【case : 夜叉・始】 ◆◆◆ (あああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇ!! 何でこんなクソみてぇな仕事しなきゃなんねぇんだよ…死んだ野郎を助ける?次の来世に導く??んなもん勝手に死んどけって話だろうが!!!!) 俺は、これを1分間に100回ぐらい唱えるのが日課だ。 どっかにこの思いをぶつけねぇとやってらんねぇ…俺にとって、こんなクソみてぇな仕事、1秒でも早く辞めてやりたいんだが。 生憎、天使ってやつは辞めれねぇらしい。舌打ち1億回ぐらいしてやりてぇ気分だ。 こんな事を考えながら、俺は今日も仕事する。まぁ、大体はサボってっけど。 「よぉ、ヤシヤ」 同僚から声をかけられた。正直、天使っつーのは似た顔が多すぎる…名前なんか覚えられるわけねー。 俺はたまたま奇形で姿が違うから分かるんだろうな…クソが。 もちろん、今話しかけてきたコイツの名前なんざ俺は知らねぇ。いつもみたいにガン無視を決め込む。 「…」 「なんだ、今日もお前は機嫌悪いねぇ…なんでそんなにぐーたらしてんの?」 「…うっせぇ。こんなクソみてぇな仕事やってられっかよ」 「けっ、お前は変わんねぇな…大体「仕事」ってなんだよ?俺らが死者を助けるのは当たり前の事だろ?」 「…ま、せいぜい頑張れよ。じゃあな」 クソが…この上から目線野郎が。 ぶっ飛ばしてぇが、次ぶっ飛ばしたら今月5回目だ。流石に何されるか分かんねぇ。 やる事ねぇから、いつもみたいに木陰で寝る。ここは俺しか知らない秘密の場所だ。 そもそも、天使ってのは「死者を助け、来世に導く」…ってのが役目らしい。んでもって、「創製の象徴」らしい。ヘドが出る。 大体、何が「当たり前の事」だよ。何が「仕事ってなんだよ」だぁ? 俺にとっちゃ、その役目ってのは「当たり前じゃねぇ事」で「仕事」なんだよ。 (…あぁ…俺、何で天使なんかやってんだ…?) そんな事を考えながら、やる事も無いので今までの事を振り返ってみる事にした。 ◇◇◇ その時は、突然訪れた。 気付いたら、そこに居た。 目の前に居るのは、羽が生えて、頭の上に丸が乗ってる、変な奴。 どうしたらいいのか分からなかった。 目の前の奴らが騒いでる。 「奇形だ!奇形だ!」 「奇形が生まれたぞ!」 そう聞こえた。 すぐに、動くことができることに気付いた。 手を動かしてみた。 変な感じがした。 触ってみた。 変な感じがした。 足を動かしてみた。 変な感じがした。 考えてみた。 変な感じがした。 言葉を話してみた。 騒がれた。 変な感じがした。 「喋った!奇形が喋ったぞ!」 そう聞こえた。 何故か、聞いた事ねぇのに知っている言葉があった。 「天使」「大天使ラデス」「天使の使命は、死者を助け、来世に導くこと」「ヤシヤ」「人間界」「地獄」「天界(天国)」「神界」とか、いろいろ。 「ヤシヤ」ってのは、俺の名前らしかった。 俺の姿を見てみた。 頭がでかい。全身が虹色。頭の上に黄色のでけぇ丸が乗ってる。真っ白ででかい羽がついてる。なんか光ってる。白い服着てる。 周りの変な奴らは、みんな働いてる。「死者」って奴らのために。 俺は嫌だった。 働くのが嫌なんじゃない。誰かのために働くのが嫌だった。 壊したい。 全てをぶち壊したい。 全部を粉々にしたい。 殺したい。 周りの奴らがみんなうざったい。 (壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい!!!!!!!!!!!) すぐに行動に移していた。 すんげぇ怒られた。 