弾戦事件簿 〜宇宙編〜 序 ここは太陽系にある地球の複写のような惑星。太陽を挟んで地球の真裏にあるため、人類は今までその星の存在を互いに知り得ることはない。それぞれの星が自分の居る惑星を地球と思っているのだから。 一、依頼 我々の住む地球とは別のもう一つの地球では己の開発した弾を使用して勝敗を決めるゲームのようなものが、物事の勝敗を決める要因となっている。そしてそれを基本として掟を破ったものを成敗しているのだ。だが警察はいない。その代わり、弾を開発できるものが探検家兼警察のようなことをしていた。 豊葦原国、聖洞町。この街にもその探検家がいた。 「今日も依頼なしかぁ」 そう怠けている彼の名は鳳桐 探(ほうぎり すぐる)。探検家を初めてまだ間もない新人だ。と、そこに 一通の手紙が届いた。リビングのソファから起きて内容を確認する。 「鳳桐探殿。早速でございますが貴公にお頼みしたいことが御座います。内容は……」 堅苦しいなと思いながら手紙を読み進めていく。すると、一つの文が頭に引っかかった。 「『そしておそらく宇宙空間に密輸犯が潜伏していると考えられます』だって……⁉︎ おいおいまじかよ」 そう言葉を漏らすと宇宙へ飛び立つため、早速準備を進めていった。 二、密輸犯現る 「依頼によるとここら辺らしいんだが何処にいるんだか……っと、早速お出ましか」 奥から小型の宇宙船に乗っている人物が出てきた。 「お前は誰だ。ここへ何しに来た」 下手に答えたらどこでバレるかも分からない。探は沈黙で返した。 「……反応はなしか。密輸の奴らではないんだな。侵入者は排除。これは決まりだ」 (あらかじめ弾が宇宙船から発射できるようにしていてよかったぜ。) そして敵は、 「かかってこい。俺に勝てるならな」 という言葉を発したと同時に弾戦を初めてきた。 左右で魔法陣が展開され、そこから青と緑の細長い弾が飛んでくる。最初から隙間もほとんどない弾を打ってきて探は一瞬焦ったが、すぐに体勢を立て直し敵目掛けて自作の弾を飛ばす。準備運動のように軽々と弾を避けていたら次の攻撃がきた。 魔法陣が今度は中央に展開され、闇を含んだ紅い弾が探に向かって飛んでくる。その場にとどまると弾に当たるため、常に動きながら弾を発射する。弾が打てるギリギリの範囲はでいくと端に止まった火球が爆ぜた。その爆発に巻き込まれそうになるが、何とか持ち堪える。そろそろ最後の攻撃だろうか。 上部に弾が並んだと思うと九十度回転し、下へと落ちていった。油断していたため一発食らってしまい、宇宙船が少し傾く。何とか間を縫うようにして避けていく。敵の体力がなくなったであろう時、敵の攻撃が止んだ。 「まだだ……まだ終われない……! まだ、まだ……! 魔力を解放するしかない……!」 そう言った敵は残っていた魔力(闇・魔の力の総称、生まれつき持つ者もいる)を解放し、姿を変えていった。手や顔に黒い渦巻きのようなアザが浮き出る。強力な魔力に煽られ後退すると中心でレーザーが廻り始めた。 上部から毒の雨も降ってきた。レーザーも二、三本と増えていく。 何とか細やかに動き避け続けるが、長くは持たない。毒の雨をくらってしまい、五秒間ほど動けなくなってしまった。 (しまった……このままだと前後左右から弾で囲まれて確実にくらう……!) 万事休すか、と敗北を覚悟する。突然、視界から敵の弾だけ消え失せた。何事かと周囲を見渡すとそこには、 「んもう! いつもお兄ちゃんは一人で行動して! そんなんだからギリギリの状態で帰ってくるんだよ! たまには私を頼ってよ!」 家に置いてきたはずの妹の翠(みどり)がいた。翠は防御結界が使える。それで弾を防ぎ飛ばしたのだろう。翠が来たことを不安に思いつつも少し安心する。 「お兄ちゃんが回復するまで私が相手になってやる! 黒幕!」 そう言い、魔法石(魔力が長い年月をかけ石になった物)に草が絡んだ弾を敵にぶつける。敵は翠がここまで強いとは思ってなかったのか、焦りが垣間見える。敵は翠を囲うように魔法陣で弾を羅列させ様々な方向へ動かす。対して翠も負けておらず、必死になって高速で動きながら敵に攻撃を仕掛ける。今までの攻撃でガタが来たのか、敵の機体がふらついている。 「あ、攻撃が効いてきてる! ようし、魔法陣展開!」 敵の左右に魔法陣を展開し結界を創る。敵はその範囲から出られなくなった。だがそれほどの結界だ、永くは持たない。結界の力が徐々に弱まっていく。探が起き上がるとそこには力が弱まっていく翠と結界から抜け出そうとする敵の姿があった。 「ハァ、ハァ、……って、マジかよ⁉︎ 翠ボロボロじゃねぇか!」 すぐさま起き上がり敵へ向かって弾を打つと同時に結界の効果が切れた。解放された敵は打つ弾の量を増やしていく。二、三度弾に当たってしまったがその度に機体を起こし立ち向かう。何度目かの攻撃をしたところで敵の体力がなくなり、敵の機体が爆発した。 ↓下へ
