使い方の所から読んでください。 メモクレの文章は使い方の続きです。 長いので嫌になる人がいるかも知れませんが、青斗の過去、風音の過去はここで明かされます。 あと公開した23時半はまだ22日なので(言い訳) __11/18 Tuesday__ 「このままじゃ人生終わる...!」 そう思った瞬間、俺は浮くような感覚に襲われる。 前にも、感じたことが何回もあった。 これは瞬間移動だ。 その結論に辿り着くのと、瞬間移動が完全に終わるのはほぼ同時だった。 立ち眩みのような黒いモヤモヤが溶けると、そこは家のリビングのような場所...いや、リビングだ。 ただ、俺の住んでる家のではない。 俺の目の前には女が立っている。 見覚えは...無いが、未成年であることはなんとなく分かった。 「ここは...どこだ?」 そう俺は尋ねる。 女は、無言で俺の斜め後ろを指差す。 俺は少し後ろを見る。 「風音さん⁉︎」 そこには風音が立っていた。 なんだか不安なような焦ったような表情で。 「ど...どうも」 風音さんは小さな声で挨拶をする。 それからしばらく沈黙が流れたが、女が俺に言った。 「あの...私があなたをテレポートでこちらに呼び寄せました。なんか申し訳なかったので...」 「あっどうも...って、アンタ誰?」 全くもって知らない人に申し訳ないと言われる筋合いは無いと思うのだが。 「私は犬飼恵理(いぬかい えり)と言います。あの、カラダ探しを始めたのは...私です」 この女は何を言っている? 困惑しながら風音の方を見るが、風音さんはなんとも言えない表情をしている。 「カラダ探しを始めたって...一体どういうことだ?」 「すいません!本当にこんなことになるとは思ってなくて!ただ私はっ...」 恵理はそこでハッとするように黙った。 と、風音さんが突然口を開く。 「恵理さん...私昔あなたに会ったことがありますよね?」 恵理はうなづく。 俺はちょっと理解できないまま、風音は話を続ける。 「恵理さん、カラダ探しを始めたのがどうかは置いときますけど、あなたに罪はない」 恵理は俯く。 俺だけ状況が理解できていないぞ。 風音がまた続ける。 「同じ犬飼という苗字を背負ってるだけですので...」 恵理は苦い表情をする。 「ちょっと待て!俺だけ状況を理解できていない!ちょっと説明してくれよ!」 「ごめんなさい。今はとりあえず私がテレポートであなたを助けた。それを知っていただければ結構です」 恵理がそう言うと、風音も小さく頷く。 「は...はぁ...」 「このあとどうしよう...静羅さんを助けたのはいいんだけどウチには泊めさせられないしなぁ...警察から隠さなきゃだし」 恵理は独り言のように呟く。 そして、彼女は風音に向き直るとこう言った。 「風音さん、後はよろしく」 風音に有無を言わさず恵理はそのまま消えた。 「へぇぁ⁉︎」 風音がよく分からない悲鳴を上げる。ちょっと可愛かったが、今はそんなこと考えられない。 その後は5秒くらい風音と目を合わせていた。 気まずくて耐えられなかったので、俺は言った。 「俺は一週間の間山奥にでも隠れてやり過ごすよ。風音さんを共犯者にしちゃいけないからね」 笑顔でそう言ったが、引きつっていたかもしれない。 ただ一つ聞き忘れていたことがあった。 「ここってどこか分かる?」 「私の家...」 「へ?」 マジかよ... 「あっあのっ...」 風音が自分の胸元のセーターを掴みながら提案してくる。 「私の家に...隠れませんか?」 最初は何を言ってるのか理解できなかった。 風音はハッとして慌てて付け足す。 「いえ!なんか変な意味ではなくて!野宿と違って暖房も色々あるので!」 俺は迷った。 ただ、風音さんの部屋で寝るチャンスだぞ... 風音を共犯者にしたくない気持ちより、様々な欲が勝ったようだ。 「じゃあ...そうさせてもらおうかな?」 「はっはいぃ!...でも、夜になったら親が仕事から帰ってくるので...超静かにしておいてくださいね」 「...分かった」 俺は思い出したかのように靴を脱いだ。 そして風音は俺を二階の自室へと案内した。 「あっ...ちょっと片付けるので待っといてください」 「アッハイ」 風音が一人部屋に入っていく。 