第一章 https://scratch.mit.edu/projects/835699341/ (旗を押してから読んでください) 「うわー、菌に触っちゃたよー」 「あいつ」が二年生のとき、俺が最初に聞いたのはこれだった。 「はい、あげる」 「はっ?いらねぇよ」 俺の目の前ではそんな会話をしながら「菌(あいつ)」からもらった「菌」を擦りつけ合っていた。当の本人はというと、他人事のように席に座ってぼーっとしていた。 「おい、おまえ。あんなこと言われていいのか?」 「あいつ」は貧乏ゆすりをしながら答える。 「……何?あんた誰?勝手に土足で入らないでくれる?」 「なんだよ。心配してやってんのに……。えーっと、俺の名前は……」 「名前は聞いてない」 「は?『あんた誰?』ってさっき自分で言ったよな!?」 「誰とは言ったけど、名前は聞いてない」 「……」 「ま、いいよ。◽︎◽︎があんたにあだ名つけてあげるから。あんたは、◽︎◽︎にとっての死神だと思うから、あんたの名前は『死神』ね」 「『死神』って……そういうおまえは?」 「◽︎◽︎◽︎◽︎ ◽︎◽︎」 「◽︎◽︎◽︎◽︎」。聞いたことない苗字だ。 「『◽︎◽︎◽︎◽︎』?マボロシにカゲって書くあれか?」 「多分、ちがうと思う。ちなみに、◽︎◽︎の名前のゆらいは、太陽のように明るく和やかでいられるように、って。……全然そんなことないけど」 「……」 昔の「あいつ」は今と違って本を読まなかった。その代わり、いつものように校庭に出て遊んでいた。性格も親父譲りで、女子ともあまり馴染めなかった。 三年になるとイジメはなくなったが、四年になるとまたイジメは起こった。手口は全く同じだ。だが、こっちの方がよっぽど酷かった。 そんな「あいつ」はある日、ずっと友達だと思っていたクラスメイトに言われた。 「あんたのこと友達だと思ったことないよ?」 と、面と向かって、はっきりと。何のためらいもなく。 それからだ。それから「あいつ」は誰が友達なのかわからなくなった。 五年生になって「あいつ」はやっとわかった。「自分にとっての『普通』は他人にとっての『異常』だ」ということに。 「あいつ」は変わった。自分がこれ以上傷つかないように。そうして「あいつ」は外で遊ぶ活発さは消え、女子らしい行動が増え、言葉も丸くなり、独りで抱えたこむことも増えた。 『あんたのこと友達だと思ったことないよ?』 ……どうして、あんなことを面と向かって言えたんだろう……? 「……ねえ……ねえったら、おい!聞いてんの!?」 俺はその一声で一気に現実世界に戻ってきた。 「ねえ、聞いてんの?聞いてないの?」 「ごめん。普通に聞いてなかった」 俺が素直に答えると「あいつ」はわざとらしく溜め息を吐いた。 「ウチが小説家になれると思うか、なれないと思うかを聞いてんだよ!」 どーでもよ。あ、睨まれた。 「はあっ……『あの子』に聞いた方が早いかなぁ」 「あの子」 なんとなく察しがついた。 そういえば「あいつ」が変われたのは「あの子」に出会ってからだな――。 第三章 https://scratch.mit.edu/projects/846701375/