三、真犯人 「ハァ、ハァ、どうだ……流石にこの攻撃は効いただろ……さて、密輸なんてことをした理由を聞かせてもらおうか……」 翠を自分の機体の後部座席に乗せながら敵にそう問う。 「やったのは俺じゃない……。この密輸の首謀者は」 敵がそう言いかけた時、聞き覚えのない男の声が聞こえた。 「おい。何をしている。まさか、しくじったんじゃないだろうな」 さっきまで強気だった敵の体がガタガタと震えている。完全に怯え切っているのだ。無理もない。声一言一言に重圧を感じる。振り返るとそこには黒髪に追跡レーダーの眼鏡ようなものをかけた男がいた。 「ふん。まあいい。俺の名は黒雲 陽炎(こくうん かげろう)。俺の計画を邪魔するものは……」 男――陽炎は少し間をあけ、言葉を発する。 「全員、排除だ」 ドガッ、と音が鳴ったと思うと陽炎から青白い炎を纏った黒弾が生み出され四方八方へと飛んでゆく。明らかに先ほどの敵の威力とは違う。完全なる上位互換。そして見覚えのある火球が退路を断つようにして並んでいる。それに加えて上部から魔弾が落ちてくる。先ほどの敵の四方八方の魔球に似ているが密度や造りが違う。炎をまとっているようだ。まさに地獄絵図。避ける隙間も見つからないような状況だ。気付けば黒弾が消え、毒の雨が降っていた。しかも、毒の継続時間が比じゃない。喰らった時に、めまいや吐き気が引き起こされる。完全に想定外の事態だ。 「……っん……」 探の後方から声が聞こえた。どうやら翠が起きたようだ。 「お、にい、ちゃん……? 今……どういう状況かな……。私に……できることって、ある?」 「しゃべんな! 今お前を移動させるから、それまで動くなよ!」 そういい、探は宇宙船の後部座席に移動させ、陽炎の方へと宇宙船を向ける。そこへ、翠が声をかける。 「お、お兄ちゃん……ま、負けないでね」 探の体が無意識にピクリと反応する。そして、 「お前を残しておきながら、俺が負けるわけねぇだろ」 そう言いながら翠に背をむけ、弾を再び陽炎に向け発射する準備をする。そして飛び立つ。陽炎を討つために。 四、最終決戦 「まだ生きているのか。しつこい野郎だ。さっさとくたばれば良いものを」 陽炎が探へ淡々と悪口をいう。対して探は、 「俺は……、負けるわけにはいかねぇんだよ! どれだけ身を滅ぼされようと、お前を止めるまで俺は絶対に死なねェ!」 そろそろ怒りも限界なのか、陽炎の額に青筋が浮かび上がる。 「あっそ。じゃあお前は次で終わりだ。今までお前を舐めていたが、本気を出してやる。俺が出せる魔力を全て出し切ってやる」 その勝ち誇った言葉に探はフッ、と不敵な笑みを浮かべ、 「じゃあ、お前がその本気を出して俺に負けたら、俺の勝ちってことでいいよな?」 という。半信半疑で嘲笑うように陽炎が言葉を返す。 「俺の本気に勝てたやつはいない。今までも、これからも。お前も、俺の計画の糧となるのだ! これで終わりだ、鳳桐探‼︎」 「ああ……。これで終わらせる。終わらせてやる‼︎ 黒雲陽炎‼︎」 陽炎は右手を掲げ、異空間へと転送し、自身も姿を変えた。そして、探に焦点をあて、火箭(火矢)を放つ。しかも、火箭は避けても途中で角度を変え、また追ってくる。同じ位置に止まっているとすぐに蜂の巣だ。探は高速で様々な場所に移動して、火箭から逃げる。火箭は時間が経っても消えず、時間が経つごとに矢の本数はどんどん増えてゆく。今度は上からだけでなく、横からも降り注いでくる。負けるのは時間の問題だ。探は懐から霊力(純正な力)を封じ込めた強力な札を取り出す。陽炎に向かって弾と一緒に投げつけるとダメージが解けるように増していく。 これなら太刀打ちできると思い、ひたすらに撃ち続ける。一方、体力が減っていくことに危機を感じたのか、先ほどのレーザーを展開させる。しかし今度のものは回るだけでなく、左右に動く。挟まれないように隙間を見つけては移動、見つけては移動を繰り返し、陽炎がレーザーを維持する分の魔力を使い切るまで当たらないよう動く。 そして探の狙いどうり、魔力の減少によりレーザーが消えた。 (くっそ……! 魔力の減少でレーザーを保てなくなる……!) 「よくも……やって……くれたなぁぁ!」 陽炎の怒りが最高潮に達し、爆発した。そして……、 (一気に弾の展開量が増した⁉︎ しかも……) 探は陽炎の弾をよく観察する。そこには複数枚の札があった。しかもその札は今現在、力が強すぎるという理由により流通が禁止され世に出回っているはずのない呪いの札だった。 