10分ほど待たされた気がしたが、ドアが開く。 「ど...どうぞ...」 部屋に入る。 亜jf土井gjラエオイj馬ヴィオエjvmれ;j簿;杰r;女j;rチオ藍rジェ青;これが女子の部屋か。 ええなぁいい匂いがするわ。 「じゃあ、親にバレたらまずいのでクローゼットで暮らしてください」 一瞬困惑したが、まあそうなるだろう。 彼女はクローゼットを開け、中にある衣服を大体取り出す。 意外と広くて、若干丸くなれば横になって寝れそうなスペースはあった。 「申し訳ないな...」 「いえ、私が決めたので」 よく考えると...てかよく考えなくとも男を家に泊めるって風音さんにその気あるのでは...? 「今はまだいいですけど、親が帰ってきたら絶対物音立てないでくださいね」 「分かった」 「あと夜寝ないでください」 「...?」 「寝たらいびきでバレてしまいます」 「なるほど」 「だから、その、寝るのは一晩経って7時に親が二人とも仕事に行ってからにしてください」 「難しいなぁ...でも頑張るよ」 「夜寝ないように私のスマホいじってもらっても結構ですよ」 -夜- 風音の親が帰ってきたようだ。 俺はすでにクローゼットの中で漫画を数冊置いてスタンバイしていた。 風音がクローゼットにいる俺に小声で声をかけた。 「静かにしといてくださいね」 もちろんだ。 数分経ったが風音は部屋から出ようとしない。 俺は相変わらずクローゼットに身を潜めている。 クローゼット内に置かれている時計は8時を過ぎていた。 風音はまだ飯を食べていない。俺もだが。 風音の両親と思われる二人の人間の声が一階から小さく聞こえる。何を喋っているのかは流石に聞き取れない。 と、物音が聞こえた。風音さんが部屋から出たようだ。 ーーーーーーーーーーー 私は一体何をしている? 男を家に泊めて、クローゼットに閉じ込めている。こんなもの監禁だろう。 しかし、これは彼を守るためだと... ...彼は私と違ってお腹が空いているだろうか。 私は迷いながらも部屋を出た。 階段を降りる最中、両親の話し声が聞こえた。 きっと...私のことを話している。 このまま下に降りるのが怖くなったが、勇気を出して一歩一歩降りていく。 ダイニングへ着くと、両親は真剣な表情で、食事をしながら話し合っていた。 母親がこちらの存在に気づいた。 「風音、どうしたの?」 「夜ご飯...久しぶりに食べたくて」 両親は口をポカンと開けて、しばらく硬直していた。 「本当⁉︎すぐ用意するからちょっと待っててね!何食べたい?」 「白米と、味噌汁...」 「それならもうあるわ!すぐよそうから待ってて!」 「ありがと...でも、部屋で食べる」 「別にいいわ!」 母親は盆に米と味噌汁と箸と水を置いて、私に渡した。 階段を登る最中、両親の話し声が聞こえた。 「あの子が...夕飯を食べるなんて何年ぶりだろうか...」 「ええ...あの子だって成長してきてるのよ...」 ごめんなさい。 これは、全部彼にあげるの。 部屋に戻り、クローゼットを開ける。 「静羅さん、これ、食べてください」 小声でそう言う。 彼は無言でうなづき、箸に手を伸ばす。 私のためのご飯だけど、私は静羅さんにご飯を食べて欲しいから、これも一種の私のためかもしれない。 彼は美味しそうにご飯を食べている。 私には全く美味しそうには見えないが、彼が美味しいのならそれでいいと思う。 彼はすぐに食べ終わった。 私はおかわりはいるか聞いたが、彼は首を横に振った。 お盆は、部屋の前に置いておいた。 __11/19 Wednesday__ 朝7時頃、風音の両親は仕事へ出掛けた。 風音がクローゼットを開けて覗いてくる。 「おはようございます...」 「お...おはよう」 風音は青色の水玉模様の付いたパジャマを着て、寝起きの目を擦っていた。髪の毛もボサボサで、超絶可愛かった。 「じゃあ、私は学校行くので着替えます。絶対クローゼットから出ないでください」 「あっ...はい...」 クローゼットが閉まり、扉の向こうで着替える音が聞こえる。ヤベェ... まあなんとか平静を保てた。 着替え終わった風音がまたクローゼットを開ける。 