========================================= 特に特徴のない男と、特徴しかない少女が、手をつないで、人気のない道を進んでいく。 …10分ほどたっただろうか。男が立ち止まり、目の前の建物を見上げる。それにつられてずっと男の顔を見ていた少女が建物のほうを見上げた。 男が、少女に呼びかける。 _ここが、お兄さんの言っていた「寮」だよ。 _へえ。 少女は、その建物をまじまじと見つめる。 ログハウス…いや、どちらかというと小屋に近いような外見で、木そのものの色が特徴的だ。 男が少女の手を引いてその建物の中に入ろうとドアノブに手を伸ばした。 音を立てて、男がゆっくりとドアを開ける。 すると、目の前に広がっていたのは… …誰もいない、薄暗い居間だった。 少女はその光景に少し恐怖を感じたが、男は何でもないような、むしろ安心したような顔で、少女を家の中に入るように促す。 家の中に入り、鍵を閉め、そのまま居間に入る。 _何か飲むか? _ジュースがいい! 少女はそういって近くの椅子に腰掛けた。 男はそれを確認すると食器棚からコップを取り出し、りんごジュースのペットボトルのキャプを捻る。 「わっ!!!!!!」 途端に、少女が座っている方から声がした。 男は驚いてコップに注いでいたりんごジュースを溢しそうになる。それを何とか止めて少女の方を振り向くと、少女の後ろにガスマスクを着用している人物が立っていた。 「あれ、何でこの子驚かないのー?あれ?」 「…その子は耳が聞こえないんだ。」 男が呆れた様な顔で言うが、声は先程の衝撃がまだ残っているのか、声が少し上ずっている。 「…で、何の用だ?」 男が尋ねる。 「いやー、‘‘巡視‘‘、‘‘花卉‘‘と今日約束があったんじゃないの?」 男が、「あ。」という顔になる。だがすぐにいつもの調子に戻り、 「じゃあ驚かさずに、普通に教えてくれればよかったんじゃないか。」 と非難したが、 「えーだって、驚かした方が面白いじゃん。ほら、 さっさと行かないと嫌われちゃうぞ☆」 と全く悪びれずに(むしろ面白そうに)言うガスマスクの人物を見て、男はもうこれ以上話をしても無駄だというように居間を出て行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 男が、木製のドアを開ける。 「…待った?」 「勿論。小一時間ぐらいですかね?」 目の前にいる小柄な少女が微笑しながら言う。 「…すまない。」 と男が謝ると、 「まあでも、来ないよりは大分ましです」 と苦笑いした。 「…それで、用件って何でしょうか?」 「…安直に言うと、見回りの人手が足りない。」 「つまり手伝えということですね。流石の私でも分かりました。」 少女は うん、うん と頷きながら、 「で、何を手伝えばいいんですか?」 と聞いてきた。 「例の街から、いたら数人、引き抜いてきてくれ。」 「なかなか人聞きが悪いことを言いますね。私たちがしてるのは捨て子の保護ですよ?」 「まあまあ」 男は少し勢いがついてしまった少女をなだめ、 「…頼めるな、‘‘花卉‘‘?」 と言った。少女はその言葉を待っていたかのように にこり と可愛らしい笑みを浮かべ、 「はい、‘‘巡視‘‘さん。」 と応えた。
サムネの子は‘‘花卉‘‘ちゃんです