仕事を押し付けられた。 吐き気がした。 俺には、この仕事は無理なんだと分かった。 辞めたかった。 辞められなかった。 死にたかった。 死ねなかった。 殺したかった。 殺せなかった。 「異常者」って呼ばれた。意味なんざ知らん。 「天使」って仕事は、辞められないと知った。 俺は他の奴らとは違うって分かった。 他の奴らは、みんな楽しそうにやってる。意味が分からん。 壊したかった。殺したかった。 でも、出来なかった。 満たされない。 満たしたい。 満たせない。 ラデス様に言うと「それは、満たしてはならない感情なんだよ」って言われた。 何なんだよ…壊したらダメって誰が決めたんだよ!? でも、ダメって言われた。だからダメなんだと知った。 なんか、嫌になった。 ◇◇◇ (…こう考えると、波乱万丈だぜ…今まで) 何故か奇形として生まれて、近くの物を粉々にする騒動を起こして、ラデス様に相談して、なんか変な事言われて、それ以来ずっと仕事サボってる。たまーーーーにやってるけど、その度に急に壊したくなって、誰かをぶっ飛ばしてる。 俺は、天使に向いてねぇ。多分破壊神とかの方が向いてる。 その証拠に、俺はめっちゃ強い。 大体の奴はぶっ飛ばせる。 ちょっと念じれば、でけぇ建物も吹っ飛ばせる。 多分最強ってやつなんだと思う。 ラデス様が言ってたけど、俺はなんでか「はかいしょーどー」ってやつが生まれつきめっちゃ強いらしい。んで、奇形のせいでめっちゃ強いらしい。 でも、その代償として頭が悪いとも言ってた。何言ってんだ?って思った。俺は最強のヤシヤ様だ、頭も完璧に良いに決まってる。 (…あ~あ、天界から抜け出せたらなぁ…自由に何でもぶっ壊せんのに) 何気に、初めて考えた事だった。 (…ん?天界から抜け出す…) だから、変なこと思いついた。 (…あ、良い事思いついたぞ!) ”この天界ごと”吹っ飛ばしちまえばいいんだ。 すぐに実行してみた。 手始めに、足元の雲と近くの木を吹っ飛ばしてみた。 沢山の天使が来た。 捕まりそうになったが、全部ぶっ飛ばした。 次に、施設をぶっ壊してみた。 もっと沢山の天使が来た。 「反逆者め!」って叫ばれた。意味は分からん。 もちろん、全員ぶっ飛ばした。 ラデス様も来た。 ぶっ飛ばそうとした。 捕まった。 「…すまないね」って言われた。 カッコ悪いから、逃げはしなかった。 檻に入れられた。 檻は硬かった…だから逃げられなかった。 俺は、裁判の末…地獄に堕とされることになった。 あぁ。 やっと辞めれる。 ◆◆◆ ……とまぁ…以上の事があって、地獄に堕とされたわけだが。 「えー、君がヤシヤですね。天界を破壊しようとした反逆者。奇形かつ、強大な破壊衝動持ち…なるほど、確かに天使に世界一向いてないですね。ついでに、その影響で頭も悪く、性格に難あり…なるほどなるほど…」 …誰だよ、目の前に居る奴。 色は濃い紫で、表が黒で裏が白の変な上着羽織ってて、十字架のネックレスつけてる。変なの。 …てか、そもそもここどこだよ。 なんか、とにかく…すっげぇ部屋って事だけは分かる。偉い人とかがいるような、すっげぇ部屋。 「…誰だお前」 「おやおや…天使でありながらこの私の名も知らないなんて…流石頭が弱いだけはありますね。」 「では、教えてあげますよ。私の名は…」 この時の俺は、まだ知らなかった。 才能を買われ、目の前のコイツのグループの仲間になる事。 鬼として、新たな人生を生きる事。 俺の名前が「ヤシヤ」を速く読んだ時の「夜叉」になる事。 俺の破壊衝動を満たせる「人間」って奴らがいる事。 【case : 夜叉・終】