「ひろしくんひろしくんひろしくん」 「どうしたたかしくん」 「ひろしくん明日のお遊戯会さ、どんな感じで行く?」 「え?」 「いや、明日のお遊戯会演技プランとかある?」 「え、演技プラン?演技プラン、いやないけど」 「え、自分主役やんな?」 「うん。僕主役やけど」 「主役やったらさ、君がさ、桃太郎、どういう桃太郎を演じるかによってさ、そのさ、物語全体の雰囲気にも関わってくるわけやしさ、そこの責任はちゃんと持ってもらわなあかんと思うねんけど、そこ、どない考えてるの?」 「い、いや何も考えてないけど。それ、あの、僕は一生懸命やるだけ」 「一生懸命やると言ってもさ、君がさ、どういう桃太郎を演じるかによってさ僕がさ幼少期、君が生まれる前を演じるわけやからさ、君の桃太郎に合わせて僕がどういう風に川上から流れてどういう風にどんぶらこしてどういう風にパカって...」 「モモ!?自分モモなん?」 「うん。僕モモやで」 「じゃあモモやったらそんなお芝居いらんと思うねんけど」 「いや、だってさモモのどんぶらこにもさ、いろんなどんぶらこがあると思うねん。うん。だからそのどんぶらこのディティールにもこだわっていきたいからさ、もっとブラッシュアップしていかなあかんと思ってるからさ頭で夜通しどんぶらこしたいからさちょっと見といてくれへん?」 「ごめん。帰るわ〜」 「(ドアノック)たかしくん?(ドアノック)たかしくん?何をしてんの?早く出てきなさい。あの桃太郎始まってるからね?お遊戯会始まってるからね。あなたが流れないと物語進まないのよ。(ドアノック)たかしくん?(ドアノック)たかしくん?」 「(泣きながら)先生。先生。僕は自分のお芝居がわからなくなりました」 「え、え?どういうこと?お芝居がわからない。あ、そうか、あんた初めてやから緊張してんねやな。分かった。分かった。ほな、先生が一緒に流れて行くさかいな。とりあえず出といで。」 「(泣きながら)先生。僕はモモという大役をいただいてから僕はずっと流れるということは何なんだろうと問い続けてきました。でもその答えが出せないので最後の最後、流れるということを習得すべく(少し間をおいて)大便器の中を流れてみます」 「出てきなさい。あかん、あかん、出てきなさい。もう無理やり開けるで。バーン!何してるんだこんなところで!」 「ジャーどんぶらこ。ジャーどんぶらこ。頭がおかしくなりそうだ。」 「もうなってるわ。おそらくなってると思う。あかんあかん。ちょっとあんたこっち出といで。」 「先生、先生」 「何やねんな」 「モモって(少し間をおいて)何なんすかね」 「果物です。モモはただの果物です。はい。流れましょ、流れましょ」 「先生、先生」 「何やねんな」 「流れるって(少し間をおいて)何なんすかね」 「動詞や動詞。液体が移動する様や。はい、流れましょ流れましょ。」 「先生、先生。」 「何やねんな」 「どんぶらこってn」 「擬音です擬音。はい流れましょ流れましょ。もうはよ流れましょ。もう何にも考えんとね普通に流れたらええの」 「何も、考えない。そうか、無心だ。僕はただただ無心で流れればいいんだ。モモは自分がモモを演じようというその気持ちがないということはただただ流れることだけに執念(しゅうねん)する。そう。流れる、流れる、邪念を振り払って邪念を振り払って、あぁだめだ邪念を振り払えない。先生。出家します!」 「待ちなさい待ちなさい。出ていったらあかん。ちょっとこっちへ戻ってきなさい。ほらもう見てみな。もう女の子。おばあさん役の女の子がものすごい今繋いでくれてるで」 「ゴシゴシ×6。おじいさんは山へ芝刈りへ行きました。私は川で洗濯を8周はしていますよ。ゴシゴシ×6。もうぼちぼち川上から大きなモモが流れてきそうな気がするなぁ。流れてきたら私はそれを持って帰って半分に割ってそれに、桃太郎と名付けて犬猿雉を連れて鬼ヶ島へ鬼退治へ行って金銀財宝を持って帰ってきそうな気がするなぁ」 「みんな言うても〜とる。あかんあかん。もうちょっとな洗濯だけしといて。」 「ゴシゴシ×6。また別の地域では海辺で亀がいじめられていてそれを助けた浦島」 「って違う話してるやん。