私がまだ中学生のころ、お盆の時期の話です。 お盆になると山奥の田舎の祖父のうちに毎年のように帰っていました。 その時期の祖父は、お盆が近づくと具合が悪くなっていき、 お盆が去ると何もなかったかのように元気なる、そんな人でした。 ある年の夏、いつものようにお盆の頃に帰省していたのですが、その年の祖父はとても具合が悪かったようで 近所の人の勧めもあって、祖父は付き添いの祖母と一緒に近くの神社にお祓いに行くことになりました。 ちょっと時間がかかるようで、2.3日神社でお祓いしたのち、戻ってくるとのこと。 その年のお盆は13日~15日まで、祖父がいない帰省となったのでした。 帰省した1日目は祖父がいないということで、どことなくみんな静かに過ごして、そのまま終了。 しかしそれは2日目の夜に起こったのです。 祖父がいなかったので、祖父の寝室を私が使わせてもらっていました。 祖父の部屋にはとても古いTVが置いてあって、そのTVはメモリのようなスイッチを回転させてチャンネルを入れ替えるタイプのTV。 このTVがすごく珍しかったので、カチカチとチャンネルを切り替えたりして、いろんな番組を楽しんでいました。 午後23時を過ぎた頃でしょうか、私はまだチャンネルを切り替えいろんな番組を見ていたのですが、ちょっと違和感が チャンネルが切り替わる一瞬の暗転がちょっと長く感じたのです。気なってしばらくカチカチ回していたら、 その違和感はだんだん強くなっていき、 「バチンッ」 という大きな音が鳴り、ついにはチャンネルを切り替えていないのに勝手に番組が切り替わるように チャンネルが切り替わる一瞬の暗転時に、小さく誰かが映っているのを感じました。 チャンネルが切り替わっていくにつれ、その誰かは大きくなっていて まるで遠くからこちらに向かってくるようなそんな感じ。 その人物は見たことあるような人物なのですが、誰かまではわからないまま だんだんと近づいてきたのです。 近づくにつれその顔は明らかに怒っている老人であるのがわかりました。 意味も分からず、身の毛がよだつほどの恐怖でパニックになっていたのですが、 TVの目の前くらいまで来たところで、音は聞こえないものの 「チ」 「ガ」 「ウ」 という口の動きをしたのち、ふっと消えたのです。 消えた直後でした。 後ろで 「ガシャーン!!」 という何か固いものが落ちた音が それは祖父の部屋に飾ってあった曾祖父の写真の額縁で、急に落ちてきたようでした。 恐怖で腰を抜かしていると、音を聞いた家族がやってきて片付けてくれたのですが、 その写真を見て驚きました。さきほどTVに映っていた老人、怒っているような顔をした人が曾祖父その人だったのです。 家族にその話をしたものの、寝ぼけて見た夢だろうと相手にはしてくれず、 部屋は家族と一緒の部屋にしてもらって、その日は眠りにつきました。 次の日になり、祖父祖母がいないので私たち家族は予定を早め帰省を終えることに。 出発の直前に祖父にお祓いを勧めてくれた近所の人がやってきて 「もう帰るのね、昨日大丈夫だった?」 と親に聞いてきてくれたのです。 ですが私の親は額縁が落ちたことだけを話していたようでした。 「それだけだったのならいいのよ」 と少し引っかかる言葉を残し、近所の人は去っていきました。 こうしてその年の帰省は、怖い思いをしただけで家路につくことになりました。 そして次の年、祖父はお盆を迎えることはありませんでした。 祖父はお盆を迎える前の7月の末ごろに心不全で亡くなったのです。 祖父の葬式であの近所の人が見えていたのですが、そこで少しお盆の件について聞いてみました。すると、 「やっぱりそうだったのね…」 と何か知っているようなそぶりだったので、詳しく教えてもらいました。 あの地域では、古い言い伝えで、若いころに悪さをはたらいていたものには 山の神が近親のものの姿を借りて、その家に古くからあるものを使って長生きできないように、お盆に命を刈り取りに来るそうです。 祖父は若いころは相当悪い人だったようで、この言い伝えを思い出し、近所の人はお盆に家にいないように神社を勧めた、とのことでした。 あのお盆の夜は本当は祖父の命を狙った山の神が、祖父を探していたのかもしれません。 実は祖父が亡くなった7月の末、地上波のアナログ放送が終わるとのこともあり、あのTVを買い替えようとしていたという話を聞ききました。 本当のところは私にはわからないのですが、祖父を長生きさせまいとする山の神の執念が、お盆前に引き起こした悲劇だったのかもしれません。