「じゃあ、今から私が帰ってくるまでは寝ててもテレビ見ててもいいです。ただ外出は禁止、カーテンを開けるのも、引き出しを開けるのも禁止です」 「了解」 「行ってきます。鍵は自分で閉めますので来なくても結構です」 風音が家を出る。 あまりにも眠い... まず最初に寝ようかと考えたが、テレビが見たくなってテレビを見ることにした。 リビングに降りてテレビを付ける。 その瞬間自分の顔写真とともに名前が目に飛び込んできた。 「マジかよ...」 3名殺害した静羅青斗という高3が逃亡しているとのニュースだった。 「覚悟はしていたが...まさかここまでとは...」 しかも、中学生時代3人を重症にして少年院送りにされていたことも放送されていた。 「最悪だ...せっかく隣の隣の県まで引っ越してきたっていうのに...それまで明かされるとは...」 この先人生をどう生きればいいのだろうか。 てかマズい...風音さんにバレるんじゃねこのこと... 恐ろしい予感がしたが、眠気が襲ったので倒れるようにソファーに寝転びそのまま寝てしまった。 起きた頃には午後4時になっていた。 一瞬なぜここにいるのか分からなかったが、10秒くらい記憶を辿ったら思い出した。 「てかヤバい、そろそろ風音さん帰ってくるんじゃね?」 その瞬間に家のドアが開く音がした。 風音が暗い顔でリビングに入ってくる。 「静羅さん...」 「な...何かな?」 「クラスの方々が静羅さんを前科ありの犯罪者と噂を流していたんです...」 やっぱりか... そんな気はしていたがいざ直接言われると心臓がバクバクして開いた口が塞がらなかった。 「はぁ...へっ、へぇ...」 「そんなの...根拠も無い噂ですよね。そうですよね?」 風音はその噂を信じていないと言うが、その可愛いが痩せた顔に付いた瞳には確実に疑惑の念が見られた。 「うーんと...」 言い訳をしようとするも、言おうとした途端テレビのニュースで俺の名前が出た。 それも、朝見たような内容だ。 風音は驚いたようにニュースに釘付けになる。 少し経つと、彼女は俺の方を冷や汗をかきながら苦笑いで見つめる。 「違うんだ...これは」 「何が違うんですか?」 「いや...」 これは...逆に本当のことを言っておいた方がいいかもしれない。 「そ...そうだ。その噂の通りだ。俺はそんな奴だ。バールで3人殴り飛ばして...そんで少年院行ってそこから出たら引っ越して何もなかったかのように高校生活を送っていた。そんな奴なんだよ」 必殺開き直りだ。 風音は苦い顔で一瞬斜め上を見上げ、その後また俺を見つめる。 「どうするの?俺を追い出すか?」 「そんなことしませんよ」 「え?」 風音は真剣な眼差しでこちらを見つめている。 俺はというと驚いて間抜けな顔をしている。 風音は一度深呼吸をしてから話し始める。 「あなたは、過去に酷いことをしただけで、今酷い人なワケではありません」 「...そんなことないかも知れないぞ?」 「あなたは、私を二回...確か二回助けてます。命を助けています。悪人には...できません」 「・・・ありがとう...って言えばいいのかな?」 俺は精神が疲れ果ててソファーに座り込む。 風音は、その隣に三角座りで座った。 その時何を思ったのか、俺は自分の過去を語り始めた。 「俺は、中1の時チンピラにカツアゲされたんだよ。その時、近所で番張ってる高1の奴に助けられたんだ」 風音はただうなずいた。
使い方の続き 「そいつはまぁ...ここではKって呼ぶわ。Kは俺を助けた見返りに俺を自分の下っ端にしたんだ。 でも、そこまで扱き使いはしなかった。俺は大して強くなかったし、まだ中1のガキだったからだと思う。 それで...中1の3学期、Kの率いる組と他の組の間でバチバチの争いが起こったんだ」 風音はハッとしたような顔をする。 「その時に...バールで...あれを?」 「いや、違う。話を続けると、Kの組が負けた。その時、俺は対戦相手の組の奴らに捕まって、それからは...奴隷のような扱いを受けた。 それである日、その組のボスがとある3人が写った写真を見せてきて、『この3人をバールで一生喧嘩できない体にしろ』って言ってきたんだ。