あかん。もうお洗濯だけしといて。」 「ゴシゴシ×6なんで流れてこないんだ?なんで流れてこないんだ? 私のお芝居がダメだからだ。本気でおばあさんをしないとダメなんだ。私はおばあさん。(渋く)はあ。はあ。毎日毎日冷たい水で洗濯をするのは骨の折れる作業だな。でも私は爺さんを支えると決めたんだ。爺さんとの付き合いも長いなぁもう50年になるかなぁ。私が初めて爺さんと会ったのは夜の店で水商売をしているときだった。」 「どこで覚えたの?水商売って。ちょっとやめなさいさっきみたいに普通におばあさんやっといて」 「(渋く)ゴシゴシ×6。私は小さい頃に両親と生き別れ、施設に預けられた。誰にも心を開くこともなく、暗いトンネルの中を這いずり回るような人生だった。そんなとき心の隙間を埋めるかのように私は夜の店に入り込んで毎日毎日厚し浴びるように酒を飲んだ。稼いだお金でホストに貢いだ。」 「やめなさい。やめなさい。保護者の方ポカーンとしてるからやめなさい。」 「そんなとき唯一私に手を差し伸べてくれた。優しく包みこんでくれたのが爺さんだった。爺さんは私の太陽だ。爺さん愛してますよ。今会いに行きます」 「話変わるから。そこに待っといてくれないとあかんの。ゴシゴシしといて。もうあかんあかん。もうあんたね流れましょ流れましょ。」 「僕は流れません」 「じゃあもう先生が流れます。」 「先生は流れる資格はないと思います。ろくにお稽古もしていないのにそんな人は舞台に立ってはいけません」 「あんたもな。あのもう...あぁ犬猿雉も出てた。もう」 「わんわんわんわん」 「ウッキーウッキーウッキーウッキー」 「チュンチュンチュンチュン」 「雉は合ってるんかな?あれチュンチュン言うてるけど。」 「なんで流れてこないんだ?なんで流れてこないんだ?そうか僕たちの動物の演技が下手だからだ。僕は本気で犬を演じるんだ。僕は、犬なんだ。(渋く)すんませんすんません。私をこの会社で働くことなかれ。私は掃除でも雑用でも馬車馬のように働きますんで生涯この会社のために尽くさせていただきたい」 「それって犬ってあんたそれ社会の犬やないのどこで覚えてんの。もうやめなさい。ああもう鬼も出てきた」 「たかしくんたかしくん流れてください。僕はみんなみたいに本物の鬼を演じることはできません。鬼なんかに僕なれないので君が流れてくれないんだったら僕はたかしくんのパンツとズボンをずらしてお尻を丸出しにしてそれをモモに見立てて手足をぐるぐるにロープで縛って三輪車で引きずり回した様子をネット動画に上げて生涯この街をあるけんようにするで」 「鬼〜!めちゃくちゃ鬼になってるやないの」 「もう分かりました。金銀財宝をお返しします」 「話し終わった〜!」 「あかんあかんもう終わっちゃうから金銀財宝もっといて」 「おい、鬼、鬼。お前よくも出たな。鬼」 「おばあさんでてきたおばあさん何?どういう展開?」 「お前さんが金銀財宝を奪ったせいでうちの父ちゃんと母ちゃんは野垂れ死んでしまった。その後私は施設に預けられて暗いトンネルの中を這いずり回るような人生だった。だからこの刃をお前さんのふとっぱらにぶち込んで親の敵取ってやる。今に見てよ!鬼行くぞ!覚悟〜!ザクッ!」 「ばあさん、だめじゃあ!グサァッ!ばあさん何があっても命あるもの同士、傷つけあってはならん。ばあさん愛しておったよ。ばあさん。」 「じいさん」 「ずっと何してんの? あんたなんやなんこれ? もうわけわからん。もうお父さんお母さんすんません。親御さん。親御さんまでスタンディングをしてるんですか? もうこんなことやってのままあかんもう皆さん帰ってください」 「担人の先生。担任の先生これはどういう事態ですか?」 「園長先生。」 「園長先生じゃないですよ。あなたね。お遊戯会桃太郎1つまとめられないようじゃ、もう先生失格ですね。もう先生はやめて普通の幼稚園児に戻ってください。」 「バレてました?」 「バレてますよ。あなた5歳児なのにずっと先生を演じていたでしょ?」
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