========================================= 「…ゴメンネ☆」 冷徹に、耳元で誰かが言い放つ。 _茶色に染まったナイフを、こちらに向けて。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「っはあ⁉」 布団から飛び起きた‘‘道外‘‘は、枕元の時計を見る。 「やば!もう‘‘儀式‘‘始まっちゃうじゃん!急いで準備 したら間に合うかなー」 ‘‘道外‘‘は、焦りながらも とりあえず と言った具合にガスマスクをもって洗面所に向かう。 もう少しで洗面台に着きそうというとき、 「…‘‘道外‘‘?」 _背後から、声がした。 動きが止まる。 ‘‘道外‘‘は今、ガスマスクを着けていない。 焦燥に駆られる。 鼓動が速くなる。 見られるかもしれない。 _どうしよう。 _二人の間にあるものは、長い沈黙だった。 「おーい、ちょっと。呼んでるのに無視は ないだろ。」 その‘‘巡視‘‘の声で‘‘道外‘‘は我に返る。 「‘‘巡視‘‘…?」 「ん…いかにも俺は‘‘巡視‘‘だが。」 呑気なその声に、‘‘道外‘‘はひとまず安心する。 「ところで、どうしてこっちを向かないんだ?俺嫌われてる?」 一番訊かれたくないことを訊かれてしまった。 頭が回らなくなる。 それでも‘‘道外‘‘は何かを言おうとするが、口を開閉するばかりで言葉になっていない。 再び流れた沈黙の間に、‘‘巡視‘‘は気付く。 「…‘‘道外‘‘、その手に持っているのは… ガスマスクか?」 「…そうだよ…。」 二人の間から沈黙は消え去ったが、今度は気まずい 空気になってしまった。 みんなの前でギャグを披露することになってスベッた時ぐらい。 「えーと…とりあえずガスマスク付けるから向こう向いててくれる…?」 「ああ、すまん。」 ‘‘道外‘‘は、ガスマスクのピッケルホルダーをしっかり固定すると、‘‘巡視‘‘の方を振り向いた。そこには、思ったよりゆるりとした‘‘巡視‘‘の顔があった。 「…眠そうだねえ」 少し上ずった声で、‘‘道外‘‘が言う。 「ん…ちょっと寝坊してしまってな。流石にお前ほどではないが。」 「あ?」 悪意があるとしか思えない‘‘巡視‘‘の言い方に カチン ときた‘‘道外‘‘だったが、それよりも大事なことを思い出した。 「てか…‘‘儀式‘‘の時間は⁉大丈夫なの?」 「ああ、それなんだが…‘‘儀式‘‘はいろいろあって、非戦闘員でやることになったらしい。ということで、今日も俺らは捨て子探しだ。」 「え~…う~ん…」 微妙そうな声を上げる‘‘道外‘‘に、‘‘巡視‘‘は 「どうした?そんなに唸り声をあげて。遅刻しなくなったんだからいいじゃないか?」 と聞く。 「いや、それはそうなんだけど…なんか代わり映えしないなーって」 ‘‘道外‘‘らしい質問の答えに、‘‘巡視‘‘は苦虫を嚙み潰したような顔で、 「じゃあ今から残って参加してもいいぞ?」 と言った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (…こわい…) (たすけて、おにいさん…) 少女は、心の中でそうずっと‘‘巡視‘‘に呼びかけていた。 _無理もない。 十にも満たない少女がおびただしい数の十字架が建っている墓地の中に一人で座り込んでいるのだ。 「ううっ……う…」 遂に堪え切れなくなった少女が呻き声をあげながら膝に大きな涙粒を落とす。 _ぽつり、ぽつり…。 まるでそれを待ち構えていたかのように…雨が降り始めた。まるで、少女の涙のような、大きい、神の涙が。 ほぼそれと同時に、少女の頭にある2文字が浮かんだ。 _魔女。 それが意味することを、まだ誰も知らなかった。
どうもほたてです 今回はかなり重要な伏線が何個か出てきましたので考察してみてください