「お前に問われるのは密輸罪だけではなさそうだな」 呆れた、と言わんばかりに探は冷たい眼差しで陽炎にそう吐き捨てる。一方、陽炎は 「俺の計画はもう完了間近なんだよ! その大事な時にお前らは邪魔してきやがってェ……もうたくさんなんだよ、さっさと消えろ‼︎」 無論、探はその程度で引こうとは思わない。陽炎を冷ややかに見下ろす。内心、怒りでいっぱいだ。心が張り裂けそうになる。ここまで強烈に怒ったのは初めてだ。陽炎は自分の体力が減り、負けることを恐れたのか、さらに球数が増やしていく。前後左右四方向からいろとりどりの円形の玉が飛んでくる。しかし、そんな雑魚弾には目もくれず、ただ一点に陽炎を見つめる。 「畜生……! ハァ、ハァ……、これで終わらせる……」 まるでこれで勝負が終わるような発言。だが、その声からは焦りや不安が感じられる。人間は魔力が切れた後、回復する前に力を使おうとすると命を削る。そして陽炎は今魔力が切れる寸前まで行っている。陽炎自身もわかっているのだ。このまま魔力が切れるまで探に避け続けられたら負けて、もしかしたら死ぬかも知れないと。そしてそれは探も理解している。探はどんな凶悪犯でも死なせはしないと思っている。死で逃すのではなく、生きて自分の起こした事の重大さを理解し、改心させることを自身のモットーとしている。探はふぅ、と一息ついて言葉を放つ。 「ああ。そうだな。両者とも、チェックメイトってところだな。」 そして声が重なって言う。 「これで……終わらせる……‼︎」 先に動いたのは陽炎だった。自身の体内に残っている全ての魔力を解放して魔力の巨大な塊を作り出す。禍々しい力が凝縮されたことで近づくだけで吐き気を引き起こすように感じる。そして半径が十五メートルほどになった時、探に向かってそれを投げつけた。ゴゴゴゴゴッと轟音が鳴り響く。だが、探も事前に霊力を凝縮して作った強力な複数個の弾を塊に向かって投げつけ、弾は内部から破裂しバゴォォンという音をたて塊を破壊し尽くした。まさか破壊されるとは思っていなかったのか、陽炎は一瞬思考が停止する。 (……は? え、あんな強力な弾を……一瞬で破壊した……?) ハァァ、ハァァァ、と呼吸が乱れていく。そして、気づいた時には。 目の前にあの白く輝く霊力が凝縮された弾があった。 五、終……? 探の放った弾は陽炎に当たり、陽炎は血を吐いて倒れた。 探は陽炎に近づき、宇宙船に乗せる。そして、その部下と思われる奴にも近づいて声をかける。 「お前は俺に依頼を出した聖 悠希(ひじり ゆうき)だな? お前、本気で俺を追い返そうとするなら手なんて抜かないだろ」 「……。ああ……」 「なんで自分のボスを売るような真似をしたんだ。最悪テメェ自身が死ぬかも知れねぇんだぞ」 探が必死になって問いかける。それに対して悠希は 「あの人は、もとは優しい人だったんだ。だが、いつの日か自分の弱さがどうのこうの言い出したんだ。簡単に言えば、狂っちまったんだよ」 悠希は淡々と話すが、その瞳からは悲しさが滲み出ている。 「何らかの方法であの人をもとに戻さなければいけない。だが、俺にはそんなことをする勇気がなかった……。だからお前に依頼したんだ。結果、あの人は元に戻ったように感じるし。よかったよ」 これだけできたら本望だ、というように目を閉じる。覚悟をしているのだ。密輸に加担してしまったことで罰を受けることを。だが、 「こんな筋書きはどうだ。俺は真犯人を捕まえるがその手下は逃してしまった。後々調べたら逃げた手下は悪事に加担していなかった」 悠希はキョトンとした顔で頭にクエスチョンマークを浮かべる。 「ハァ……。だからお前は逃げてどこか遠くで人生をやり直せって言ってんだよ」 悠希の体がビクッと反応する。そして目頭が熱くなる。そして自分の宇宙船でどこか遠くへと飛び立っていった。 後日、このことが大々的に報道され、探検家、鳳桐探の名は国中に広まった。その後探の事務所には大量の依頼が舞い込んできたという。そして次のニュースで連続森林放火魔の事件が取り上げられていた。 あるビル街の奥の森に、一人の男が佇んでいる。そしてその手には見出しに大きく「密輸犯捕まる!」と書いてある新聞がある。男はニヤリと笑い、歩き出す。彼の後ろの森には燃え盛る炎が渦巻いていた。 さて、ここまで読んで貴方は思ったでしょう… 「こんなもの書くヒマあったならさっさと続編作れ!」 いえいえ、これはワイが部活動の活動内で作ったれっきとした作品でごぜぇます。サボってるわけじゃねぇぞ! ゲーム内の次回予告と違うじゃん、って人もいると思います。どっちも次回予告です。二つ事件が起きます。最初から鬼畜です。ガンバレ。 ではでは、お疲れ様でした。