で世間話をしていると、 「ところで、討伐部の入部式って第一層の──」 学が言葉を続けようとした、その時。 「……あ」 息吹が足を止めた。 遠くから、人の流れが増えてきている。 時計を見る。 「時間、結構まずくないですか?」 「……そうだね」 学も時計を見る。 「あと十分ほどかな?」 「えっ!?」 「急いだ方がいいよ?」 「どうせならもっと早く言ってくださいよ!」 「今気づいたから」 「それ絶対ウソですよね!?」 息吹は走り出した。 「ありがとうございました! また会えたら嬉しいです!」 「ではまた!」 「...またね」 ───────────────────────────────────── 数十分後。 討伐部、入部式。 会場には多くの新人が集まっていた。 息吹は周囲を見渡しながら、少しだけ緊張していた。 (今日からここが、自分の居場所になるのか...) (なんだか不思議な気分...) やがて式が始まる。 壇上には、討伐部の関係者たち。 その中でも、一際目を引く人物がいた。 険しい顔つき。 凛とした姿勢。 近寄りがたいほどの緊張感を纏った、美しい女性。 息吹は思わず目を奪われた。 ──九鬼蒼(くき そう)。 討伐部第一部隊の隊長。 その姿を見た瞬間、息吹の胸の奥に、あの日の記憶が一瞬だけ蘇った。 暗闇。 逃げ惑う人々。 崩れていく日常。 そして──失った家族。 「…......…」 息吹は拳を握った。 (私は、ここに来た) (強くなるため) (アビサルを倒すため) (そして──) (家族の敵を取るため) (それだけは、絶対に忘れない) 「...絶対に...」 小さく呟く。 その時、 ふと、別の顔が脳裏に浮かんだ。 幼い頃によく一緒に遊んだ。 くだらないことで笑った。 離れてしまった、幼馴染。 「……」 (──元気かな) (でも、まだ振り返らないよ) (前へ進む) (そのために、今日ここへ来たんだから) ───────────────────────────────────── 入部式が終わった。 新人たちがそれぞれの場所へ向かっていく。 息吹も指定された場所へ向かおうとした、その時。 「終宮さん」 「あ」 聞き覚えのある声。 振り返ると、学がいた。 「お疲れ様 これから任務?」 「はい! いきなりですけど...」 「そう」 学は少しだけ笑った。 「頑張って」 「はい!」 息吹は元気よく返事をした。 そして、指定された集合場所へ向かう。 そこには数人の先輩隊員がいた ここへ、女性が近づいてくる。 暗い紫色の服。 どこか気だるそうな表情。 「新人?」 「はい、終宮息吹です!」 「鉄川 業(てつかわ かるま) よろしく」 「よろしくお願いします!」 「...声、大きい...」 「あっ すみません!」 「別に謝らなくていいけど」 業は面倒そうに息を吐いた。 けれど、ほんの少しだけ笑っている。 「まあ、よろしく」 「はい!」 ───────────────────────────────────── 今回の任務は、 探索部による地上調査の護衛 まだ戦闘経験の浅い新人を、いきなり危険な討伐任務へ出すわけにはいかない。 まずは先輩隊員と共に、探索部の地上調査を護衛する。 それが今日の仕事だった。 「地上……」 準備を終えた息吹は、地上へ続く施設の前に立っていた。 大きな扉。 その向こうにあるのは、十五年前に人類が捨てた世界。 「……......」 (少しだけ怖い) でも、それ以上に―― 胸が高鳴っていた。 隊長──蒼が振り返る。 「準備はいいか?」 「はい!」 業も武器を確認する。 「忘れ物ない?」 「大丈夫です!」 重い扉が、ゆっくりと開いていく。 冷たい風が吹き込んだ。 地下では感じたことのない空気。 息吹は目を細める。 その先に── 地上がある。 「……行くぞ!」 蒼の声。 息吹は剣を握った。 そして、一歩。 地下で生まれた少女は── 初めて、自分の足で地上へ踏み出した。 「行ってきます」 誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。 ただ、 その言葉と共に、息吹は歩き出した。
前話 ないです() 次話 第二話「地上の洗礼」 https://scratch.mit.edu/projects/1375886527/ 大部分はAIに描いてもらって、一部修正して作りました え?深夜テンションの小説? 知らんな✩(飽きt(((((((((殴) え?章の名前の由来? ... 君のような活きのいい牡蠣はフライだよ() ちな別のサイトで同じのをだしてます()