それに従わなかったら、俺はもちろん俺の親も半殺しにするって言ってきたんだ...従うしかなかったよ。それで...」 「もう、言わないでいいです」 風音は悲しそうな顔で言った。 ただ、俺はなぜか続けた。 「あの時バールで殴りに行くフリをして警察まで行けばよかったんだ...そうすれば俺の人生はめちゃくちゃにならずに...あの3人の人生も崩壊せずに済んだん...」 突然、風音は俺の肩に頭をもたれさせてきた。 風音さんの体が俺に触れていた。 かなり骨張っていた。ただ、暖かかった。 「うおっ何⁉︎」 「落ち着くんです...」 「はぁ⁉︎」 「過去に過ちを犯して、今は更生している。そんな人ってなんだか...落ち着きます」 「は...はぁ...」 少し理解が追いつかない。 風音は続けた。 「昔は、こんな私にも親友がいたんです。何人も...です。皆個性があって...友達思いで優しくて...ただ、皆何かしらの業を背負っていました」 今度は、俺が聞く番のようだ。 「とある子は、幼い頃弟と親に言わず勝手に森に入って、弟は...今も行方不明です。とある子は、正義感があまりにも強すぎるくせに暴力的で、クラスの男子をいじめていたいじめっ子の男の子を学校の3階から突き落として、その男の子は永遠に車椅子生活で、脳に障害も。とある子は、・・・タバコも酒飲みも当たり前のようにやっていました!」 風音さんが早口で語る。 どう返したらいいのかがよく分からなかったから、俺は自虐のような同調のようなことを言った。 「俺がそこにいてもそこまで違和感無いな」 「ふふっ...ですね」 風音が笑う。 さっきの苦笑いを除くと、笑っている所は初めて見たかもしれない。 その笑顔があまりにも可愛すぎるせいで、俺は視線を逸らした。 と、その数秒後、肩に何か水滴が垂れた。 驚いて風音の方を向き直すと、風音が泣いていた。 「風音さん...?」 「あっごめんなさい!」 風音が慌てて離れようとするが、俺はその体を抱きとめた。 「っ...」 風音は案の定驚いていた。 まずい。なんか瞬時にやってしまった。 「いや...別にこのままでもいいよ」 言いながら自分のこの発言に吐き気が差した。 まあ言ったものは仕方ないか。 「あ...ありがとうございます...」 風音はまだ涙を流しているが、話を続けた。 「・・・まあ、もう誰もいないんですけどね...」 「へ?」 「一人はもう、絶交しました」 なんだ、絶交か。 絶交も大概だが、なんだか安心してしまった。 風音は若干涙が収まった。 喋りを止めるべきかもしれないが、本人が話したがっているので止めはしないでおこう。 風音は深呼吸して続けた。 「でも…もう二人は...二人はっ...!」 ん?なんだか不穏だぞ? 風音はさらに一呼吸して言葉を絞り出した。 「もう二人は...もうこの世には...」 彼女がそれを口にする瞬間、彼女の瞳から涙がブワっと出た。 「もう話すな...話さないでいい...」 俺はそう言った。 風音は俺の腕の中でヒクヒクと震えている。 「ごめんなさい...涙脆くて...私っ」 「大丈夫、全然大丈夫」 彼女は俺と同身長とは思えないほど小さかった。 「こっちも、彼氏面してめっちゃ申し訳ない。しかも、家に泊めてもらってるのにこんな堂々と過ごして...」 1分くらい互いに黙ったままだった。 沈黙を風音が破る。 「全然いいです。泊めたのは私が提案したことですし。彼氏面...それはよく分かりませんね」 風音はクスっと笑った。 泣いて赤くなっていたが、笑顔が可愛すぎて死にかけてしまった。 俺はもう耐えられなくなって風音から腕を離した。 風音は少し起き上がり、俺に言った。 「少し...スッキリしました。今まで、親以外誰にも話せていなかったので」 「それは良かった」 ・・・長谷部を殺した時のあの状態...あのことはあまり口出ししないほうが良さそうだ。 風音が立ち上がり、俺を見下ろした。 「静羅さん、シャワー浴びた方がいいんじゃないですか?」 ん?これは… そんな妄想も一瞬で消える。 「昨日あんなに動いたからか、ちょっと臭いますよ。臭いで親に居る事バレるかも…w」 意外と風音は冗談を言うタイプの子なのかもしれない。 前編 完 後編へ続く