森。あたりをどれだけ見回しても深い森。森にある道を一つの改造された自転車が爆速で走っていた。時折落ちていた木の棒を破壊しながら。速度は時速50キロ程度だろうか。自転車の前のバスケット(?)には頑丈なラブインゴット製の箱があり、旅荷物で満載してそうだった。が、片付けが苦手なのか、少し箱は空いており、中から布だのナイフだのスマホの充電器だの魔力結晶のカケラが飛び出していた。自転車の後ろの荷台には手持ち型のトランクが3つほど重なっていて、ロープで固定はしていたが、ガタガタと動く。その運転手は旅人だった。身長は120㌢、年齢は10歳ほど、腰と胸のあたりにはポーチがあり、背中には赤子兵装(武器のブランド名。この場合だと両手剣だよ?わかる?ねぇ)を背負っていた。ピンクのナース服を着ている。目が水色の星、しっぽは細く、毛が茶色で、猫ケモショタだった。だった。 「ん?」 運転手がふと自転車を止めて、あたりを見る。木の下には茂みがある。そこには、野生の豚がいた。大型の豚だった。背負っていた両手剣が喋る。 「モニター、たしか豚肉好きだったよね?」 モニターと呼ばれた運転手は頷き、自転車から降りる。箱から小さなナイフを取り出した。ナイフは昼の太陽の光を浴びてきらきらと光った。豚めがけて投げる。ドスっと豚に刺さり、血が噴き出す。豚はぶるっと震えて、そして倒れた。モニターは叫ぶ。 「っしゃアアアアアアアアア!」 モニターは嬉しそうに叫んだ。 「モニター、はしゃぎすぎ」 「だってベビブレー、久々の豚肉だよ!?」 ベビブレーと呼ばれた両手剣は化け物の様な手を出して、軽くモニターにチョップする。 「ごめんうるさすぎた」 モニターは、静かになった。 夜。先程の両手剣、ベビブレーは化け物の様な手足を出して、焚き火の火おこしをしていた。大、中、小の枝をきれいに組み合わせた。モニターはそれに燃料となる物を加える。火が起こった。モニターは普段、魔法式拳銃の練習や壁として使う鉄板を洗い、それに仕込んであった鉄の棒を出した。鉄板は火で温められバーベキューまたは焼き肉みたいになった。豚肉を敷く。じゅわああああ。薄切りだった。豚肉から油が出て、それがはねる。油をボトルに詰めた。鍋に水を入れてそれを鉄板の上に置く。すぐにお湯になった。コンビニで買った様な袋麺を出して、大型のカップに入れ、お湯を注ぐ。残ったお湯はアイスティーにした。早く食べたくて慌ててたのか、時折お湯をこぼす。落ち着いてとベビブレーが言う。しっかりと焼いた豚肉をラーメンの中に入れる。食べれる山菜を刻み、ラーメンに入れる。美味しそうにすする。その間、ベビブレーは自転車の掃除をした。まず水で濡らしたスポンジで丁寧に汚れを拭き取る。次に油石鹸で残った汚れを磨き、すすいだ。ピカピカ、という訳ではなかったが、きれいにはなっていた。次にベビブレーは魔法式拳銃を分解して、それも拭いた。素早く組み立て、動作チェックをする。一方、モニターは夕飯の様子をバカスタグラムに投稿した。何秒かのロードの後、すぐにいいねが付き、しばらくバイブレーションが鳴り止まない。熱くなったスマホを、近くの川の水で濡らしたタオルで冷ます。スマホが、冷たくなった。 星空が輝いていた。月も輝いていて、わずかに地上を照らす。わずかに焚き火の火が残っていて、二人を照らす。 「元気にしてるかな、ハンク」 ふとベビブレーが言う。 「死んだんじゃないのぉ〜?」 「モニター、失礼すぎるよ。」 モニターは空を見ながら豚肉を食べる。紅茶も美味しそうに飲む。足を前に出して、地面に座っていた。 「ベビブレー、多分あの旅人死んでないよ。最近、銃使いのハンクって言う人がいるもん。」 ベビブレーはあー、と言いながら 「あの人有名だよね」 「よく32人鬼扱いされるけど、実際はどうだろう」 「さあ?モニターもそのうち会えるんじゃない?」 モニターは言う。 「あの子には謝りたいんだ。」 「は?」 ふう、と息をモニターはつく。 「あの時、とあるエリアにいた時、あの子に会ったんだ。あの子、すっごく悲しそうにしてたからさ、どうしたのって言ったら、ね。あの子には僕が旅している理由を聞かれた事があったんだけど、『歪んだ人間性がある限り、旅は続くかな』って正直に言ったら不思議そうな顔しちゃったんだよね。ただの厨二病だと思われちゃったのかな?」 ベビブレーについた汚れを拭きながら言った。 「さあ?他の旅人たちは欲で動いてるもん」 焚き火の火がまだ残っていて、鉄板は片付けられてる。 モニターが寝る直前だった。どこからか戦車連隊がゆっくりと轟音を立てながら走ってきた。モニターの近くで止まる。頑丈なドアがゆっくりと開く。中から軍団の中年のおっさんが出てきた。軍服を着て、背中にはサーマルスコープの付いた魔法の杖を持っていて、ベルトにはトランシーバーがある。ポケットにはピストルがあり、バックパックを背負っていた。 「モニターさん、ですか?」 「はい。あなたは?」 おっさんは自己紹介をする。 「こんにちは。とある研究者に雇われた部隊の隊員の者です。我が軍はこの者を探しておりまして。旅先で見つけましたか?」 おっさんは写真を見せた。その写真に写っていた人はもふもふだった。ツノが生えて毛が茶色、おなかや顔の真ん中のあたりは白。狐とも猫とも犬ともいえない外見だった。名前欄には005とだけ書かれていて、それ以外何もない。感情があまりないのか、作り笑顔をしていた。 「何だこのメスケモ!?」 「バカスタで見た通り、本当にネットネタがお好きなんですね。ところで、知りませんか?」 モニターは目が泳いでいて、少し緊張しているようだった。 「いえ、知りません。」 「ほんとかぁ〜?」 「いいえ、知りません。」 おっさんは少し考え込み、 「まあ、我が部隊に歯向かう旅人なんていませんものねwありがとうございます。」 戦車を見送った。 「あの人ピュアで助かった...」 「ねえ、モニター、何で嘘ついたの?バレたら大変だよ?」 「あの子、少しかわいそうだからさ。一応安全の為に明日あの子のとこ行こう」 「かわいそうってどゆこと?」 ベビブレーは不思議そうにしている。 その日は早く寝た。ただモニターの誰かを呼ぶ寝言が聞こえる。